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異世界スロー旅~雑草少女の旅するスローライフ~  作者: 鷹山リョースケ
第二章

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049 冒険者ギルド見学

セルバの冒険者ギルドは……ボロかった。

 一応基礎は石造りなので丸太小屋ってわけじゃないけど、壁はところどころ変色して、崩れた箇所には雑に板を打ち付けてある。

 ダリオのおっさんと二人で微妙な心地を共有しながら中に入った。


 ボロかったけど中のムードは普通だった。結構広いし。

 ガラの悪いおっさんが酒瓶片手にくだ巻いてるわけでもないし。そもそも酒場併設でもないし。

 床はところどころ穴が開いてて塞ぐ気配もないのはどうかと思うけど。


 人影はまばらだった。

 壁の貼り紙を見ている人や、テーブルを囲み何か話し込んでいる人達、カウンターで話している人など。

 ダリオと私は壁の貼り紙へと向かった。

 色々な依頼が決まったフォーマットの用紙に書かれてズラッと貼ってある。

 概要のみで詳細は書いてないから、職員から聞くのだろう。個人情報とかあるだろうしね。

 ダリオは興味深そうに貼り紙を見ていた。


「何かある?」

「こういうんはな、土地によって内容が偏ったりするんだわ。セルバは通商路だからやっぱ護衛依頼が多い、かねえ?」


 へえー。

 私が改めて貼り紙を見ていると、確かに「求む、護衛」みたいなのがよく目についた。

 他はそれこそ庭の草むしりだのドブさらいだの失せもの探しだの。収穫の手伝いとか放牧の手伝いとかもある。


「魔物の討伐とかはないんだね」

「ないわけじゃねぇとは思うが、こういう形での募集はあんまねぇだろうな。町がその都度募るもんだし。それに冒険者よりは領兵の出番だぜ」


 私の村の時も第三村の時も領兵は来なかったけどなあ。未だ見たことすらないわ。


 町での魔物討伐は概ね、辺境域から流れてきた個体や群れを街道で見た、というケースらしい。

 なんせほっとくと簡単に森ができるプランツキングダムなので、町を出るとすぐ森だの藪だのがある。隠れるところがあれば潜むものがいるわけで、魔物に限らず危険が潜んでいる、ということみたい。


 じゃあ冒険者の需要って、どちらかというと辺境域というか国境周辺というか、ぶっちゃけ空白地帯がメインなのでは?!


「町の冒険者って普段なにやってるの?」

「町ん中では正直、何でも屋だろうな。冒険してねぇくせに冒険者とか笑わせるって、辺境の冒険者とよくケンカになるんだぜ」


 ダリオはうはは、と笑った。うわあ……ありそうな話だ。

 そっか、町中では御用聞きみたいなことやってるのか。あと護衛かあ。

 ううむ、子供の身では前者しかやれることなさそう。


「冒険者ってどうやってなるの?」

「特に条件はなかったと思うが……そうだなあ、やっぱギルドに登録してギルドの発注を受けて活動してりゃ『冒険者』と呼ばれっかな。じゃなきゃ、猟師とか傭兵とか何でも屋とか、普段やってることに合わせて呼ばれるもんだ」


 なるほど。ちなみに登録に年齢制限とかはないらしい。家族パーティが生まれた子供を登録するようなケースがあるからだとか。一種の戸籍なんだろうな。

 でもソロだとやっぱり子供は難しいみたい。

 せっかくなので登録関係の職員を捕まえて話を聞いたよ。


「保護者である家族か、身元保証人か、有力な推薦者がいないと成人前の子供は基本的にはお断りですねえ」


 眠そうなおっさんがめんどくさそうに答える。


「ギルドは登録者の所在確認をしなくちゃいけなくてねえ。日頃顔を出してる奴はいい、でも来なくなった奴はいちいちねぐらまで行かなきゃならない。勝手に引っ越してたら追跡しなきゃならないし、ちゃんと登録抹消の手続きをするような奴は稀だ。ガキの遊びで登録されたかねえわ、ってなもんさ」


