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妖精姫ともふもふな妖精猫の王様~妖精の取り替え子と虐げられた王女は猫の王様と冒険がしたい~  作者: 雪野みゆ
第三部

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1章-5

 フィンラスたちが到着したその日の夜、エルファーレン王国からの客人をもてなすため、歓迎の宴が開かれた。


 宴はカリュオン王宮内の夜会を開催する会場で行われた。ここも鳥籠の形をしている。


 珍しいことに円形なので席は好きなところに座っていいようだ。フィンラスとカテリアーナはサファイヤの近くに座り、食事と会話を楽しむ。


「カテリアーナ姫は肉や魚が苦手だと聞いたのでな。果物をたくさん用意させたぞ」

「お気遣いありがとうございます。女王陛下」

「サファイヤでよい」


 近くで見ると、姉妹だけあってサファイヤとパールはよく似ているとカテリアーナは思った。妖艶な微笑み方、上品な物腰。


「女王陛下、カルヴァン商会の会頭がいらっしゃいました」


 苦労性の侍従が遅れて到着した来客の旨をサファイヤに伝える。


「うむ。ここまで案内せよ」


 しばらくすると、穏やかな物腰の青年が会場へ入ってくる。カルヴァン商会の会頭レイナードだ。


 カテリアーナはエルファーレン王国で彼に会ったことがある。王宮舞踏会が開かれた日、謁見で初めて顔合わせをしたのだ。


 同じ人間族なのでいろいろと話を聞きたかったが、謁見の時間は短く話すことはできなかった。その後、玉座からレイナードの姿を探したが、見つからずブランシュに会ったというわけだ。


 レイナードはサファイヤの前に進み出ると跪く。サファイヤがレイナードに手を差し出したので、レイナードはその手を取り口づけを落とす。


「女王陛下におかれましてはご機嫌麗しく。また、ご健勝の様子で何よりでございます」

「堅苦しい挨拶は良い。今回も珍しい品を持ってまいったのか?」

「はい。一週間ほど滞在したく。商いの許可をいただけますか?」

「許す。王宮の者たちも楽しみにしておるゆえ、明日にでも品を見せてやってくれ」

「承知いたしました」


 フィンラスとカテリアーナがいることに気づいたレイナードは再び腰を折る。


「これはエルファーレンの国王陛下とカテリアーナ姫!」

「挨拶は不要だ。其方もカリュオン王国に来ておったのか? レイナード」


 レイナードが堅苦しい口上を始める前にフィンラスから声をかける。


「はい。エルファーレン王国での商いは終わりましたので」


 カテリアーナはレイナードをこっそり観察する。後ろで一つにまとめている茶色の髪は柔らかそうだ。瞳の色は分からない。丸眼鏡の向こうは糸目なのだ。だが、顔立ちは整っている。


「そうか。ちょうどよい。今回は忙しくてカルヴァン商会の品を見損ねたからな。俺たちにも品を見せてほしい」

「それは願ってもないことでございます」


 エルファーレンでは話を聞く機会がなかったので、カテリアーナはいい機会だと思いレイナードに声をかける。


「レイナード様はオルヴァーレン帝国で商会を営んでいらっしゃるのですよね? オルヴァーレン帝国はどのようなところですか?」


 レイナードは人の良さそうな笑みをカテリアーナに向ける。


「オルヴァーレン帝国は北の国ですので、冬は雪が降ります」

「雪ですか? 見たことがありません」


 温暖なラストリア王国には雪が降らない。カテリアーナは生まれてこのかた雪を見たことがないのだ。


「ラストリア王国は雪が降りませんからね。そういえば、オルヴァーレン帝国にはカテリアーナ姫の姉君が嫁がれていましたね?」

「そうですね」


 カテリアーナの姉アデライードはオルヴァーレン帝国の第二皇子グリージオに嫁いだのだ。アデライードにはさんざん虐げられたが、それでも姉に違いない。幸せになってくれるといいとカテリアーナは願っている。


「レイナード様は姉の結婚式をご覧になりましたか?」

「婚礼祝いの品は届けさせていただきましたが、私めはその時エルファーレン王国に向かう途中でしたから、見ておりません。残念です」


 レイナードの眉尻が残念そうに下がる。


 それから、サファイヤとフィンラスとともにレイナードの旅を話を聞いて、夜は更けていった。

ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)


もう一作品連載を始めました(たぶんすぐ終わります)

よろしければ、こちらものぞいていただけますと嬉しいです♪


『世界樹の聖女~婚約破棄された聖女は世界樹に魅入られる~』

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