2章-1
ものすごく久しぶりの投稿になります。
何年ぶりでしょうか?
思い入れのある作品なので完結しないままエタらせたくありません。
これから不定期に更新をしていきます。
カリュオン王国の王都は連なった木々に土台を打ち、その上に街が作られている。
行きかう人々の背には翼があり、大きさや色は様々だった。
純白や漆黒の翼を持つ者。孔雀のように鮮やかな色の翼を持つ者。
人間の国では決して見られない光景に、カテリアーナは目を輝かせた。
「すごいわ!」
木と木の間に渡された吊り橋の上で思わず立ち止まる。
今日はフィンラスと二人で王都の街を散策しに来ているのだが、カテリアーナにとってはどれも真新しいものばかりで些かはしゃぎ気味だ。
眼下には雲海が広がり、その遥か下には森が見えた。
「何て壮大な景色なのかしら」
空中庭園だと思われる場所では、ハーピィたちが楽しげに談笑している。
まるで空そのものが一つの国になったようだった。
「カティ、落ちるなよ」
隣からフィンラスの呆れた声が飛んでくる。
「落ちないわよ」
「先ほども同じようなことを言って、落ちかけていただろう?」
「落ちなかったからいいじゃない」
「俺が咄嗟に襟首を掴んだからな」
先ほどもカテリアーナは初めて目にする景色に感動するあまり、危うく吊り橋から落ちかけたのだ。
「細かいことは気にしなくていいのよ」
「いや。気にするだろう?」
カテリアーナはぷうと頬を膨らませる。
「フィルは心配性よね」
「カティが危なかっしいからだ」
フィンラスはそう言うと、自然な動作でカテリアーナの手を取る。
「これで落ちぬであろう?」
「もう!」
カテリアーナは少し照れながらも、フィンラスの手を離さなかった。
突然、羽音とともに上空から影がさす。
「ややっ! 妖精王陛下ではありませんか!」
陽気な声とともに、一人の女性が二人の前に舞い降りてきた。青い翼を持つハーピィだ。彼女は短髪にも見えるローレンウルフの青い髪を、風になびかせている。
「リューネか?」
小柄なハーピィは、カテリアーナより少し年下のように見える。だが、妖精は人間よりも長寿だ。実年齢は分からない。
「知り合いなの?」
「この国の案内役だ」
女性はにっこり笑うと、「案内役です!」と元気に挨拶をする。
そしてカテリアーナを見ると、目を丸くする。
「まあ! この方が妖精王陛下のお妃様になられる方ですか?」
「そうだ。カテリアーナという」
リューネに挨拶をしようとした次の瞬間――。
ぎゅっと抱きしめられた。
「ふぇっ!?」
驚いたカテリアーナから間抜けが声が飛び出した。
「何て素敵な人間のお姫様なの!」
リューネのふわふわの羽根が頬に当たり、カテリアーナは顔を緩ませる。
(うわあ。ふわふわで気持ちいい!)
「素晴らしい羽根ですね」
「え?」
「もふもふしています!」
今度はカテリアーナがリューネに抱き着く。
「きゃあ!」
リューネのふわふわの羽根を撫でたり、頬ずりをしたりしてもふる。
「ふわぁぁぁ……」
カテリアーナはその素晴らしい羽根に恍惚とした表情になった。
当然、リューネは困惑する。
「えっと……」
「気にするな」
フィンラスは苦笑しながら、言外にリューネに諦めろと言っている。
「カティはもふもふした者を見ると、理性を失う」
「……そんな人間は初めて見ました」
しばらくして満足したカテリアーナは、ようやくリューネの羽根を離した。ものすごく名残惜しそうに……。
しかし、その様子はすっかり周囲のハーピィたちの注目を集めていた。
「見てみろよ」
「あれは人間の少女だな」
「羽根に埋もれているわ」
「ふふ。可愛い」
くすくすと笑い声が聞こえるが、悪意はない。むしろ歓迎しているようだ。
カテリアーナは少し胸が温かくなる。ラストリア王国では決して向けられることのなかったものだ。『妖精の取り替え子』と蔑まれることはあっても、温かい感情を向けられることはなかった。
「さて、お二方はこれから観光されるのですよね。でしたら、市場に行きませんか?」
リューネが翼を広げて、二人の回りをくるくると飛んでいる。
「市場か。そういえばそろそろ風祭りの季節か?」
「ええ。そうです」
祭りという言葉にカテリアーナは目を輝かせる。
「あの……風祭りって?」
「カリュオン王国の伝統的なお祭りの一つです。明日から始まるんですが、今日は前夜祭が行わるので、賑やかですよ」
楽しそうに舞いながらリューネが説明してくれる。
「とても楽しそうね。行ってみたいわ」
「そうだな。では行ってみるか?」
ワクワクしている様子のカテリアーナを見て、フィンラスは微笑む。
だが、ふいに視界の端で何かが動いたのを捉えた。
遠くの建物の屋根の上から黒い外套を纏った何者かがこちらを見ている。
顔は見えない。しかし、翼がないところを見るとハーピィではなさそうだ。
その視線が異様に鋭く、氷のように冷たく感じる。
フィンラスの表情が僅かに険しくなる。
「フィル。どうかしたの?」
「……いや」
気のせいだろうとそう思うことにした。だが、警戒しておくことに越したことはないだろう。
妙な胸騒ぎを覚えたフィンラスは、密かにカリュオン王宮にいるカルスへ使いを出す。
黒衣の人物はいつの間にか姿を消していた。
ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)




