1章16
言葉が話せるようになり、本格的に魔族討伐の作戦を考えることにした。
まずは最短でキーフ族に合流することで、村人達の準備期間を確保することにした。死に戻り→適当に魔物を探して倒す→村を訪れる ですんなり村に入れてもらえた。
知ってしまえばめちゃくちゃイージーモードなのだ。
槍で喉を突かれる必要も、土下座で詫びる必要も、腹も空いていないのに芋もちを食べる必要もなかった。
つくづくあの適当女神の説明のなさに腹が立ったが、今さら怒っても仕方がないので忘れることにした。次に会ったら不意打ちで胸でも揉んでやろう。次があるのか不明だが
さて、魔族討伐だが現状の戦力で正面から戦って勝つのはおそらく不可能だということはわかっている。
・キーフ族のレベルアップは期間が足りない
・おじさまBの援軍は間に合わない
魔族を待ち伏せして不意打ちする提案もしてみたが、ダメらしい。魔族の魔力を人間は感知できないが、魔族側からは感知されるため、待ち伏せは通用しない。
つまり、キーフ族は直撃を受けないようにテントで待機しておき、攻撃を受けたら広場で戦うという流れになるようだ。広場で戦うことになるのは、魔族がいつも初撃の後に広場へ移動するからだ。おそらく、死角が少ない開けた場所だからだろう。
魔族的には巣から害虫をあぶりだして駆除する心境なのかもしれない。
総合的に考えて絶望的な状況だ。レベルの差は歴然。小細工も逃げることもできない。
だが、俺は1つだけ魔族を倒せる可能性に気づいた。そのためには準備が必要だ。
まずはエールに作戦を話し、協力をお願いする。
エールも戦力差を想像できているようで、俺の提案を快く了承してくれた。
キーフ族には相変わらず狩りに出かけてもらう。
何をやるにもレベルが高くて困ることはないだろう。
エールも単独行動でレベル上げに行った
俺とおじさまAは作戦の下準備だ。
リューヤンは装備を持ち替えた
E.スコップ
鉄の槍
トイレ整備用のスコップで広場にどんどん穴を掘る。おじさまAも協力してくれる。
かなりの穴を掘る必要があるのと、掘るだけで終わりではないので、せっせと準備を進める。村人に手伝ってもらってもよかったが、彼等にもやるべきことがあるので仕方ない。
村人達は魔物狩りを、俺とおじさまAは土木工事に明け暮れてあっという間に1週間が経ってしまった。
毎日の重労働で俺は身体中が筋肉痛だが、元々戦力としては0点なので、あまり関係ないだろう。
作戦と呼べる程きちんとした作戦ではないが、これでダメなら魔族討伐は無理なのではないかとも思える。
夕方に差し掛かるころ。村人達と最終的な作戦の確認をして、魔族の襲来を待つ。
疲労でぐったりしつつも張り詰めた空気の中、静かに待機していると爆発音と共にテントが燃え上がる音が聞こえた。運命を決める戦いが始まった。