1章-3
カリュオン王国の王都ラ・フィーネは高い樹木に囲まれた都市だ。
直接王宮に向けてグリフォンが飛んで行ったので王都の様子が分からなかったが、木の上で背に翼がある男性がいるのをカテリアーナは見た。
カリュオンの王宮は丸い鳥籠のような形をしていた。引き戸のように門が開かれ、グリフォンはそこを目掛けて飛んで行く。
やがて王宮の庭に下り立つと、王宮から赤い髪をした女性が出てくる。顔立ちがパールに似ていたので、カテリアーナは彼女がカリュオン王国の女王サファイヤだと分かった。見かけはパール同様二十代後半くらいに見えるが、妖精は見かけどおりの年齢ではないとカテリアーナは身を持って知っている。
サファイヤは両腕を広げてフィンラスとカテリアーナを歓迎する。
「フィンラス殿、よくぞ参られた。そちらが花嫁殿か?」
「久しぶりだな、サファイヤ殿。こちらは俺の婚約者のカテリアーナだ」
じっとカテリアーナを見つめると、サファイヤは納得したように頷く。
「なるほど。パールの言ったとおりだ。良い相手を見つけたな、フィンラス殿」
パールはサファイヤに何と報告したのだろうとカテリアーナは気になる。
「長旅で疲れたであろう。部屋に案内させよう」
サファイヤがパチンと指を鳴らすと、王宮に仕える侍従が背の翼をはためかせ二階から飛んできた。侍従の見かけは三十代半ばくらいだ。
「お部屋へご案内いたします。エルファーレン国王ならびに妃殿下。その前に……」
まだ王妃ではないのだが、カテリアーナを妃殿下と呼ぶ侍従はサファイヤに一礼すると、息を吸う。
「女王陛下! 何度申し上げたら分かるのですか? 女王自ら客人を出迎えるのはお控えください! 先日、暗殺されかけたのをお忘れですか?」
「今回の客人は友好国の国王だと分かっているではないか。固いことを申すな」
サファイヤは侍従から目を逸らす。
「そういう意味ではありません。はあ。もういいです。まずはお客様をご案内しませんと」
侍従は頭を抱えると、フィンラスとカテリアーナを部屋に案内するべく先導する。フィンラスは気苦労が絶えないであろう侍従に話しかけた。
「サファイヤ殿は相変わらずだな」
「全くです。いくら言っても自重してくださらないのです」
カテリアーナはパールを思い出す。パールは身を挺してカテリアーナを庇ってくれた。サファイヤもそういうタイプなのだろうか? 身を挺して国民を守ろうとする女王。
「ところで暗殺されかけたというのは?」
「陛下がオーガスタ商会の会頭を見送られた後のことです。突然賊に襲われたのです。幸いすぐ取り押さえられましたが」
「賊はなぜサファイヤ殿を狙ったのか吐いたか?」
「それが、耳障りな声をしたフードの男に唆されたと言っております」
それを聞いたフィンラスとカテリアーナは顔を見合わせる。
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