19話 竜王アースその2
竜王アースである。
妻と娘が同席する事になったが、仕事は頑張るのである。
王都に来る前に手前の街で一泊してほしい?
出迎えの準備が出来ていない?
それは失礼ではないか?
その街に肉を旨くするタレを作った商人がいる?
しょうがない。一泊してやろう。
竜王国を出発し、何の問題もなく、指定された街までたどり着いた。
まあ、竜族にちょっかいを出す馬鹿なんて居ないが。
街のすぐ隣の森の開けた所に着地する。
竜の姿では、人間の街は狭いからな。
こう見えても竜は気遣いの一つぐらい出来るのだ。
それにしても、シャルティアは人間形態も可愛い。
将来は是非、嫁にと求婚が殺到するのだろうな。
許さん!絶対に許さんぞ!
シャルティアはな、将来おとーさまと結婚するのって言って……言うはずなんだ。
そもそも竜族は長寿だから、あと五百年ぐらいは結婚なんてしなくてもいいからな。
おっと、妄想が過ぎたな。
人間なんぞ、いくらでも待たせても良いが、そろそろ顔を見せてやろう。
人間は脆いからな、あまり待たせると疲れさせてしまうからな。
街に着くと人間達が並んで出迎えていた。
うむ、良い心がけだ。
「出迎えご苦労、私が竜族の王、竜王アースだ」
シャルティアよ、父の勇姿を見たか?
みんなお父様にペコペコしているだろう。
お父様は偉いのだぞ。
ん?
シャルティアよ?何処へ行った?
むむむ、男?
どうしてそんな男の元に?
父はまだ結婚なんて許さんぞ?
美味しそう?
む?
人間なんて美味しくないぞ?
食うなら、牛や豚にしておきなさい。
お腹が痛くなっても知らないぞ。
その後、その弱男が肉のタレを作った男と知った。
ふむ、さすがシャルティア鼻が効く。
父はちょっと寿命が縮まったぞ。
まぁ、長寿だから気にしないが。
その後、歓迎会なるものが行われた。
歓迎もされていないというのに、
歓迎会とは片腹痛いが、そんな野暮な事は竜族は気にしないのである。
シャルティアよ、そのしゅわしゅわしたのはなんだ?
くりぃむそーだ?
美味しいのか?
父にも一口……
「いやっ!」
フブキも飲んでいるのか。
フブキよ、夫にも一口……
「うふふ」
笑顔で拒否されてしまった。
「おい、弱男!私にもあのしゅわしゅわを持ってこい!
えっ?しゅわしゅわの酒がある。たくさん持って来なさい」
弱男は、しゅわしゅわ以外の酒も沢山持ってきた。
意外に使えるではないか。
この弱男を竜族の【竜の谷】に連れて帰れないか?
「無理矢理連れて帰ると、誘拐したと、人間の王に賠償を求められますぞ」
シェンロン。親父の代からの側近だ。
このシェンロンには私も実は頭が上がらない。
実は超強いのは知っている。
俺より強いかもと思っているのは秘密だ。
竜王の威厳が無くなるからな。
ここは大人しく反省しよう。
竜王も、反省の一つぐらいするのだ。
反省しない人間達と一緒にしないでほしい。
シャルティアがあの弱男に何か貰っている。
乗り物か?
うむ、楽しそうだ。
俺にも一つくれないか?