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第22話 まさかの訪問客、襲撃!

「やあ、もう始めているかね?」


威厳とお茶目のミックス、みたいな渋い声が聞こえてきた。


「ふぇ……?」

だだだ、誰? いや、この声、聞いたことが――


……あるけど、まさかね。


え? まさか、違うよね!?


そんな、だってーー


「父上!?」

「あれ~、父様きたんだ~。もしかしてヒマなの~?」

「これ、ハロルド。父に対して暇はないだろう。暇は」


「おおお、王様!?」


突然、パーティの場に現れたのは、そもそものパーティのきっかけのこのお菓子たちを贈ってくれた、国王陛下!?


「やあ、サファ。元気そうだな」

「え……はい。あの――」


なぜここに。え、通りかかり? じゃないよね。ここはぼくのお部屋の前の中庭だし……。


「私の分の席もあるかな」

「あ……はい」


ちょうど予備の席が用意されていたけども。

……ん? ということは――


「え! へいかもお菓子パーティきてくださったっ、ですか?」

……あ、ビックリでちょっとかんじゃった。


「うむ。そなた手紙をくれたであろう? 『いつか一緒にお菓子を食べたい』と書いてあったからな」

あっ、お礼状のやつ!


「父様ったら、それは社交辞令っていうやつなんじゃないの~?」

「そんなわけなかろう。サファはまだこんな小さな子供だぞ。なあ、サファよ」

「は、はい!」

「えーそうかなぁ。どう考えても社交辞令でしょ~」


まあ……正直に言うと、ね? うん。

だって、ぼくの立場で国王陛下をお茶に誘うなんて、身の程知らずすぎるもん。

でも、一緒にお菓子食べたい気持ちだよ。って伝えるのは無礼じゃないって思ってぇ……。


え、でも来てくれたの?


「わぁぁぁ……わぁぁぁぁ」


いよいよ陛下がぼくのお菓子パーティに来てくれたらしいことが確定して、思わずしゅたっと立ち上がっちゃう。


「へいか、本当に? 本当にぼくのお菓子パーティにきてくださったんですか?」

「うむ。私も参加して構わぬなら、ぜひ混ぜてもらおうと思ってな」

「わーー。すごい! ありがとうございますっ!」

「ああ、はは、よかった。では邪魔するとしよう」

「ここ、ここお席あります。どうぞ!」

「うむ」


「わぁぁ、すごい!」

全員を見渡して、おもわず声が漏れる。4人のパーティは、もう立派なパーティじゃない? すごい!


「ではっ! はじめましょうっ!」

ぼくの声が、ウキウキの気持ちのまま空の下に響いた。



***


「うむ……いい茶葉だな。すっきりして喉越しがいい」

「父様ったら、それお酒飲んだときの感想みたい~」

「ハロルド、いちいち父上を茶化すな」

「おおお……」

お……王様親子が3人集まってしまった……なぜ。


「どうした、サファ。目をパチパチさせて」

「王さまと王子様たちがお話ししてる!と思って!」

「はは、そういえばそうだな。父上がこられたのは驚いただろう?」

「あ……はい。ビックリしました!」

ファランさまの、ちょっと「大丈夫ぅ?」みたいな顔に、お返事。


「でも、うれしいビックリは、もっともっと楽しくなるので好きですっ!」

「ははは、そうかそうか。サファは肝が座っているな」


いいええ、常にビビり散らかしてますぅ。でも、これも将来の悪夢を回避するチャンスと思えば!ぜんぜんぜんぜん。悪いことじゃなきゃ、なんでも大歓迎です。


「そうか。サファがうれしいのなら、よかった」

ファランさま、ずっとぼくのこと気にしてくれるの。王子様すぎない?

