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妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~  作者: 雪野みゆ
第四部:アルデミオン王国編

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1章-2

 エリンシアは花が綻ぶように微笑む。


「ようこそ。アルデミオン王国へ。長旅でお疲れではありませんか?」

「いえ……わたくしは……。それよりフィル…フィンラス様を休ませていただけないでしょうか?」


 傷が塞がったとはいえ、フィンラスの顔色は青白い。立っているだけでも辛そうなのは、誰の目にも明らかだった。


 カテリアーナは心配そうにフィンラスへと目を向ける。


「わたくしのことは後で構いません。まずはフィンラス様を……」

「カティ。俺は大丈夫だ」

「大丈夫ではないわ!」


 ぴしゃりとカテリアーナに言い切られ、フィンラスは言葉を失う。


「塞がったとはいえ、ひどい傷だったのよ。すぐに動いていいわけがないわ」


 カテリアーナは薬学に精通している。アストレイアスの魔法で傷が塞がれてはいるが、負ったダメージまで回復しているわけではない。それはフィンラスの様子を見れば分かる。


 真剣な眼差しで自分を見つめるカテリアーナに、フィンラスは困ったように眉尻を下げた。


「……しかし、其方を放って休むわけにはいかない」

「心配はいらぬ」


 穏やかな声音が二人の間に割って入る。アストレイアスだ。


 彼はフィンラスの隣へ歩み寄ると、ぽんと肩を軽く叩く。


「こいつの面倒は私が見よう」

「……アストレイアス」

「世界樹の麓に魔力が回復する温泉がある」


 アストレイアスは穏やかに微笑みながら続ける。


「傷を塞いだとはいえ、魔力が戻ったわけではないであろう? 何。世界樹の加護を受けた温泉に浸かれば瞬く間に回復する」


 フィンラスは小さく息を吐く。


「……分かった。世話になる」

「今さら遠慮する仲でもあるまい」


 そのやり取りを見ていたカテリアーナは、自然と肩の力が抜けた。


「安心しなさい。カテリアーナ」


 優しく微笑みかけるアストレイアスには、先ほどエリンシアに向けたのと同じ父親の温もりを感じた。


「フィンラスは必ず元気になる」


 不思議な説得力があった。理由は分からないが、アストレイアスに任せれば、大丈夫なような気がしたのだ。


 カテリアーナは素直にこくんと頷く。


「……はい」


 彼女の返事を聞いたアストレイアスは満足そうに微笑み、今度はエリンシアに視線を移す。


「エリンシア」

「はい。お父様」

「カテリアーナ姫に王宮の中を案内して差し上げなさい」

「承知いたしました」


 エリンシアは柔らかく微笑むと、カテリアーナに手を差し伸べる。


 だが、カテリアーナはすぐに動かなかった。もう一度フィンラスの方へ目を向ける。


 フィンラスはカテリアーナの視線に気づくと、優しく微笑んだ。


「そんなに心配そうな顔をするな」

「でも……」

「すぐに元気になる」


 安心させるようにフィンラスが頷くので、カテリアーナはようやく微笑みを浮かべる。


「約束よ」

「ああ。約束だ」


 二人のやり取りを見守っていたエリンシアは、思わず口元を綻ばせる。


「仲の良いお二人ですね」


 ぼそりと呟くエリンシアにアストレイアスは苦笑する。


「ああ。そうだな」


 だが、アストレイアスはフィンラスを案じるカテリアーナに妻の姿を重ねる。


(自分のことよりも相手を優先させるか。カテリアーナも恐ろしい目に遭ったというのに……)


 その優しさは亡き妻によく似ている。懐かしさに胸が締めつけられ、アストレイアスは苦痛に似た表情を浮かべた。

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)

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