エイリヤカ決着
黒い雷が周囲へ放電し続ける。その姿は、もはや先ほどまでのジエルではなかった。身体能力は電気によって飛躍的に向上し、その身に纏う黒い雷は空気すら震わせている。エイリヤカは刀を構え、その姿を静かに見つめていた。
「来い....」
次の瞬間。ジエルが地面を蹴った。
「おおおおぉぉぉ!」
雷鳴と共にその姿が消える。エイリヤカが刀を振るう。しかし、それよりも早くジエルの拳がエイリヤカの腹部へ叩き込まれていた。
「まだだ!」
拳、蹴り、そして黒い雷による雷撃。さらに右手へ黒い電気を集束させ、そのまま振り抜く。黒い雷の刃がエイリヤカの肩口を斬り裂いた。だが。
「甘い」
エイリヤカの姿が消える。移動の省略。その能力によって一瞬で距離を取る。
「前よりも出力が上がっている....」
エイリヤカがそう呟いた瞬間だった。上空から五つの爆弾が降ってくる。
「何!?」
激しい爆発が起こり、大量の砂埃が舞い上がった。
「視界を奪います!」
亜爆が叫ぶ。エイリヤカはすぐさま刀を振るった。斬撃によって爆風そのものが切り裂かれ、砂埃が吹き飛んでいく。
「視界を封じるためか」
視界が晴れたその時。
時輪の左手のインターフェースが光り、ジエルの肩へと触れる。
「時限強化」
ジエルの身体が淡く光り始める。
「これは……!」
時輪はジエルの目を見て言う。
「30秒でけりをつけろ」
「ああ!」
ジエルは力強く頷いた。
その瞬間。流鹿が叫ぶ。
「ルーク!」
巨大なルークが地面から出現する。ジエルはその上へ飛び乗った。
「利用させてもらうぜ!」
「好きに使いや!」
ルークを蹴った瞬間。黒い雷が爆発し、その身体が砲弾のような速度で飛び出した。
「来るか!」
エイリヤカは迎え撃つように刀を構える。
「ならば!」
左手を前へかざす。赤い斬撃が何十と放たれていく。
「エデン君!」
流鹿はエデンに合図を送る。
「はい!」
「リミットナイト!」
エデンが前へ飛び出し、黒い鎧で斬撃を防ぐ。
「風黒さん!」
「任せてください」
風黒が槍を振るい、斬撃を受け流していく。
「オルにも任せるですぞ!」
オルは口を大きく開ける。赤い斬撃が次々と吸い込まれていった。
「俺も忘れんといてや!」
流鹿の召喚したルークが盾となって残った斬撃を受け止める。
全員がたった一人のために道を切り開いていた。
「行け!ジエル!」
エデンの叫びが響く。
「おう!」
ジエルの速度がさらに上がっていく。時限強化によって強化された身体能力。そして臨界雷怒による強化。二つの力が合わさった今のジエルの速度は、先ほどとは比較にならない。エイリヤカもまた、静かに刀を構える。
「これほどの戦いになるとは思わなかった」
その声には賞賛が込められていた。
「だが、武人として」
「最後まで全力を尽くそう」
ジエルの右手へ黒い雷が集束していく。それは次第に一振りの刀へと姿を変えていった。黒い雷によって作られた漆黒の刀。
「これで終わりだ!」
「臨界怒雷刃!」
エイリヤカもまた刀を振り下ろす。
「いざ!」
二つの刃が交差する。しかし──
ジエルはその場から姿を消した。
横。エイリヤカの死角に現れる。
「終わりだ!」
黒い雷の刀がエイリヤカの横腹を深く斬り裂く。
「ぐっ……!」
傷口から赤い光が漏れ出していた。そこには、小さな赤い核が露出している。
「そこだぁぁぁ!」
ジエルは黒い刀を強く握り締める。黒い雷の刃が核へと叩き込まれた。電気がはじける。核が砕け散る。エイリヤカの瞳が大きく見開かれた。
「見事……」
その言葉を最後に、エイリヤカの身体はゆっくりと崩れ落ちていく。地面へ倒れ伏した進化個体を見て、その場に静寂が訪れる。
「……勝った?」
亜爆が呟く。
「やった!」
エデンが思わず拳を握る。
「流石やな!」
流鹿も笑みを浮かべる。
「ふぅ……」
ジエルは黒い雷の刀を解除し、その場へ膝をついた。
「どうにかなったか」
時輪も安堵の表情を浮かべる。
オルも嬉しそうに飛び回っていた。
「勝ったんですぞー!」
全員が、一瞬だけ勝利を確信した。だが。
「皆さん……待ってください」
風黒の言葉によって、その場の空気が変わる。
「どうしたんですか?」
「見てください」
風黒がエイリヤカを指差す。倒れている。核も破壊した。しかし──
「消えてない!」
エデンが小さく呟く。倒れているエイリヤカは、一切声を発しない。まるで何かを待っているかのように。勝利の喜びは、一瞬にして不気味な静寂へと変わっていた。




