57話 一条ダウン
あれからスマホも解体したいと言い出したが、流石に断った。
ククルトンとラランは一度解体したマウンテンバイクを組み立て、乗ろうとしたが、足が届かない。
乗りたいと悔しがっている。
子供用を出してやるか?
既に日が暮れようとしている時間。
ククルトンを飲みに誘いに来た他のドワーフが、その光景を見ると興味津々と、どんどん集まって来た。
勿論、俺にもくれとの攻撃が。
あまりの圧力に負けて出してやると、
「む?兄ちゃん?」
どうした?
……しまった!!!
勇者の祝福『ネットショッピング』使ってしまった。
マウンテンバイクは元々出していたやつだったのに。
「…お兄ちゃん、もしかして勇者なの?」
ドワーフは勇者の事をどう思っているのだろうか?
敵と思われていたらどうしよう。
「おおお!勇者がまた来たぞ!」
みんな喜んでいるみたいだ。
「兄ちゃんと、姉ちゃん別の世界から来たんだろ?」
話を聞くと、先代の勇者トーヤがドワーフたちと上手くやっていたそうだ。
別の世界、異世界の物をどんどんドワーフに伝え、それをドワーフが作る。
物作りが生き甲斐のドワーフにとって、勇者は特別な存在だったそうだ。
お陰で歓迎された。
どんどん酒を勧められたが、未成年なので飲めないと言うと、驚かれた。
なんとラランですら、飲むそうだ。
そう言われるとお兄ちゃん黙っていられない。
飲んでやる。
良い子も、悪い子も元の世界では真似するなよ。
全く記憶が無い。
ただただ気持ち悪い。
稲葉さんによると、コップ一杯で俺はダウンしたそうだ。
ドワーフ怖い。
「一条君。ウコンのやつ購入したら良いよ」
ネットショッピングで、ウコンの栄養材を購入する。
すると、稲葉さんがポーションと合成してくれる。
助かります。
物凄い効果で、一口で全快だ。
「おう。起きたか。大丈夫か?」
「…お兄ちゃん大丈夫?」
心配させてしまった様だ。
「大丈夫です。心配かけてすみません」
やっぱりお酒は大人になってからだな。
「…良かった。大丈夫なら今日も色々出せる」
ラランは胸の前で、ふんす、と両手を握っている。
あれ?俺の心配じゃなくて?
視線をやると、気まずそうに、下手な口笛を吹いてやがる。
音が出てないぞ。
まあ、ドワーフ達には頼みたい事があるし良いかな。




