1章-2
カリュオン王国はハーピィの国だ。
ハーピィは鳥の妖精だ。彼らは空に浮かぶ都に住む。
王都ラ・フィーネも空に浮かんでいる。
「どうやってあそこまで行くのかしら?」
遥か遠く空に浮かぶ都をカテリアーナは見上げる。
「鳥が連れて行ってくれるのだ。今、カルに先触れとして行ってもらっている」
白いフクロウに変化したカルスを見てカテリアーナは驚いた。ラストリアで塔の中に閉じ込められていた時に時々やってくるフクロウに似ていたからだ。
「陛下が度々会いに行く女性がどのような方か気になりまして。毎日カテリアーナ様を起こしに行っていたのは私ではありませんのでご安心ください」
カテリアーナがそれとなくカルスに聞いてみたところ、白状をした。ちなみに毎朝カテリアーナを起こしてくれた小さなフクロウはカルスの使い魔だという。
ノワールに変化したフィンラスもそうだが、カテリアーナはずっとエルファーレン王国の人々に見守られていたということである。
「鳥がですか? どのように?」
ドラゴンのように背に乗るのだろうか?
カテリアーナは想像がつかない。妖精の国は本当に不思議なことばかりだ。
「今に分かる。そら来たぞ」
フィンラスが空を仰ぐ。カテリアーナもつられて空を見上げる。
翼を広げた鳥が二羽降下してくる。鳥たちは車を曳いていた。
鳥の影はどんどん大きくなり、やがて地上へ降り立った。
「すごく大きな鳥ね」
「グリフォンだ」
グリフォンは鷲の頭と翼に獅子の体を持つ聖獣だ。体は馬より少し大きい。
カリュオン王国の交通手段はグリフォンが曳く車なのだ。
「これがグリフォン? 羽毛が柔らかそうね」
グリフォンの羽毛に触れてみたいと思ったカテリアーナは手を伸ばそうとする。
「カテリアーナ様。あまりお近づきになりませんように。調教はしてありますが、本来は獰猛な生物ですので」
グリフォンとともに降下してきたカルスに止められる。
「羽毛に顔を埋めてみたかったわ」
肩を落とすカテリアーナにフィンラスは手を差し伸べる。
「ラ・フィーネに行けば触れる機会がある。行くぞ、カテリアーナ」
「はい。フィンラス様」
カテリアーナはフィンラスとともにグリフォンが曳く車に乗り込む。車には屋根がついていない。オープンタイプの車だ。
フィンラスとカテリアーナを乗せた車はぐんぐん上昇していくと、グリフォンが翼をはためかせる。そしてラ・フィーネに向けて飛んでいく。
「この車はどうやって浮かんでいるのかしら?」
風に舞う髪を手で押さえると、カテリアーナは疑問を口にする。
「浮かぶように魔法がかけられているんだ」
「魔法は何でもありね」
「何でもというわけではないが、便利ではあるな」
人間は魔法を使えない。エルファーレンに来てからカテリアーナはいろいろな魔法を見てきた。いまだに知らない魔法もあるため、毎日が新鮮だ。
「ねえ、フィル。わたくしも魔法が使えるのかしら?」
「遥か昔は魔法を使える人間もいたそうだ。カティは魔法を使ってみたいのか?」
「それは使えるのであれば使ってみたいわ」
魔法にあこがれはある。だが、恐れもあった。未知の力を使うことに人間は臆病なのだ。
「そうか。ん? ラ・フィーネが見えてきたな」
フィンラスが目を向けた方向には、高い樹木に覆われた空に浮かぶ都が見える。カリュオン王国の王都ラ・フィーネだ。
不思議な光景にカテリアーナは目を奪われた。
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