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異世界スロー旅~雑草少女の旅するスローライフ~  作者: 鷹山リョースケ
第三章

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083 フラナん家の家族事情

ジャンルカはこのショッピングモールを管理している人なのだそうだ。

 彼を待つ間、誰が誰だっけ? という話になった。


「パテルナの娘が、上がドミニカで下が……誰だ」

「レティシアですわよ」

「グラディス様、フェリシアです」

「フェリシアですわよ。そしてフェリシアの子がジェッセニア」

「セシリアとかいう娘がいなかったか?」

「セシリアはフラナの姉です」


 なんだか年寄りの会話みたい。田舎のバアちゃん達って集まると何故か他家の家族構成再確認するよね。

 そして勤務先での様子や最近買ったものまで知られている。恐ろしい……。


 とりあえずフラナの母ちゃんがフェリシア、兄ちゃんがデメトリオ、姉ちゃんがジェッセニアとセシリア。

 で、フラナは兄ちゃんと仲が悪いらしい、と。


 つか本人の口以外から勝手に家庭事情知ってもいいのかなあ。うーん。

 でもあっちも私がミニステルって知ってたし、いいのかな。それともそういう感覚自体がこの世界には馴染まない? うーんうーん。

 ……いや、そんなこといってたらまたなんにも知らないままで終わってしまう。下世話でも何でも情報は積極的に仕入れていこう。


「なんで兄妹仲悪いの?」

「デメトリオが変節したといいますか」


 リッカドンナが把握してる情報を加味すると、まずフラナの祖母にあたるパテルナ様が現当主。サラッと出たけどつまり貴族じゃねーの。ウボァー。

 ついに明言された貴族に出会ってしまった。明言されてない貴族は周囲にいっぱいいる気がするけど私は限界まで耳を塞ぐぜ。


 この世界の身分は社会での役割分担の意味合いが強くて、差別的な不敬罪等はないと聞いてはいるけど、それを信じるには前の世界の知識が邪魔をする。

 そういう人もいるけど、そうじゃない人も絶対いるはずだ。

 人による。全てがそう。

 頭っから全てを疑うわけじゃないけど、心の準備は忘れずにいたいだけだ。


 まあそれで、なんと次期当主にフラナが指名されたそうだ。

 えー、お貴族の上に次期当主様じゃん。うわあ会いにくい……ということもないか。

 フラナから直接言われない限り、そこは知らない体でいよう。なんかあの子はそういうシチュを求めている気がする。

 いや待て。あんな子供に次期当主の指名? お母さんはどうしたの。


「事故でお亡くなりになりました」


 Oh……いよいよどんな顔して会えばいいのか判らなくなってきた。

 そういやカルレオン領主んとこも兄弟姉妹全滅したんだっけ。

 貴族ってそんな、辺境の貧民並にカジュアルに死ぬものなの……?


