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異世界スロー旅~雑草少女の旅するスローライフ~  作者: 鷹山リョースケ
第二章

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066 さらばセルバ

 ベルレはなんとプレシオに乗ってやってきた。

 プレシオごと神殿内に走り込んできたの、コメディ映画みたいだった。

 プレシオー! 久しぶりだなおっ前ー!

 ブルヒャヒャヒャファー! と、珍妙な鳴き声を上げている。嬉しそう。

 ベルレを下ろした後、まっすぐクソトカゲを踏みに行ったけど。

 ギャアアアアという悲鳴が遠ざかっていった。


 だいぶお疲れのベルレは、それでも久しぶりに見たらやはり倒れるほど美形だったので実際倒れた。床下から見上げてもパーフェクトだ。なんだこの完全体は。この星の人類のDNAいきなり最高到達点かよ。

 グラディで準備運動してて良かった。あやうく口が利けなくなるところだった。


 面白れー私は床に放置して、更になんとベルレはイルミカも乗せてきていた。

 街道で遭遇して、そのままイルミカはベルレがピックアップ、セルバへは丁度一緒にいたセレステ商会の人を送ったそうだ。


 ベルレはマットレスに横にしてあるミカルタを見て歓喜した。

 えっ、ベルレのこんな大はしゃぎ初めて見た。

 欲しかったのに店頭完売で泣いていたガンプラが店の倉庫に一個だけ残ってたみたいな。


「ネウロアークの最新型か! すごいな! ああこんなに割れて……どう直すか……これ木製か、工房に在庫はあったかな……」

「起動鍵もヒューにもらった。アレアが持ってる」

「本当か! どうしたんだあいつ、南で悪いものでも食ったのか」


 もらったっていうかカツアゲしたやつだよね。


「アレアが気に入ったそうだ。それで交渉に出してきた」

「そうか。なら直した後はアレアにやろう」

「私?!」


 持ち家もないのにメイドロボなんて身に余るんですけど!

