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ゴーレムの可能性は無限大 〜副業で探索者になったら職業とスキルの組み合わせが良過ぎたみたいです〜  作者: 伝説の孫の手
A.B.Y.S.S.建国

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第186話 運用確定――優先順位と線引き

休憩が明けると、会議室の空気はさらに引き締まった。

雑談が消え、誰もがモニターの次の資料を待っている。骨格の次は、運用。つまり“日常のルール”を決める段階だ。


桃花が端末を操作し、画面に大きく四項目を出した。


「具体運用は次の四つを詰める。公の仕事の“出方”。国際連携の“共通ルール”。国内安全保障の“保護枠”。そしてレベル上げと業務の“優先順位”よ」


臼杵が腕を組み直す。


「現場で揉めねえように、全部決め切るってわけだな」


「そうね、ここを曖昧にすると“勝手に決められる”」


宮園が冷静にそう言い放つ。


それに応えるように桃花が続ける。


「だからこちらが先に決める。これは主導権の話よ」


そうして、まずは“公の仕事”から現在の提案をまとめた資料を組合の職員が配る。

西園寺がその組合側の資料に視線を落とし、その内容をもとに話し出した。


「三段階に分類を分けるわけか。A:必須。B:代替可能。C:拒否可能。大まかにこのラベリングで管理する感じだね」


西園寺のその発言を受けて、嵐山が即座に言う。


「Cは全部拒否でいいだろ」


白峯が嵐山らしい冗談を受け苦笑した。


「言い方は乱暴だけど、方向性は大事だよね。何を“拒否していい”か。これの判断も個人でしてしまうと問題になる場合がある。この判断も組合に任せてしまえるってことですよね」


桃花が頷く。


「そう考えてもらって問題ないわ。たとえばAは共同声明、緊急ブリーフィング、合同チームの発足に関わる公式の場なんかが当てはまるわね。ここは欠席すると“非協力”に見える。だからこれには出てもらう必要がある」


そこに剛志が確認するように割ってはいる。


「Aの時はさっき話に出ていたように俺たちは“探索者の立場”ってやつだけしか話さないってことですよね。まだあまりピンと来ていませんがその辺はその時に貰う台本なんかに目を通して理解しようと思います」


剛志は少し前までこのような公式の場に出るなど考えたこともない一般人だ。そんな人物にいきなり多くのことをこなしてもらうのは無理があるだろう。まずは今本人が言ったみたいに、できることからやってもらうのが確実というわけだ。


そして、西園寺が分類についての説明を引き継ぐ。


「Bは視察団対応、メディア対応、共同訓練の公開なんかが当てはまるね。これらは録画・代理・最小人数での対応が可能なものになる。こう言った案件は組合が調整した上で僕たちに振ってくるということさ」


臼杵が鼻で笑う。


「つまり俺たちは、振られた時だけ顔を出せばいいという認識でいいわけだ」


「そうね。この案件を振る作業が私たちの管轄よ。あなた達は矢面に立つという変えの効かない部分を担ってもらうわけだから、裏方は完全に任せて頂戴」


桃花が言い切る。その瞳はプロとしての矜持のようなものが宿っているかのように、メラメラとした自信に満ち溢れていた。


「そしてCは引き抜き目的、管理目的、個別国家案件への直参加なんかが当てはまるわね。ここは原則拒否しましょう。窓口は全部組合が持つわ」


『妥当です。交渉窓口の分散は、情報漏洩の起点になります』


イチロイドの念話が、淡々と裏付けた。


次に決めるのは“国際連携”についてだ。

西園寺が資料をめくりながら会話を引き継ぐ。


「国際連携の共通ルールは、現場で死者が出やすい項目順に決める必要があるね。交戦規定、救助優先順位、撤退基準、情報共有の範囲なんかだ」


それに対し万葉が短く言う。


「特に撤退基準ね。撤退できない連中は死ぬ」


万葉の発言を受け、宮園が補足する。


「特に海外は“突っ込ませる文化”がある国もあるわ。探索者を兵器として扱えば、消耗品になってしまう。だから最初から、撤退線を共同で定義する必要があるというわけね」


剛志は宮園の言葉を噛みしめる。

世界規模の戦いになれば、現場はもっと混沌とする。ルールがなければ、強いだけでは守れない。個人間の戦いでは必要のないこう言った事柄も、関わる人数が増えれば増えるほど、しっかりと決めておかないとどこかで必ず歪みが生じるのだ。