まぁ、本当に王子様なんだけど。


「あ……!」

へいかとでんかたちを見渡していると、ふとテーブルの中央のピカピカの箱が目に入った。


「もうひとつ、うれしいびっくりがあるのかなぁ? ねえ、アン?」

箱は後のお楽しみですよ、って言ってた侍女さんを見上げる。

え……多分、アンだよね。今日は珍しく3人髪型が違うから、見分け可能。


「はい、サファさま。皆様お揃いですので、お披露目しましょう」

アンは、待ってました、というように近くで控えていた別の侍女さんに合図をした。


「それでは――こちらです」

侍女さんの掛け声で箱がすぽんと取られる。


「う……わぁぁぁぁぁあああ!」

びっくりした。一秒だけ息止まった。


「本日のテーブルの主役、王宮菓子職人謹製、フワラーデコレーションケーキでございます!」


「わわ、ハート! ハートの形! お花! 花束なのね? のってる!」


箱の中から現れたのは大きな白いケーキ。ハートの形で、周りには細かいレースのようにクリームが絞られてぷるんとしてる。

そして、上には淡いピンクや赤や紫の大きいのと小さいのの花束みたいなのが乗っている。


「わわ、すごく小さいお花もある! はっぱも! すごい! かわいぃぃぃきれぇぇぇぇ!」


へいかたちのまえで大声で騒いじゃダメ!のセーブがぎりぎり聞いて、小声で叫ぶ、という謎の技を披露してしまう。


「これ! これ、どうしてっ!」

今日は王様にいただいたお菓子でパーティだったのに。ケーキははじめに食べてしまったからないのに。なんで、あたらしいこんなすごーいケーキがっ?


「ケーキ職人の方々が、パーティのお話を聞いて是非に、と作ってくださったんですわ」

「サプライズプレゼントだそうです」

「わぁぁぁ! すごいっ! すごいね! うれしぃぃぃ」

わざわざパーティのために!? えぇぇぇ、ほんとに? そんなことしてくれるのぉぉ?」


「父様が王宮の職人たちに、ちびちゃんには好きなときにお菓子を作ってあげるように、言ってたんだって~?」

「ええっ、そうなんですかっ!? へいか」

「はは、そうだ。余が贈った菓子を、そなたが喜んでおったからな」

「わぁぁぁ、すごい! へいか、ありがとうございますっ! すごい!」

「はは、よいよい。職人たちも作り甲斐があるようで、喜んでおったしな。そなたはまだ伝えておらんかったが、なにか欲しければ頼むといい」

「わぁぁぁ……ありがとございますっ!」

すごい。これはさすがに嫌われてないっ! なんかの罠とかじゃなければ、さすがに。


「いやぁ、しかしこれはまた――」

へいかは、そう言いかけて、またまじまじとテーブルの中央にどーんと置かれたケーキをながめた。

「……随分と可愛らしいケーキを作ったな」

「本当ですね。久しぶりにこんな凝ったケーキを見ました」

みんな、目をまんまるにして花束ケーキを見つめている。


「なんか僕の生誕祭よりも、凝ってる気がする」

ハロルド殿下はちょっと、むむっとしている。

え、怒ってる? ちょっと怒ってるの? 大丈夫?


「それはお前が、派手なケーキは子どもっぽくて好みじゃない、とか変な注文つけだしたからだろう」

「そしたらさ、やたらつるーんとしたケーキがでてきて」

「ははは。職人たちも加減がわからなかったんだろう」

「だが、あれはあれで美味だったろう」

「まぁね」

「つるーん、のケーキ……」

どんなケーキなんだろぉぉ? それはそれで食べてみたいぃぃ。

「サファも今度、作ってもらうといい。味は格別だぞ」

「はいっ!」


「それでは皆様方、ケーキをお切りしてよろしいでしょうか?」

侍女さんが、会話の切れ目にするっと入ってきた。でも――


「あぁぁ……切っちゃうのぉ……?」

こんなにきれいなのにぃぃ、もったいないーー!


「うむ。サファが気に入ったようだから、もう少し鑑賞してからにするか」

「はい、承知いたしました」


「ぼく、ちかくでみてもいいですかっ?」

ソワソワしてたぼくは、席を立ちそうになるのを我慢しながらとうとう口にした。

「ああ、もちろんだ。近くで見るといい」

「はいっ!」

すっと、できるだけお行儀よく席から降りて、近づく。


「わぁぁぁ。かわいぃぃぃぃ」

これはもはや芸術作品なのでは? え、ほんとに食べ物? 食べるの? これをぼくが?


「職人たち、えらく気合を入れたもんだな」

へいかも、ケーキを見てしみじみ。


「なんか、前のときに直接お礼と感想を言いにきて手紙までくれたのが、よほど嬉しかったみたいだよ~」

「お前、菓子職人たちとそんな話までしてるのか?」

「職人さんたちだけじゃないよ。王宮のいろーんな人といろーんな話をしてる~」

「いろんなって……」

「僕は兄様と違って親しみやすいからさ、いろいろ話してくれるんだよ~」

「私とは違う、とはどういう意味だ?」

「兄さまはほら、な~んか硬いじゃん? ちょ~っとだけ話しにくいんだよね」

「硬い……私が?」

ファランさまの額にピキン、と音を立ててシワが寄った。……気がした。


「え? まさか自覚ないの? その年でそんなカチカチなの兄様くらいだよ」

「カチカチとはなんだ。それをいうならお前が緩すぎるのだろう」


「おお、兄弟喧嘩か? 久しぶりに見れるのか。いいぞ、思いきいりやれ」

はわわわ、へいか止める気ぜんぜんない?っていうかむしろ楽しそう!?


