第164話 臼杵vsジュリア
それぞれ別々の敵とのタイマンになってしまった、横浜ダンジョン地下60階層での戦い。その中でも臼杵とジュリアの戦いは、魔法職同士の戦いである。
臼杵がユニークスキルの雪魔法の使い手であるのに対し、今わかっているジュリアの攻撃手段は炎だ。本人の発言もあり、雪に対して有利な炎系統の魔法使いなのであろう。
「そこの雪魔法の使い手さん。せっかくのユニークスキルでも、相性差ってのは覆しようのないものでしょ。私の炎で丸焦げにしてあげるわ!」
そう言うや否や、両手の先に炎の球を生み出したジュリアは、その球を投げつけるようなモーションとともに射出し、臼杵を攻撃してくる。それに対し、臼杵は冷静に対処を行う。
「情熱的な女性ってことか?嫌いじゃないぜ。でも俺はどちらかというと、おしとやかな方がタイプなんだ。今回は残念だけど、お断りさせてくれ」
そう言いながら、ジュリアの魔法に対抗するように目の前に雪の壁を半球状に作り出し、炎の球を防ぐ。そしてそれにより、お互いがお互いの姿を一度見失った。このレベルの実力者がこの隙を逃すはずもない。全く同じタイミングで、次の一手にお互いが動き出した。
臼杵は、前回の闇の大精霊との戦闘の際に活躍した雪分身を作り出し、自分は姿をくらました。それに対しジュリアは、大きな火の玉を上空に浮かべ、大技の準備を終えていた。
「【太陽の一撃】」
そう言って構える頭上には、先ほどの炎の球などとは比較にならないほどの巨大な火の玉が浮いていた。大きさにして直径約4mほどだろうか。それほどの大きさの火の玉が、まさに太陽を彷彿とさせる見た目でたたずんでおり、周囲の温度はそれに伴い急上昇する。
急上昇した温度のおかげで、臼杵が放っていた雪の壁がもろくなり、溶け出すほどだ。
それを確認した臼杵が、ビビったようにつぶやく。
「それはいくらなんでもやべーな。俺が雪を使っていなくても関係ないほどの熱量じゃねえか」
そしてそうつぶやいた臼杵は、急いで雪分身から距離をとる。そうでもしないと、いくら攻撃を分身で受けたとしても、その余波で十分すぎるダメージを受けることは目に見えていたからだ。
そして、次の瞬間──臼杵の雪分身めがけて巨大な火の玉が投げられた。
それはスローモーションに見えるほどに暴力的な一撃だったが、雪分身から距離をとったはずの臼杵の本体の元にも、その余波は襲いかかる。
堪らず隠れていた利点を放棄し、自身と爆心地との間に雪の防御壁を生み出す臼杵。それをジュリアは見逃さない。
「やっぱり逃げていたわね。でも、見つけたわよ」
そう言って、自身の背中に爆炎を吹き出しながら高速移動してきたジュリア。そのまま今度は、炎を纏った拳を振りぬいてくる。
「【炎の化身】」
そうして今度は、自身に炎を纏い、縦横無尽に大立ち回りをしてくるジュリア。それに対し、臼杵は防戦一方の状態だ。
迫りくる攻撃はすべて雪の防御壁で防いでいるものの、一向に攻撃に出ることができずにいた。
「そんなに逃げてばっかだと勝ち目はないわよ! このまま消し炭にしてあげる!」
攻撃のテンションからか、若干攻撃的になっているようなジュリア。しかし彼女の言っていることは正しい。このままだと臼杵の勝ち目は薄いのは間違いない。
「さすがに厳しいわな。そこまで炎特化の魔術師とは……てかこの戦闘スタイル、本当に魔術師か?」
今もなお止まらない連続攻撃を、冷静に雪の障害物を置きながら、自身も体を動かしてよけ続ける臼杵。あまりに近接攻撃に長けている相手に対して、本当に魔術師かと疑い出した。
そして、その疑問は的を射ていたようで──一度呼吸を整えるためにバク転で臼杵から距離をとったジュリアが教えてくれた。
「ええ、私は魔術師じゃないわよ。私は炎魔拳士よ。炎魔法と武術のエキスパート職よ。残念だったわね。あなたとはことごとく相性がいいみたい」
そう言うジュリアは、得意げに臼杵の方を見る。そして臼杵は、その真実を聞かされて「なるほど」と納得した。
「なるほどな。そういうことか。どうもおかしいと思ったんだよな。そういうことなら納得だぜ。それに相性って面だけで言えば、必ずしも悪いってわけじゃないぜ」
「何を強がってるのよ。炎魔法を使えることで遠距離にも対応できるこの職業は、魔術師系ジョブにとって天敵よ。あなたも今までの相手のように、簡単に倒してあげるわ」
今までの経験から、かなり自信があるらしいジュリア。しかし臼杵は、そんなジュリアの発言を聞いたうえで、その意見を否定した。
「確かに、普通の魔法職だったら不利だったかもしれないが……俺はユニークスキルの雪魔法使いだぜ? お前さんが今まで戦ったことのない魔法使いだ。あんまり侮ってもらっちゃ困るな。ま、実力は戦いの中で示すとしますか!」
そう言い返す臼杵。両者一歩も譲らぬ意見のぶつかり合い。どちらが正しいのかは勝負の結果明らかになるだろう。それまではどちらの意見も間違いではないのだから。
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