「情報共有の範囲なんかはどうします?」


剛志が問いかけると、桃花が答える。


「剛志くんに関してでいうとゴーレム運用の詳細は出さない。連携に必要な“最低限の仕様”だけを共有する形ね。あなたの設計や量産の仕組みは機密事項よ。剛志くんに限らずだけど、基本全ての探索者の情報共有の基準も似たようなものだと思って」


臼杵が頷く。近くで剛志の規格外を目の当たりにしているだけあり、その重要性が痛いほどわかるのだろう。


「剛志のゴーレム戦力なんか欲しがるやつ、山ほどいるだろうしな。単純な戦力で言ってもそれなりだが、その応用力は下手すりゃ世界一だぜ」


「全くもってその通りだわ」


桃花は淡々と言う。


「提供するのは“こう動く”“こう連携できる”という現場仕様だけに止める。それでもどこからか情報を吸い出そうとしてくるのがこういう連携体制の常よ。気をつけて頂戴」


次は“国内安全保障”だ。

桃花が資料をさらにめくり、話を続ける。


「次は“国内安全保障”について決めましょう。ここが一番、現実に効いてくる部分だとおもうわ。まずは保護枠を整備する。移動ルート、宿泊先、連絡網。護衛。情報管理などね」


臼杵が少し面白そうに話す。


「護衛って、俺たちが護衛される側になるのか」


初めは剛志の護衛ということで組合に雇われていた臼杵、そして万葉の二名は、今回の出来事で逆に護衛対象に入るという何とも皮肉な現実がそこにはあった。


臼杵も万葉も戦力で言えば誰かに守られる必要のない人物だが、今回は命を狙われるというだけでなく、情報を抜かれるなどと言った攻撃方法もある。そう言ったことから守るためにもしっかりとした護衛体制を築く必要がある。世界情勢はその段階に移行してしまったということの証左でもあった。


そんな臼杵の発言を龍之介が豪快に笑う。


「縛るんじゃねえ。いわば鎧だ。着れば動ける。着なきゃ刺される。それだけのことよ」


もと探索者らしい表現だが、龍之介の発言は確信をついている。そしてその例えは探索者の面々には理解しやすかった。


多少動きづらくなったとしても、ダンジョンを潜るにつれて防具を強化していくというのは探索者の基本中の基本だ。まあ、剛志のようにあまり装備にこだわる必要のない例外も世の中にはいるのだが…


少し話が逸れたが、最後に“優先順位”について詳細を決める。

桃花がそこで一枚の表を示した。


「最後に優先順位は明確にするわ。一位:レベル上げ。二位:Aの公務。三位:国際連携の実務(ルール・訓練)。四位:それ以外。組合としてはこの優先順位で動くつもりよ」


まさかの優先順位に思わず剛志が食い下がる。


「レベル上げが一位、って明言していいんですか?」


「構わん」


龍之介が即答した。


「強さがなけりゃ、何も守れん。外が何を言おうが、日本は探索者ファーストだ。そのかわり、気合を入れてレベル上げを行なってくれよ」


龍之介の何とも豪快な発言に、この人物の器の大きさを感じ取った剛志は、言われたように気合を新たにするのだった。


そして桃花が龍之介の発言に続く。


「基本的に剛志くん達の窓口は私。最終判断は会長になるわ。あなたたちは“呼ばれたら行く”じゃなく、“必要な分だけ行く”ことになる。それ以外の接触は全部、組合を通す。これが基本方針よ」


桃花が資料を閉じ、視線を全員に配る。


「あとは運用を回しながら、必要なら修正しましょう。でも柱は変えないわ。“探索者ファースト”。“組合が盾”。“レベル上げ最優先”これがうちとしての行動指針になる。」


龍之介が最後に、拳を軽く机へ置いた。


「よし。決まりだな。外が何を企もうが、日本の探索者は日本の意思で動く。A.B.Y.S.Sだろうが、どこの国だろうが――踏み込んできたら、叩き返す」


西園寺が静かに頷く。


「守るために、強くなる。僕らはその一点で一致している。協力してこの局面を乗り切ろう」


剛志も小さく頷いた。


「はい。……俺も強くなります。皆さんに守られるだけでなく守れるようになるために」


その言葉に、会議室の空気がわずかに引き締まる。

決めたのはルールだけではない。


これからの戦い方、そのものだった。


本作品を楽しんで頂きありがとうございます。

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