 それに荒事には向いてないって判ったし……私では守ってあげられそうにない。

 そりゃあ、もうちょっと触れ合いたいとは思ったけど……だ、だって人型ロボですよ、アンドロイドですよ! 興味あるでしょ常識で考えて。


「その辺は多少補強を入れてやろう。ああいや、そうするとこの繊細さが消えてしまうか……」

「普通に旅をする分には十分ですよ。想定外の無茶をするから壊れるのです」


 カチャカチャやってるベルレを取り囲んで、みんなでなんとなく見てた。

 マスターキーを渡すと、ケースの中には薄い金属板みたいなものが収まっていて、それを頭部に差し込んで何かしてた。


 そういやミカルタの頭部、顔に当たる部分は白いお面のようなものがはまっているだけで「顔」はなかった。


「魔動人形って顔が無いの?」

「主人の好みの顔を作って取り付けるぞ。専門の作家や技師もいる。ネウロアークの目的は神を人形に下ろすことだからな、神に顔はいらないんだろう」


 そかー。なんかそれは判るわ。


「普通に使うなら顔がないと変?」

「面のままでも別におかしくはない。その場合はベールやレースを垂らして隠すのが一般的だな」


 既製品の魔動人形はデフォルトでは顔がないんだそうだ。

 買い手が別途誂えるオプションパーツらしい。

 もっとも、汎用モデルは外部情報の入手に眼球を採用してるから、簡略な顔があるとのこと。

 顔がないのは魔力感知しているのでむしろクッソ高価なモデルだそうだ。

 専門デザイナーがワンオフで作ったモデルなんてもはや美術品。金持ちの道楽としてお部屋に飾って、客を呼んでちょっと動かして鑑賞会するんだって。


 そんな高額精密機器をボコボコにしてしまった。

 うおおおお、ヒューの持ち込み品でよかった。

 まっとうな人様の所有物だったら弁償額で人生が蒸発するところだった。


「よし、応急処置は終わった。個体名『ミカルタ』、活動は再開されているか」

「はい。起立、歩行、可能」


 ミカルタはよたよたと起き上がった。すかさずイルミカが支える。


「ミカルタ、お前の所有者登録は解除した。現在は修理のため技師権限で仮登録されている」

「承認」

「イルミカ、お前の登録も解除予定だ。ミカルタの修理後、共に新たな所有者の登録をする」

「承知いたしました」


 フレームが木製だからか想像よりは軽いんだけど、自力で歩いてくれればその方が助かる。

 そう、廃村へと上がるあの長い階段を。


 私達は荷物をまとめて神殿を退去した。

 廃村へ戻るのに階段を見てうんざりしていると、シェルリが垂直に上がればいいだろうみたいなことを言う。いやどうやって。


「こうして……崖に手をかけて、体を引き上げればいいんだろう?」


 シェルリは魔力の腕を崖上に伸ばして掴み、ひょーいと宙を飛んで上がってしまった。

 やべえ、余計なことを教えてしまったのかもしれん。

 グラディがなんで? どうやって?? と騒いでいる。

 いやこんな初歩的な発想、今まで無かったの?


 ……後で聞いたけど万事フィジカル(筋肉)ダイレクトアタック(解決)してたので、わざわざ魔力の腕なんてややこしいことはしなかったらしい。

 そう……教官はこの程度の崖ならシャカシャカ這い上がるし飛び降りても平気なのだ……。


 私はこの高さだと魔力が続かないや。水中で息が続かない、そして息継ぎが上手くできない感じだ。一度取り込んだ魔力が切れる前に再度取り込むその繋ぎがまだ上手くできない。