「じゃあ、お姉さん達は?」


 後継は長子でも末子でも誰でもいいはず。お姉ちゃん達は何で選ばれなかったんだろう。


「上のジェッセニアはとても優秀でしたので、セルベラ領主になりましたの」


 セルベラ家も色々あったらしく、なんだかんだで最終的にジェッセニアが領主になったそうだ。パテルナ様の家はセルベラ家の親戚なのだろうか。


「魔統が変わっちゃうのでは」

「中継ぎだと聞いておりますわ。セルベラ家の次期当主はまだ幼いので、後見人も兼ねて臨時領主として向かうことになったそうですよ」

「ジェッセニアは優秀だったからな」

「強く、賢く、美しく。そして仲間には優しく、敵には容赦がない。本当によくできた子ですわね」


 そんな優秀なら他家に出すのはもったいないのでは。嫁いだとかならともかく、臨時出向みたいなものなら戻せなかったのかな。まあそんな簡単でもないか……。


「そんなに優秀なのに次期当主じゃなかったんだ」

「パテルナ様のお家は少々特殊なのでございまする」


 知らんけど家ルールにより優秀な長女は次期当主候補ではなかったらしい。

 じゃあ下の姉のセシリアはというと、芸事の道に進んでしまったそうな。

 貴族の子ってそんなフリーダムなの? と思ったら、女は子供ができたら家に入れればノルマ達成だそうだ。あー、そういや血は遠い方がいいっていう価値観だっけ。

 それで回り回ってフラナ? フラナはそれでいいんだろうか……。

 そしてこの話のどこで兄貴のデメトリオが出てくるのかと思ったら。


「突然、デメトリオが次期当主に名乗りを上げたのです」


 全員「あー……」という顔と空気になった。

 跡目争いかあ……。確かに子供のフラナよりは兄の方がというのも判るけど……いやでもこの世界だと魔統の都合で基本、男は選ばれないんだよな。


「そのデメトリオは優秀なの?」

「それなりには。ですので、当主にはしないとのパテルナ様のご判断でした」

「パテルナ様のお家は優秀だと当主になれないの??」

「概ねそのようなものでございまする」


 どうも、やりたいことがあったり何かに秀でていたりするなら、当主業よりそっちをやるべき、というのがパテルナ様の方針なのだそうだ。

 それだと一番最後に生まれたフラナが貧乏くじのような気もするんだけど。


 そしてデメトリオもそれなりに優秀なので、どこか有力な家に入るか、なんなら分家を設けてその当主になるのもアリでは、との下馬評だった。

 なのに突然、次期当主に立候補し、一方的にフラナを敵視して、周囲を困惑させている状況なのだそうだ。


「どう考えても無理だろうな」

「そのデメリオの気持が判らないとは申しませんが……無理でしょうね」

「グラディス様、デメトリオです」

「じゃあフラナが他にやりたいことがあって、当主なんてヤだー、って言ったら?」

「セシリアを呼び戻すか、分家筋で他の候補を探すんじゃないか」


 とにかく、デメトリオの可能性はゼロらしい……。

 そんな話をしていたら、わざとらしい足音が近付いてきた。

 顔を向けると、ティツィアーノともう一人、男性が来ていた。


 大柄で胸板も厚く、仕立ての良い服を着てぱりっとしたイケオジナイスミドルだった。枯葉色の髪をきっちりと整え、同じく整えた口ヒゲが特徴的だ。

 無精ヒゲのおっさんは見たことあったけど、こういうタイプのヒゲおっさん見たの初めてかも。

 ヒゲダンディは大股で私達の席に近付き、優雅に一礼した。


「ジャンルカ、只今参上つかまつりましたァ! これはこれは畏れ多くも主様の御前に罷り出でたる御免、 身に余る果報! 望外の喜び! して、我が身はいかなる失策をしでかし、そしていかなる責めを賜るのでしょうか!」


 最後、パアアアッと光輝く笑顔だった。

 ……おっちゃん、神官だろ。絶対そう。


「うむ、パテルナ様の令孫のことである」

「フラナ様ですかな。御身の周辺、実に煩わしく、ひとときのご休息にと、出入りの商人を通じてご滞在されております」


 兄貴一派がウザくて避難してきたってことかあ。大変そう……。


「それだけであるか?」

「と、申しますと?」

「アレア様に接触してきたとのこと。何か思い当たるかえ?」

「さて……」


 うーん、と考え込んでる様子を眺めながら、私は内心首を傾げていた。

 そこは悩むとこじゃない気がする。なんとなく。言ってはなんだが、むつかしいこと考えるタイプじゃないと思う。


「単に同じ年頃の子供がいたから、話したかっただけなんじゃないかなあ」


 私の素朴な意見に何故か全員ハッとして、再び「あー……」という空気が流れた。

 裏読みが常態になって逆に単純な動機が思いつかなった、みたいな?

 とりあえず、私がフラナとお話してもいいことは確認できた。フラナがどうというより、私が迷惑にならないかと思っただけなのに、なんか大ごとになってごめん。

 ジャンルカはソルジェンテに雑に追い払われたが何だかんだと居続け、最終的に部下とおぼしき男達マッチョが迎えに来て、担がれて強制退場した。


「アレア様ァ! 何卒、何卒このジャンルカをよろしくお願い致しますぅ!」


 何をよろしくするんだ……。

 お返事のしようがないので目を逸らして無視してたら、遠くで嬉しそうな奇声が聞こえたので記憶から削除した。


 その後はのんびりと場内を見て回り、あちこちで新作アイテムを色々と紹介され、サンプルや試供品をたくさんいただいてしまった。

 楽しかったー。

 あ、そういえばフラナの家名聞いてないや。まあいいか。必要ならフラナが教えてくれるだろう。



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