第109話 魔術力より性格だよ
「なぜ俺だけに?」
「おお! ずっと黙っているから気を悪くしたのかと思ったぞ」
そんなに黙って考えこんでいたのか。申し訳ないな。つい、嫌な予感ばかり覚えて考えまくってしまった。
「申し訳ございません。慎重派なので」
「そ、そうか。君だけの理由は聞かない方が良いかもしれん」
王様は俯いて答えづらそうにそう呟いた。な、なんなんだ。逆に気になるじゃないか。俺は座りながら前のめりになる。
「気になるので教えてください」
「そうか? うむ、分かった。実はな。勇者様はともかく君の勇者パーティーの参入に異議を唱える者がおってな。何か功績を作れと私に言ってきたのだ。君には申し訳ない上に私は君に何の疑念も無いのだがな。発言力のある貴族たちも異議を唱える側に回りだし、このままでは内部分裂を起こしてしまうのだ」
なんというとこだ。まさか、アニスが俺を入れたことによって内部分裂を起こそうとしていたとは。まさか、パラマイアが言っていた俺のせいとはこのことか? 王城を指さしていたしな。
だが、あいつのあの言い方はもっと悲惨な未来を予測しているかのような物言いだった。分からない。
「分かりました。依頼を受けましょう」
「助かる」
「王様! 止めてください!」
「そうです! こんなやつに頭を下げる事ないです!
頭を下げた王様を止めようと俺とボルゲ。ボルゲの発言にイラっとしたが今は流す事にし、王様の頭を上げさせた。王様は頭を上げると一息ついた。
「では、任務の無いようなのだが、現在、王国と隣国が追っている魔物が居るのだ」
「それを私だけで討伐を?」
「うむ。だが、功績と言っても君が主体で討伐をすれば良いのだ。誰かを入れてパーティーを組むのは自由だ。だが、勇者パーティーの誰かを入れたり、最上級魔術士の誰かを入れるのはおすすめしないな。君の実力を測る監視官に疑われてしまうからな」
「なるほど。監視が付くのですか」
「だが、君にとっても知り合いだ。ロウ・ジーランド」
そう呼ばれ、再度入ってきたロウさん。ロウさんは至って真面目な顔で背筋を伸ばして扉の前で姿勢を正した。
「彼が監視官だ。彼が魔物の情報を提供、君の監視を務める」
真面目そうなロウさんはこちらに一歩一歩しっかり踏みしめながら俺の方へ歩き出し、俺も立ち上がるとロウさんの方へ近づいていった。そして、ロウさんは右手を差し出してきたのを見て、俺も差し出した。
「よろしくお願いします。ロウさん」
「よろしくお願いします」
固い握手を結ぶ俺とロウさん。なんだか安心してしまうな。上司が友人だったみたいな感じだ。この人の事を会う直前までまったく覚えていなかったが、好青年であることは道中で分かったから安心しているのかもしれない。
「では後の事はロウくんに聞いてくれ。本当に申し訳ないな。アービス君。では、失礼するよ。ロウくん、失礼のないようにな」
「はっ!」
「おやすみなさい。王様」
「おやすみなさい」
王様は俺とロウさんにそう微笑みかけると、ボルゲとサザウドさんを連れて部屋を後にした。残されたロウさんと俺は対面のソファに座り、ロウさんが用意した書類に目を通していく。
「獲物は以前、俺らが発見した洞窟で現れるのか」
「はい。あそこの鉱物を最上級魔術士を交えた精鋭部隊で守っているのですが、時折、見た事も無い魔物が姿だけを見せるだとか」
「なんだそりゃ。冷やかしか?」
「ええ。特に被害は報告されていたので冷やかしと言えば冷やかしですね。相手の能力も不明です。ただ、逃げ足は速く、姿は二足歩行の黒い獣だとか」
「なるほど。確かに分からないですね」
もしかしたら鉱物の力で変化したモンスターだろうか。だが、それなら鉱物を奪いに来るのも納得だ。裏を引いているであろう女が居るらしいからな。
「とりあえず洞窟に行かないと分からないな」
「ええ。ですがまずすることは仲間集めかと。もしもを考えて補佐的な魔術士が必要です。王様の言う通り、最上級魔術士は入れずにあなたを主体に考えたパーティーを組みましょう」
うーん。と言われても俺の周りに魔術士で親しい人物を最上級魔術士から抜くとそこまで居ないのだ。どうしたものか。
「えっと、ロウさんは?」
「私も協力します。一応、上級で探知魔法には少しばかり自信があります」
「おお、それはありがたいです!」
「強運のガリレスさんとは雲泥の差なのですが……」
「真面目さだけならガリレスさんが泥なので安心してください」
「え、ええ?」
ロウさんは困惑の声を上げるが事実だから仕方がない。ロウさんはガリレスさんを見たことが無いのだろうか。
「パーティーって何人くらいがちょうど良いんですかね」
「私とアービス様を含め、後三人が妥当かと。勇者パーティーも五人ですし」
「なるほど」
「誰か候補になるお方は居ますか?」
「うーん。そうですねぇ、一応、当てはあるので明日の朝、パーティー集めに行きます」
「私も付き合いますよ」
「ありがとうございます」
何やら面倒見の良いロウさんと良い関係を築けたらしい。俺は良し良しと思いながらその日は王城のスイートルームのような客間に泊まった。




