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第EX話 眠りのお姫様の相手も大変だ

本編の前日譚で、アニスとアービスの学生時代の話になっております。

ブクマ50記念に書きました!ブクマしてくれた方々ありがとうございました!



 気持ちの良い朝が来た。俺はベッドから起き上がり、魔術学校の制服を着こんでいく。そして、下に降りると居間に居る両親に挨拶をする。そして、お前起きるの早すぎだぞと心配されながら、そんな事ないだろと言い、朝飯のスープとパンを食べる。それが俺の学生時代のルーチンワーク。いや、ルーチンワークだと嫌々みたいだな。嫌ではない。


 「アービス!! 今日は学校に一緒に行くぞ!」


 ちょうど朝飯を食い終わらせ、ジョギングをしながら王国に向かおうかという時、俺のルーチンワークが壊れる音が聞こえた。この声はアニスだ。家の外から元気な声で俺を呼んでいる。だが、こんな早い時間にアニスが起きてるなんて……。


 「あら、アニスちゃんも早いわね」


 「幻聴じゃなかったか……」


 「幻聴なわけないだろ、アービス」


 「うおっ!?」


 俺の真横から耳に入るアニスの声に驚いてしまった。アニスは相変わらず腰と肩が丸見えの制服を着ながら、大きい黒い箱のような物を持っていた。この黒い箱は知っているがそれよりも。

 なんでもう家の中に居るんだ!? 父さんか! 父さんはアニスに甘いからな。


 「アニスちゃん、アービスは変に早いんだから無理しなくていいんだよ?」


 俺が変人みたいに言うなよ、父さんだって昔は早起きした方が良いみたいな事言ってたろ。


 「アービスに合わせないと、僕を置いて先に行ってしまうんです……」


 「おい、アービスもう少し寝てきなさい」


 「はぁ!?」


 お前の娘じゃねえんだぞ! なんでそんなクソ甘いんだ!? しかも今、二度寝したら遅刻するぞ!


 「そうよ、アービス、これからアニスちゃん待ってあげなさいよ」


 「だから言ってるだろ? 俺はこの生活で慣れてるんだよ」


 前世の俺の記憶が規則正しい生活を望んでいると言っても過言ではない。


 「ああ、良いんです、アービスがわがままで僕が合わせてあげなきゃいけないのは慣れてるんで」


 「なんて良い子なんだ!」


 「嫁に来てほしいくらいだわ!」


 「普段合わせてんの俺じゃねえか!!」


 いつもアニスの予定に付き合ってやってるというのにこの仕打ち、両親も両親だが、アニスもアニスだ。うちの両親が自分に甘いのを知っていてこうやって俺の肩身を狭くしようとしやがる!!


 「ちくしょう!」


 「あ、アービス待ってよ!」


 俺は両親から逃げるように家を飛び出した。農場や畑で広がる道を進んでいるとアニスが一生懸命追いかけてきて俺は可哀想になり、立ち止まる。


 「ひ、酷いじゃないか! 置いていくなんて!」


 そう言って、頬を膨らませると片手で俺の背中をポカポカと叩き出す。痛くはないが可哀想な事をしたなと俺はアニスの頭をなでる。


 「誤魔化されないぞ」


 「じゃあ、撫でるの止める」


 「嘘、誤魔化されたよ? もっとして?」


 アニスはさらに俺の手を両手で頭に押さえつけ、撫でるように頭を振って催促する。頬が緩みかけてしまう。アニスの甘えん坊気質な所は可愛いし、まるで子どものようだ。

 

 「ほら、そういえば飛び出した俺が悪いんだけど、アニス朝飯は?」


 「食べてきたさ、ちゃんとアービスの昼飯も用意したよ?」


 「ちなみに今日の製作時間は?」


 「昨日、魔術学校から帰って月が見えるくらいまで?」


 そう、アニスは平気でそんな事を言うが夕方に帰り、昨日の月が出るくらいだと……四時間くらいか? にしても頑張りすぎだ。それを毎日持ってくる。ちなみに持ってくる昼飯は基本はこんがり焼かれた肉に厚いフランスパンのようなもの。それに牧場で取れた新鮮なバター。後は農家から貰った根菜で作ったサラダだ。それを前世で言う弁当箱のような箱で持ってくる。それがアニスが手に持っている黒い箱だ。まるで重箱のように一段ずつパンやこんがり肉が入っている。


 「いつも思うけど毎日毎日、どんだけ力作なんだよ」


 「だってアービスは僕の料理が好きだって言うから、僕、アービスにいっぱい美味しいご飯食べさせてあげたいんだ」


 「わー、俺って愛されてるなぁ、モテないけど」


 どころか、友達さえ、アニスを含めて二人だが。


 「モテない方が嬉しいよ」


 「酷いな!?」


 「だってモテたら僕を構ってくれなくなるだろ?」


 どんな心配してんだか。幼馴染のお前を放っていくわけないのに。


 「そんな事ないぞ、俺はお前が一番の友人であり、幼馴染だと思ってるんだからな」


 「うぅ」


 あれ? なんか逆に落ち込んだ? なんでだろ? やっぱり放置されると思っちゃうもんなんだろうか。


 「アービス、人通りが多くなるまで腕、いいかい?」


 「ああ、良いぞ」


 なんで落ち込んだか考えるていると、俺の腕にアニスは片手を絡ませる。そして、いつものように頭を絡ませた腕の肩部分に持たれかけさせてくる。アニスは俺と密着するのが好きだった。俺も慣れたせいか、抵抗はしない。アニスも大人しくなるしな。


 「昼飯持とうか?」


 「アービスに持たせたら食べられちゃうからいい……」


 「いや、そんな食いしん坊なわけないだろ、ていうか、お前、眠いのか?」


 歩きつつもうとうとしながらそう断るアニスを見て、無理に早起きしたせいだなと思い、アニスが倒れないよう、一度、腕を解き、肩を回して支えた。


 「アービスは大胆さんだなぁ……」

 

 「眠いならおんぶでもしてやろうか?」


 「良い、このまま……ある……く」


 「ほら、無理すんなよ」


 俺はアニスから箱をアニスの腕から引き取ると一度地面に置き、アニスをおんぶした。アニスの細い足は触り心地がつるつるしていて気持ちが良い。俺はそんな感想を持ちながら、器用に箱を持つと、片手でアニスを支えながら学校に向かった。俺の耳元にアニスの寝息が小気味よく入ってくるのを楽しみながら。

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