「でも、え、あのっ……」

「はは。サファ、心配いらないぞ。2人の小競り合いは遊びみたいなものだからな」

えーーほんとにぃ? でも、でも、喧嘩だよー? これで気まずくなったりしたら困るよぉ。


「まったく、なにがカチカチだ。」

「お、カチカチ対ヤワヤワの対決か? ん?」

もう、へいか! あおらないでください!


「カチカチよりはヤワヤワのほうがいいでしょ~」

やだーー、どんどんファランさまのおでこがピキピキになっていくー。ハロルドさまはなんでニヤニヤしてるのー。


「お前――」

えーん、どーしよう。今日はせっかくみんなでおいしいお菓子を食べるパーティなのに!


はっ、そうだ!


「ファランさま、ハロルドでんか」

「ん、どうした?」

「なあに~?」

ふたりがちょっとピキピキとニヤニヤをおさめてこっちを見てくれる。

やった、チャンス。うまくやれー、ぼく。


「ぼくは、カチカチもヤワヤワもいいと思いますー」

「ん……?」


マズい。言い方がお馬鹿すぎてぜんぜん伝わってない。


「だ、だってほら……カチカチのチョコレートとかクッキーはおいしいし、ヤワヤワのムースケーキやマカロンもおいしいです」

アホの子っぽくてもいい。なんとなく雰囲気がよくなれば。


「だからカチカチでもヤワヤワも、ぼくどっちもとってもいいなーって思いますっ!」

「サファ……」

ファランさまの表情から、ふぅっと力が抜けてニコッとなった。

おおお、ちょ、ちょっとは効果あり!?


「はは、そうだな。サファの言うとおりだ」

「おちびちゃんってば上手いこと言うね~」

ハロルド殿下も、ニヤニヤじゃなくていつものニコニコになった。はぁぁ、よかった。


「ま、たしかに、どっちがいいとかじゃないよね。個性ってやつ~」

ハロルド殿下がサラッと言って、ファランさまはんん?っていう顔になる。


「ハロルド……お前、私を馬鹿にしているのではなかったのか」

「そんなわけないじゃん。ちょっと反応が面白いから、言ってみたかっただけ」

「……まったく、お前は。兄をからかうものではない」

「ふふふ~。ごめんってば~。ほらほら、そんな眉間にシワよせないでさ~。えいえい」

「こ、こら! グリグリするな!」

おおおー、思ったよりいい感じ? もしかしてこれは、ぼくの心配しすぎだったやつ?


「あはは~、ほら、お菓子食べよ~? カチカチのクッキーにする? ヤワヤワのマカロン?」

「そうだな……」

「どっちも? どっちも食べますか、ファランさま!」

あ。お菓子に迷っているファランさま、という図が珍しくて、つい話に入っちゃった。


「ふっ……ああ、そうしようか。ありがとう、サファ」

おお、ニコニコのニッコニコになった。よかったぁぁ。


「えへへ~。これとぉ……あと、これぇ」

ぼくはルンルンでテーブルを周って、一番ファランさまにピッタリな王冠を付けたうさぎさんのクッキーと、お星さまが散りばめられた青色のマカロンを選ぶ。

「はぁい、どうぞぉ」

透明なラッピングに包まれたそれを、丁寧にお皿に乗せて任務完了!


「ふっ……私のために選んでくれたのか。ありがとう、いただくよ」

「はああい!」

ああ、ウキウキしすぎて元気に手を上げてしまった……。こ、これはマナー違反……?


「はは、サファは元気でいいな」

「えー、僕にも選んで~」


おー、みんなニコニコだから怒られない! ラッキー。


「はぁい。じゃあ、ハロルドさまとへいかのも、ぼくが選んでいいですかっ?」

「ああ、頼んだぞ」

「うん、楽しみ~」


はわわわ、楽しみにされてるっ。

むむ、頑張って選ばねば。


「うーん、じゃああへいかのクッキーはぁ――」

ちょっと予想外で、ちょっと責任重大で、とっても楽しいお菓子パーティ。


「サファさま、お選びになったら、そろそろケーキをお切りしましょうか?」

横から聞こえたヒソヒソに、あっ!となる。

もうちょっと見てたい気もするけどぉぉ……でも、お腹いっぱいになっちゃったら大変。


「うん、じゃあおねがいっ!」


ううう、あの激かわかわなケーキ、どんな味なのかなぁぁ? 楽しみっ!


まだ、本番はこれからだっ!


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