第45話 信頼の贈り物
「センセ、どうしよ?……戦う?」
「いや、ダメだ。ここは、逃げるぞ……まだ、間に合うから」
「え~?センセ、あのくらい大丈夫だって!」
「アル、今日は小さい子もいるんだ!
……それに、初めて会う魔獣だ!これでは、どう戦えばいいか情報が足りないんだ。
……弁当はそのままにして、静かに逃げるぞ!声を出すなよ!」
「わかったわよ、センセ……」
アルにとっては、少し不満なんだろうが、あいつの強さが分からない。このまま戦うのは危険なんだ!
…………周りの状況を正しく把握しないと、遊びだって…………危険に……………………ううっ!〔クラッ……〕
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【太郎が居た世界の同じ時間】
山口太郎が幼稚園で事故に合ってから1年と少し過ぎた頃、教え子達はみんな小学校1年生になっていた。あの滑り台から落ちた時、太郎が庇った男の子、ジュンヤも近くの小学校へ1年生として通っていたのである。
「ジュンヤ、次の休み時間、外の遊具で遊ぼー」
「え?今日は、外の遊具は使えないって、先生が言ってたよー」
「大丈夫だって!もう、外は晴れてるし…………」
ジュンヤは、雨上がりの遊具で遊ぶのをとても気にしていた。なぜなら、1年前自分が滑り台から落ちた時、やっぱり雨あがりの園庭だったからだ。
そのせいで、担任の太郎先生に…………
「な~んだ、ジュンヤ。お前、怖いのか?」
「こ、怖くなんかないさ。でも、お前達、去年の幼稚園でのことを忘れたのか?」
「覚えているさ。お前が滑り台から落っこちたことだろ?
あの後、俺達だっていろんな人に怒られちまったんだ。
…………でもよ、それとこれとは、関係ないだろ!
いいじゃん、別に、お前はなんともなかったんだから!」
「だけど、だけど……ボクのせいで、太郎先生が…………」
「まあ、あの後、救急車で運ばれていったっけ…………
それから、幼稚園には来なかったもんな。
オレ達の先生も、変わっちゃったし。
…………今度の先生は、あんまりオレ達と遊んでくれなかったよなあ。
…………きっと、太郎先生は、死んじゃったんだよ…………
やっぱり、大人は隠してんだ…………子どもにはショックだとか何とか言ってよ」
「……ムンヤ!生きてるよ!……あの太郎先生は、死んでないよ!きっと、どっかで生きてるって!」
「ジュンヤ、そんなに怒るなよ!……オレ達だって、生きてるって思ってるよ……でもな……」
「太郎先生なら、絶対に分かるんだ!
あの時だって、雨があがって園庭で遊んでイイって言ってくれたんだから、危険なことはなかったんだ。
太郎先生は、なんでも見ただけで分かるんだよ!
あの時は、ボクが調子に乗ってジャングルジムの天辺で、ジャンプしちゃったんだ…………だから…………落っこちただけ…………園庭は危なくなんかなかったんだよ~」
「そうなのかーー……………」
≪…………太郎先生なら、見ただけで分かるんだ~…………≫
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
【太郎が転移した世界】
……………………ううっ!〔クラッ……〕
どうしたんだ?急に眩暈が……ふうー……だ、大丈夫だ
「よし、ここまで逃げれば大丈夫だろう」
弁当を食べていたところから離れて、大きな木の陰に隠れた。そして、ヒマグーの様子を見ることにした。
「……う、う、うわあ!……何だ!……いったい!……こ、こ、これは……」
ボクは、びっくりして、急に狼狽えたので、アル達は心配してボクに駆け寄って来た。
「センセ、センセ!……どうしたの?……しっかりして!……センセってばーー?」
(つづく)
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