表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/271

第24話 三日三晩考えた私の時間を返してください


 昨日の晩はあの後、二番目のサラダと三番目のケーキなどといっぱい食べさせられたせいで腹がいっぱいになりながら近くの借家に帰って寝た。

 そういえば結局勝負は……どうでもいいか。あーあ、荷物を親の家から取りにいかないとな、でも、このふわふわベッド気持ちよくて最高だ。

このままずっと寝てた――――ん?


 「おはようございます、アービス様」


 「うおおおお!?」


 俺は部屋の出入口に立つ俺より少し年上くらいの若いメイド姿の黒のロングヘアの女性を見て情けない声を上げてしまった。一体いつからそこに居たのだろうか。


 「あ、あのどちらさま?」


 「これからこの屋敷で働かせていただくセルディアと申します」


 「あ、あ! 今日からだったんですね!」


 「はい、今日からです。聞いてませんでしたか?」


 一切聞いてませんでした! まだ準備中とは聞いていたが今日からなんて聞いてないぞアニス!


 「あはは、聞いてませんでした……」


 「ふむ、連絡に行き違いがあったようですね」


 まさか王城の調理場が爆発した件と異臭の件で情報が滞ったのか!?  


 「えっとですね……」


 「あ、お着替えですか?」


 「いえ、あの昨日は学生服のまま寝てたんで一回家に帰ろうかと」


 「ダメです」


 「え?」


 え!? なんで!? すごい真剣な表情でそう言う彼女に俺は疑問を抱くが、彼女は俺の疑問の表情を無視して、部屋から出ていき、すぐに戻ってきた。戻ってきた彼女の変わった所は、黒い衣服が綺麗に畳まれ、彼女の両手に収まっていた事だ。だが、なぜだろう。小さい気がする。


 「これを着てから行ってください」


 「へ? ど、どうも」


 俺はセルディアさんから服を受け取るが……やっぱり小さくね? え? これ、ゴスロリ服なんですけど……。


 「あの、これ、間違ってますよ、男物じゃないというか……もはや俺が着れないというか」


 「……実は私、てっきり勇者様のお世話を出来ると思っていたんですが蓋を開けたら冴えない男だったので気が動転しています、その服は勇者様に着ていただくため三日三晩考えて用意したんですが、蓋を開けてみたら冴えない男だったので、でも、用意してしまいましたし、どうしようかなと、着てもらおうかなと」


 「なんでそうなるんですか!? 着ませんよ!」


 後、冴えない男だったを二回も言うな! なぜ二度言う必要があるんですか! それにアニスのためだったとしてもアニスはこういう服は着ないと思う。

 

 「着てくれないと困ります、うざいです」


 「うざいです!? いや、ちょっと待ってくださいよ、着れませんよ!」


 「案外、いけますよ」


 「いや、全然イケそうな目してないじゃないですか! それはマジでそれ着たら王都から追い出してやろうの目ですよ!」


 「では! 私の三日三晩募らせたこの想い! 責任取ってくださいよ!」


 「へー、三日三晩、そのメイド服の女性と僕の目を盗んで何をしていたんだい?」

 

 「は――――はぁ!?」


 何言ってんだよ! だからなんで俺が着なきゃいけないんだよ!! だが、それ以前に俺は目の前のセルディアの背後にたたずむ制服姿の勇者様を見てしまい、俺は酷く狼狽した。


 「あ、アニス!?」


 「おや、これは勇者様、勇者様是非、あの服を――――」


 「黙れ」


 「ひっ!」


 アニスの威圧をかけた声にセルディアさんが小さな悲鳴を上げて道を開けてしまう。もっと粘ってほしかった。俺はアニスの顔を見る羽目になる。


 「アービス? どうしたの? そんな顔を俯かせちゃって……この女に何かされた? 殺してあげようか?」


 「え、い、いや、違くて……」


 「じゃあ、なーに?」


 アニスはベッドに寝転がる俺に覆いかぶさり、耳に顔を近づけて低く冷たい声を投げかけてくる。俺は相変わらずこういうアニスに迫られると背中は冷や汗でだらだらだ。


 「あの……アニス? 三日三晩って一昨日はお前と寝てたじゃないか」


 あ、様子をうかがってたセルディアさんが俺の発言を聞いてすごい嫌な顔したんだけど! え!? 寝てただけですからね!


 「そんな事言うわりに君の視線は彼女に釘付けだね……僕を見ないの? ほら、僕の目を見てくれ」


 そう言ってアニスは俺の目と鼻の先まで顔を近づけ、目と目を合わせる。綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。そしてアニスの方が顔を赤くして目を逸らした。恥ずかしいくらいならするな!


 「おや? この服は?」


 アニスは俺の傍にあったゴスロリ服を見つけ、拾い上げる。アニスはそれを睨みながら、セルディアさんを睨んだ状態で見つめた。


 「あのメイドにでも着せるつもりだったか? 君に着させてやろうか」


 どっちにしろ俺が着るルートになるのは勘弁してくれ! 俺は首を大きく振った。


 「それはあのメイドさんがお前に着せるために持ってきたんだと! 三日三晩お前の服を考えてた時間だ!」


 「……本当か?」


 「は、はい! 勇者様は可愛いので似合うかと……」

 

 「そうか……見たいか?」


 「は?」

  

 なぜかセルディアさんではなく、俺に聞いてくる。アニスは俺の返答をお気に召さなかったのか、ムッとした。


 「君が見たいなら着てやると言ってるんだ!」


 「ま、マジですか……」


 チラッとセルディアの方を見るとすごく嬉しそうな顔で俺に向かってめっちゃ首を縦に振っている。時たま、首を親指で横に引くポーズをしている。断れば殺すと言う事か……いや、なんで俺が殺されなきゃいけないんだ!?

 まぁ、でも見たい。アニスの可愛い格好は見てみたい。いつも短パン、半シャツの彼女ではなくそういう彼女を。

 

 「あ、ああ、見せてくれ」


 「わ、分かった!」


 アニスはそう言うと制服の上と下を繋ぐベルトを外し、上の制服をめくりあげた。白く引き締まってはいるが割れているわけではない見事に綺麗な平面の腹部が見え、やはり平面近い胸の下部分が見えそうな辺りで俺は両腕で顔を覆い隠した。


 「ここで抜ぐな!!」


 「恥ずかしがりやなアービスも可愛いよ」

 

 俺はそう叫んだが、アニスはお構いなしで脱ぐ音を立てていく。

 誰かこいつに羞恥心を教えてやれ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