 そういう事情を聞かされるとそりゃまあなあ、と思う。

 態度はよろしくないけど。

 成人前の子供は活動実績があるパーティの一員になるか、ケツを持ってくれる有力者が必要と。

 うーん。これはベルレ達と次に会う時まで保留だなあ。

 保護者と相談します、と言ってカウンターを離れた。


 帰る前にもう少し依頼内容を見てみようと思って壁を見ていたら、背後でパーティらしき一団がどやどやと入ってきた。


「あー、あいかわらずシケてんなここは」

「まだ倒壊してなかったのね。すごーい」


 感じの悪い御一行が空いたテーブルセットを占領する。

 隣のテーブルで話をしてたグループがそそくさと席を立って逃げた。かしこい。

 そして私のダメ絶対音感が言っている。


 コイツら、フリアン家に押しかけてきたパーティだわ。


 私はさりげなくダリオを盾にしてマントの陰に隠れた。

 その私の動きを察したダリオが、これまたさりげなく腕を腰に当ててマントを広げる。


「ちょっくら気配弱くすっから、おっちゃんに離れないようについてくるんだぞ」


 出たー。なんか達人っぽいやつー。

 ダリオの方から霧のように魔力が広がってくるのが判った。

 気配を弱くするっていうけど、私にはむしろ周りにダリオが増えたような気がしてキモい。なんだこれ。

 私達は自然な足取りで速やかに冒険者ギルドを出た。


「嬢ちゃん、あの連中となんかモメたんか?」

「もめたというか……」


 私は先日の経緯を簡単に話した。


「はあ、そりゃまあ運がなかったな……。地元もんでもなさそうだし、そのうちどっか行くだろ」

「そういうの判るものなの?」

「なんとなくだな。格好とか、着てるもんや装備の傾向とか。経験と勘だ」


 ニヤッと得意そうにした顔はイラッとしたが、へえ、そういうの判っちゃうんだ。

 正に経験だろうな。接客分野のプロフェッショナルは客を見ただけで職種や社会階級が判る、っていうやつみたいな。


 ダリオのおっさんは「嬢ちゃんにもし人の心があるなら本気で命乞いを頼む」とクソ失礼なことを言い残して去っていった。

 付き合ってもらったお礼なんだからちゃんと連絡するよ。一回分だけな。



 ◇ ◇ ◇



 土砂崩れについては「わあ崩れてる! ちょうどいいねえ!」と偶然で押し通した。

 私が内部を崩し過ぎたのか、ダリオのおっさんがやり過ぎたのか、土が思ったより柔らかくなってて困ったけど、みんなで少しづつ踏み固めていった。

 その上にフリアン家から拝借したレンガや石を敷いてしまえば立派な階段だ。


 例のパーティのことをロドルフはイシドロ氏に一応報告した。家の中も荒らされちゃったし。

 その時の話の流れで、なんと元フリアン家を難民孤児達の仮住まいにすることになったそう。

 なんとなく子守を押し付けられてたロドルフが正式に担当者にされた格好だ。

 孤児達をここに集めて寝起きさせ、畑の軽作業を手伝わせるのだそう。

 ついでに自分達の食い扶持も自分達で育てろ、と 。


 壁がある分テントよりはマシかもしれないけど、残ってる部屋は二つしかないし、全員入れないのでは。セルバの子供の家に連れて行った方がよくない?

 そう思ってたら、辺境に戻る時は連れて戻るからセルバの子供の家には入れないことに決まったんだって。子供の家に入れると親権みたいなのが領主ひいてはセルバの町長に移るから。

 つまり出身村は孤児の面倒はみたくないけど所有権は手放したくないってことか。

 正直だなあ……世知辛い。


 その辺の内部事情は当座の巡回警備担当者として任命されてきたマルコ達が教えてくれた。

 私が半殺しにしたマルコとルイの惜しいブラザーズだ。

 私がいるのを見て熊と出会ったような顔したよね彼ら。

 元フリアン家を難民側で正式に活用することになったから私達の溜まり場にするな、って言いたかったらしいんだけど、事情だけ話して「やれることはやった」って態で諦めてた。


 ロドルフは親に事情を話したら、これからも面倒みてやれと快く送り出されたそうだ。いいご家庭だな。何気に育ちいいよな。それでなんで初手があのムーブなんだよ。町デビューか。キャラ変したかったのか。


 そんなこと言っても家の中の片付けとかは丸投げで、ブラザーズが文句言いながらもやってくれた。子供達もお手伝いしようとしたが邪魔なので畑に追い出されてた。

 これから自分達の食べる物を作らなきゃならない。種さえ撒いておけば生える大地だから難しいことはないけど、それにしたって多少のコツってものがあるわけで。

 幸い、農家の子であるテルセロ達が外であれこれ教えてた。


 それにしたって、寝起きするにしても布団もなんもないのにな。

 元あったやつは燃やされたし。あれはまあ仕方ない。汚れもひどかったし、病気で亡くなったという情報が真ならその寝具はちょっと。


 私が馬車で作ってもらった毛皮ベッドでもあればと思ったけど、ウサギの毛皮程度じゃ全然足りない。第一、毛皮の鞣し方なんて知らないし、そもそも鞣しって結構時間がかかるはずだから、今からではどうせ間に合わない。

 私は金策でも考えようと思って町に戻った。



 ◇ ◇ ◇



 買取屋でお手伝いをしながら、そんなこんなを雑談としてドミティラさんに話した。


「そんなら、その空き家が難民達の『子供の家』みたいなもんでしょう? だったら寄付を募っちゃどうです」

「寄付ぅ? そんな余裕のあるとこ、ある?」

「それこそセレステに聞いてみちゃ如何です。セレステだってそういう関わりならいいんじゃないすか」


 いいのかな。なんかお世話になりっぱなしで心苦しいんだけど。

 ルフィノ爺ちゃんはベルレかグラディの知り合いで、私はただのオマケなんだし。


「セレステにとって孤児のがき共の布団ぐらいなんてことないっすよ 。お嬢様の布団納入しろって言ったら材料育てる土地から吟味し始めるでしょうけど」


 どこのお姫様だ。私のベスト寝具は未だにあの毛皮敷き木箱ベッドだよ。

 でもそっか、そういう名目ならいいかなあ?



次回更新は少し遅れそうです。

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