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第100話 七作以上の大作の最新作のだけを見るはめになるとは


 アニスの不意打ちにより目覚めのキスを強要された俺はアニスの柔らかい唇の熱にほだされながら、舞台に戻ってきた。俺たちは台座を上から見れる中央館の二階で見守る事にした。

 俺たちの見守る台座の前では数十人の人が立ち見をしており、一番前の方では本来の客層である子どもたちが学校規模で来ているのだろう何百人もの子どもたちが体育座りで台座の上を見つめていた。


 「ずいぶん人気なんだな」


 「ああ、らしいな、俺たち、一回も来た事ないけどもう何回もやってるんだってさ」


 「興味なかったからな、僕は君と黙って朗読を聞くよりも君の声を聴いていたい」


 「毎日、聞いてるだろ?」


 「足りない」


 「まぁ、今日は我慢な」


 「ああ、分かったよ」


 ワガママ勇者様の口に指を押し当てればアニスは黙って、台座の上を見つめた。案外、興味あるのだろうか。


 ――――


 壇上ではハーリーさんが朗読を始めていた。こちらは既存の本を読んでいるようで、ゴブリンになったお姫様と王子が王国と戦う話だ。どんな話だ。いや、普通に有りな話だが朗読会で読むやつとしてのチョイスは良くないようだ。と思っていてはいたが、ところどころで子どもの笑い声が聞こえる事からまったく悪いチョイスでは無かったようだ。


 「アービス、なぜゴブリンになった姫は倒した兵士を食べたんだ?」


 「ゴブリンが人食い生物だったからとしか言えないな」


 「なんで葛藤が無いんだ、平気でバリバリ食ってたぞ」


 「読者がゴブリンに近づいている姫を察して悲しむシーンだからかな」


 「なぁ、これ、子供向けか?」


 「最近の子どもの流行は知らないなぁ……」


 「そういう問題か?」


 「というか、俺たちの代からある本のはずだから、好きな子は好きなんだろ」


 「そうか」


 その後、アニスは黙ってハーリーさんの朗読を聞きながら静かにしていた。ハーリーさんの女声は昨日より上手くなっており、練習したということがうかがえた。

 最後はゴブリンと王子様の愛の力でゴブリンはお姫様に戻り、結婚してハッピーエンドだった。


 「なかなか面白かったよ、たまには良いな」


 「ああ、そうだな、面白かった」


 あんなに頑張っている人のために娘さんを開放してあげなければ。ハーリーさんはお辞儀をしながら感謝の言葉を述べると舞台の奥に引っ込んでいった。俺も自然と拍手をしながらアニスの方を見ずに口を開けた。


 「ハーリーさんの娘さんも助けないとな」


 「ああ、だから詩人はここで捕まえてあの魔術を解かせる」


 「きっとアモンさんが朗読をし始めた辺りが山場だな、どこから来るのか……」


 そういえばガリレスさんとシャーロットさんが居るはずだが見当たらないな。シャーロットさんはアモンさんと共に居るのだろうか。ガリレスさんが居れば場所が分かりそうだが、これほどの数だと難しいか。


 「あ、アモンさんだ」


 「なんだい、あの格好は」


 「魔女らしいぞ」


 そっか、寝てたから知らないのか。アモンさんは事務室の時と同じような典型的な魔女の姿でワザとだろう腰を曲げながらやってきた。


 「おはようございます~!」


 魔女のマネはしないのか。まぁ、話づらいのだろうがその格好でそのふわふわした喋り方は似合ってないにもほどがあるな。


 「キャー! 魔女ゴレイの格好よ!」


 「かっこいい!!」


 「あのMarchWarsから常連のゴレイ様ー!」


 説明ありがとう。若いお客さんも多いな。昔から聞いている人たちだろうか。そんなにも人気なシリーズなのだろうか。

 あの格好の元のキャラ、そんなに昔から居るキャラなのか。ていうか、俺たちはこれから最新話を聞いて、理解できるのだろうか。絶対無理だ。


 「ふむ、MarchWarsという前作があるのか」


 「いや、前作どころじゃないんだよ……」


 「何作あるんだ?」


 「さぁ、俺が知っているのは今からのを含めて七作かな……聞いたことないけど……」


 「そんなにやっているのか。どんな壮大な物語なんだ」


 「お姫様が傭兵になって激闘の末、結婚して、結婚相手が死んで、友人が悪の親玉の腹を裂いて出てきて、戦っている最中に崖から転落して、なぜか王女様になってドラゴンを倒す話らしいぞ」


 「アービス、悪いものでも食べたのか?」


 すごい心配されてしまった。アニスの眉が八の字になっていた。違うんだ。本当なんだ。頭がおかしくなったわけじゃないんだ。


 「いや、みんなから聞いた情報を繋げるとこんな感じなんだよ! まぁ、全部見てないから知らないけど!」


 「僕は頭痛が起き始めたよ、まぁ、聞き流しながら聞くとしようか」


 「あ、ああ、もうそれで良いと思うぞ」


 ちゃんと聞いた方が良いだろと言おうと思ったが、俺もそうなりそうだからとりあえず同意をしておいた。


 「とりあえずMarchWarsからMarchFantasyまでのあらすじを話していきますね~!」


 そんな言葉が聞こえ、この朗読会何時間あるんだよとツッコミたくなったが、アモンさんは上での思いを知らず、その長い長いシリーズのあらすじを話し始めた。

 初っ端からお姫様が自身の王様を殺すシーンから始まり、アモンさんの変顔を見た瞬間にこれ、大丈夫かと不安になってしまった。

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