表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/227

第47話 好奇心

 次の日から、ボクはアルにくっ付いて森の中へ入っていった。もちろん、アルは剣の稽古のために魔獣を探してる。

 もう、この辺の森では、あまり魔獣を見なくなってしまった。


「センセ、もうこの森じゃ稽古にならないよ~」


 アルは、剣を抜いて振り回しながら、頬っぺたをちょっと膨らませて、愚痴をこぼした。


「まあ、気長にいこうや……それに、魔獣ばかりそなに出て来られても、みんなが困るだろ?」


「そっか、それもそうね!……この森の魔獣は、全部あたしがやっつけちゃったもんね!」


 とても、嬉しそうにアルは、森の中ではしゃぎまわって喜んでいた。







「あ!センセ……ラビッシュよ!」

「うん、ちょっと待って、今、見てみるから……」


 ボクは、目を凝らしてラビッシュを見ると、全身が緑色に光っていた。


「ああ……やっぱりラビッシュは、君よりも弱いって、映るよ!」

「そりゃ、そうよ!今じゃ、ラビッシュは剣の一振りで、何匹いても一掃できるもん!

 ……エイッ!………≪シュワワワーーーッシュ≫………ほらね!」



「ウーン!流石アルだ、10匹ぐらいのラビッシュが、一瞬で居なくなったね……」



「ねえセンセ!もう少し奥へ行ってみましょ…………この奥にね、大きな湖があるらしいの!ねえ、お願い!」

「よく知ってるね、アル」

「この間ね、お母様から地図をいただいたの。

 ……あたし達の村の…………昔の地図だって。

 多分お母様が、子どもの頃の地図らしいわ。

 …………だから、魔王が世界を騒がす前よ、ねきっと!」




 最近のアルは、15歳の誕生日を過ぎてから、一段と稽古も頑張っている。毎日のように森に出かけて、魔獣を探して戦うんだ。

 家の近くの森で遭遇する魔獣もほとんど同じで、少し飽きてきているかもしれない。



 それでも、ボクは戦うのは怖いので、アルには無理をしないようにいつも家の近くで過ごすようにしている。それが、アルには少し不満なのかも知れない。

 今は、きっと戦えば戦うほど強くなるような気がしているんじゃないかと思うんだ。




「うん、じゃあ、今日は少し奥まで行ってみようか?」

 ボクは、渋々アルの提案を飲んだ。


「やったー、ありがとう、タロウセンセ!」




 そう言って、アルはボクに抱き着いて嬉しそうに笑った。そして、何もない森の中で剣を振り回しながら、奥を目指して歩き出した。

 ボクも、急いで後を追ったが、最近ではアルの歩くのに追いつくのが疲れるようになってきた。


 あんなに重い剣を片手で振り回した上に、こんな速さで森の中を歩くなんて、もういっぱしの冒険者だと思った。




 昔は、この世界にも冒険者は居たようなのだが、“悪魔の1年”の時、魔王に戦いを挑んだほとんどの冒険者は、魔王じゃなくて、その手下の魔獣達に殺されてしまったそうだ。

 折角魔王退治に挑んだのに、きっと冒険者達は、無念だったと思う。




 ヒューーーーウ……ヒューーーウ……ヒューーーウ……




「センセ、何か聞こえるよ!」



 ボクは、急いで周りを見た。鬱蒼と茂る草と空も見えないくらいの高い木に囲まれた森では、魔獣でも、普通の動物でも、目の前に現れなければ、見つけることはできないだろう。



「少し、先を急いで、早く湖の近くへ行こう!」

「うん、分かったセンセ!……じゃあ、あたしにつかまって!」



 急に、アルは、剣を背中の鞘に仕舞った。そして、ボクの手を掴むと、ヒョイとボクを肩に担いだ。



「お、お、おいアル?……こんなことして重くないかい?」


「何言ってんのセンセ、あたしね、センセくらい一人で運べるようになったのよ……じゃあ、走るわよ!」




 アルは、ボクを担いだまま、森の中を全力で走り出した。肩に担がれたまま、ボクは風を切って進む速さに驚いて、思わずアルの上半身にしがみ付いてしまった。


 華奢に見えたアルの体が、なんと逞しく力強い感じがして、また、驚いてしまった。




(つづく)


 ありがとうございます。もし、よろしければ、「ブックマーク」や「いいね」で応援いただけると、励みになります。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