 ので、地道に階段を上がった。

 グラディはとっくに駆け上がっていった。上でシェルリを問い詰めているんだろう。

 ミカルタはなるべく安静にしたいので結局シェルリに引き上げてもらった。


「そういや、ジーナとフリアンはどうするの?」

「傭兵と生き残りの子供か。アレア、生き残りとしてセルバに戻りたいか?」


 えっ。あ、そういえば私も子供の家の生き残りということになるのか。

 セルバに帰ったら事情聴取とかされるのかな。

 そんでセルバ子供の家はどのみち一時閉鎖だよねえ。フリアンとどっか別の町に移されるのかなあ。


 うーん。一応ちゃんとお別れはしてきたから、心情的にはセルバを出た気分なんだよな……。

 それに生き残りってなんか面倒くさそう。

 あと孤児院ライフはもういいかな……それなりに楽しんだと思うけど、やっぱりなんだか、ちょっとしばらくいいや、ってネガティブな気分。

 お勉強はよかったけど内容に偏りもあった気がするし。違うスタイルの学校があれば見てみたい。

 そういうようなことを階段を上りながらぽつぽつと話した。


「そうか。なら他の子供達と一緒に行方不明にしておこう」


 どうやって。まあいいか。

 なんか上手く誤魔化してくれるんだろう。お言葉に甘えて丸投げ。

 地上に出て、廃村跡を馬車に向かってとぼとぼ歩いていると、ベルレが立ち止まった。


「アレア、あの死体はどうするんだ?」


 ベルレが指さした所にはグリーシンとトマスの死体があった。

 いけねえ忘れてた。

 一応蘇生する約束だっけ。

 でも変に生き残って逆恨みで追われても嫌だなあ。うーん。


「今、蘇生したらどうなります?」

「セルバから人が来るから、彼らに発見されるだろうな。その前に仲間が救出に来るかもしれんが……来るかな……?」

「生き残りの傭兵にお任せしたらよろしいのでは?」


 グラディがやってきた。

 シェルリはイルミカルタを連れて馬車の準備をしているそう。

 そういやジーナ達って強制睡眠させたまま放置じゃん。どうなったの。


 話し合った結果、結局グリーシン達は蘇生して神殿の小部屋に放り込んでおくことになった。一応約束だったし。

 それに捕まった後は良くて縛り首、悪くて赤鰐に売られて赤鰐内で血祭り(パーティー)だそうなので、生きてシャバに戻らないなら、まあいいか……。


 色々後始末をするということで、ベルレとグラディがグリーシン達を引きずりながら崖下へ消えた。スッと。何も言うまい。

 全部お任せ丸投げで申し訳ないけど、それが一番早くて間違いがないんだもん。

 まだまだ自分が無力な子供なのだと思い知る。


 そういやジーナとフリアンに挨拶もしなかったけど、何て言えばいいのか判らないし、何か聞かれても答えられないから、しょうがない。


 廃村跡の入り口に止めてあった馬車の一つをいただくことにして、シェルリやイルミカルタ、プレシオと待っていると、突然、猛烈な地響きと共に地面が揺れた。


「はわわ」


 マヌケな声を出して馬車にしがみつく。

 じじじ地震?! 火山でもあるの?!

 はっとしてシェルリを見ると平然と揺れていたので、気が抜けた。

 とりあえず危険ではないみたい。


 それでも身に付いた習慣で床に低くなって揺れをやり過ごしていると、潮が引くように揺れと轟音が収まっていき、そして止んだ。

 恐る恐る馬車から顔を覗かせると、もうもうと上がる砂埃に追われるようにベルレとグラディが走ってくるところだった。


「もっとぱぱっと消してしまえばよろしかったのに!」

「地中の根が深かったから仕方ない」


 あの地響きと地震は石柱のあった部屋を基礎ごとブッ潰したからだった。

 地形変わってるじゃん!

 シェルリと話をした岩山の頂上が、崖下まで落ちていた。大穴が空いている。

 すごいな?! えっ、ものすごいな?!

 私がパカーと口を開けて呆然としながらベルレを見ると、ベルレは憮然として「俺は魔力の細かい調整が苦手なんだ」と弁明した。

 お、おう……。



 そして私達は何の解決もせず、立つ鳥跡を濁しまくって地下神殿と廃村を後にしたのだった。

 とりあえずイルミカルタの修理のためにもちゃんとした工房がある都市に向かうそうだ。


 こうして私の町暮らし体験生活はなし崩し的に終わった。

 ……なんかすごい悔しい。

 もっとこう、同年代のお友達とキャッキャウフフしながら畑仕事したり、地元に伝わる遊びをしたり、お祭り……があるのか知らんが、そういうイベントに行ったり、なんかこう、なんかあるでしょうよ!

 なんでこんな血塗られたエンドを迎えねばならんのか。


 私の波乱万丈はどうでもいいとして、なんで子供達はこんな死に方をせねばならんのだ。

 誰が悪いんだ。

 ネウロなんとかいう邪教集団か。あいつらか。

 それとも雑な黒幕ムーブのヒューベルテュスか。

 私はとにかく犯人が欲しい。

 この悲しみや空しさ、憤り、恨みつらみをぶつける相手が欲しい。


 とりあえずネウロウカリスぅ、てめえの名前は覚えたぞ。この先出会う度に構成人員削ってやる。

 あとヒューむかつく。シェルリが許しても私は許さぬ。ありとあらゆる悪徳を同胞に向けてきた地球人舐めんなよ。お前が想像もつかないようなおぞましい嫌がらせをしてやる。


「ああああああクッソ、ちくしょうー!」


 思わず口から飛び出したやり場のない気持を空に向けて放ち、私は目元をぬぐった。


 力が欲しいなあ!


 常に主導権を握れる力が欲しい。

 自分に選択権が欲しい。他人に決められたくない。

 やはり暴力。

 この世界で生きていくのに必要なのは圧倒的な暴力。

 頑張ろう。


 シェルリが当たりのパイエをくれたので食べた。

 ちょっとしょっぱかったけど美味しかった。



これにて二章本編完結です。

ここまでお付き合いくださりありがとうございました。

今後はいくつか挿話としてこぼれたエピソードを足していきます。

活動報告にいっぱい言い訳しましたのでぜひ。


よろしければ評価等いただけますと励みになります(`・ω・´)

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― 新着の感想 ―
切実な「力が欲しいなあ!」からの「やはり暴力」にもってかれましたw がんばれ!君と師匠ズの突き抜けっぷりに期待してるよ!!
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