《十話》強すぎる勇者御一行
海の底のアジト、四人はそこに侵入しようとしていた。イサムが鉄の扉を開ける。ここはダンジョンであるため、彼らは身構える。軽い音がして扉が開いた。
そこは最早水中では無かった。ドアから室内に水が流れ込むことは無く、面白みのない部屋が彼らを迎えた。
そこに、一人だけひ弱そうな男がいた。ネロ義賊団の一味だ。
「あッ!何だお前達!どうやってここを見つけた!」
その男は見張り役らしく、中で休憩していたらしい。武器ひとつ持たず、甲高い声を上げる。
「お前らを倒しに来たのさ……!」
モリーが凄む。あまりかっこよくない。
「くそっ!仲間に知らせてやる!」
彼は懐のボタンを押そうとする。が、イサムが素早く近づき、その手を掴む。
「大きな声を出すな。そして、お前らのボスと、ここに連れてこられた少女がどこにいるのかを教えろ。」
イサムが静かに尋ねる。
「……!へっ。誰が教えるかよッ!」
男は一瞬の隙をつき、ボタンを押す。建物中にアラーム音が鳴り響く。
「あっお前!」
イサムは思わず、男の頭を大剣でぶっ叩く。パリーンと音がし、彼は吹っ飛んだ。
「別にそこまでやらなくても……。あいつ、強くなさそうだったぞ。」
アツシが咎める。
「そんな事言ってる場合じゃないよ!ほら、足音が聞こえる……。皆、構えて!」
ユーリが吠える。
バン!と、奥の扉が開く。そこから、武装した義賊団たちがなだれ込んできた。
……戦闘だッッ!
四人は途端、気を引き締める。
「おらッ!うォらァッッ!」
イサムは、迫る敵をバサバサと薙いでいく。パリーン、パリーンと心地の良い音がし、敵は倒れていく。
モリーは守るだけに飽きたらしく、盾をぶん回し、盗賊たちを倒す。ユーリは一人ずつ丁寧に処理していき、アツシは相変わらず素手で戦っている。
明らかな優勢……だが、数が多すぎる。いくら倒しても倒してもキリがない。
「埒が明かない!みんな!私がおっきな魔法を使う!だから、それまで私を守って!」
ユーリが叫ぶ。
「オッケーだッ!」
イサムが彼女のもとへ駆け寄り、周りの敵から守る。
残りの二人も少しづつ近寄り、磐石の体制を取る。
……実を言うと、三人は全く辛くなく、圧倒的な力で敵をねじ伏せる事に快感を覚えさえしていた。なので、あまり大きな力を使わず、ユーリを守る事だけに集中する作業に少し飽きが来た。
「ユーリッ!まだかッッ!」
モリーが声を荒らげた。特に彼は盾で守っているだけで良いので、フラストレーションが溜まっているのだ。
「……準備完了!皆伏せて!」
ユーリが合図する。と共に、三人は大人しくしゃがみ込む。
「上位魔法!《大爆発》!」
途端、その部屋が光に包まれる。耳をつんざく程の爆音を立て、空気が震えた。そのすぐ後、一斉にガラスの割れるような音がし、光が消え、そこに敵は存在しなかった。
「ひえー……凄い魔法だな。」
イサムが言う。ユーリはふふん、と満足気だ。
「しかし、その上位魔法!だのエクスプロージョン!だの恥ずかしい台詞は言わなくちゃならんのか?」
アツシが苦々しげに言う。
「本に書いてあったじゃん……。アツシだって回復魔法使う時は言うんだよ。他の二人だってスキルを使う時言わなくちゃならないんだよ!」
ユーリが頬を赤らめて言う。
「そうだっけ……。それにスキルなんてあったか?」
アツシが尋ねる。
「三人は力任せにやりすぎてるの……ちゃんと本を読んでよ……。」
ユーリが力無く言う。
「まあそんな事は良いんだ。早く行かないとまたこの小さな部屋で戦わなくちゃならないぜ。」
モリーが急かす。その通りだと皆は同意し、先へ進む。
扉を二つ程開け、かなり大きな部屋に来た。左右に扉があり、前の方には更に地下へと進む階段。
「地下に行った方が良いんだろうな。」
イサムが言う。そして、一同が丁度、部屋の真ん中に来たくらいに、
「今だァッ!」
四方から声が聞こえた。……待ち伏せされていたらしい。
階段から、扉から義賊たちがやってくる。
「へっ!何人来ようと同じさ!」
イサムが鼓舞する。
「みんな!私がもう一回魔法を使うから……」
「うるさい!オレ達も戦えるんだよ!」
モリーが叫び返す。
「スキルも使ってみたいし!ユーリはちょっと休憩してていいよ!」
「そうだ!俺はあんな変な文句を垂れるなんてまっぴらだからな!」
イサムとアツシもそれに同調する。
「もう!分かったよ!私は適当にあしらっておくから、勝手にやっててよ!」
ユーリは少し拗ねたようだ。
さァて……やるか!
イサムは大きく息を吐き、敵陣に割り入る。
……スキルの使い方、少し読んだな。確かあのスキルは、こう……体を捻らせて、ぐるっと一回転すれば、勢いのままに……こうかッ!
「《旋風独楽》!」
イサムはハンマー投げ選手のように、凄まじい速さでぐるぐると回転し、大量の敵を吹っ飛ばす。
剣が敵に当たる度、何とも良い感覚が手を伝う。彼が回転を終えると、その周りを、円を描くように盗賊たちが囲んでいた。
……まだ倒せる相手が沢山いるな……!
彼は既に戦いの喜びに取り憑かれていた。
……よし、オレだって戦えるのさ!
モリーは揚々としていた。自分の称号の役割は攻撃に徹するアタッカーではなく、防御を主に行うタンク役である……そう知った時は少し落ち込んだ。だが!一人となると話は別だ。存分に弱っちい敵をぶっ倒せる……!これこそ異世界転生の醍醐味だろう!
モリーはそんな風に考えていた。
「スキルか。何か書いてあったな。」
呟いて、その技を叫ぶ。
「《守備強化》!」
……特に何も起こらない。
いやまあ分かってたよ。スキル名見た感じ攻撃系のスキルじゃないもんな。どうせオレの防御力がちょっと上がったんだろ。
…………
「だーーーッッ!クソッタレがァ!」
結局彼は盾を振り回す事にした。
「エクスプロージョン!……か。」
アツシは小さく呟く。
「俺の使えるスキルや魔法は完全に補助寄りだもんな……。エクスプロージョン……かっこいいなあアレ……。」
彼は盗賊たちに殴られながら、棒立ちでボソボソと呟く。
「クソッ!何なんだよこのおっさん!何でこんなHP高いんだよ!」
盗賊たちが苛立ちながら、微動だにしない中年を叩く。
「あーうるせぇよお前ら……。」
拳を片手間に与えながらアツシは呆然としている。
「簡単なやつやってみるか……。《火炎弾》!」
ひょろひょろとした火球が敵を襲う。
ダメだなこりゃ。アツシは自分の魔法に呆れる。
そうしていると、少し痛みを感じるようになってきた。彼は冗長に手帳を取り出し、自分のHPを確認すると、値が半分を切っていた。
流石にまずいな。
「回復魔法か。ええっと……《パワーヒール》!」
すると、彼の体をキラキラとした光が覆った。こころなしか、身体が軽くなり、力がみなぎってくる。
……これはこれでアリか?
少し殴ってみる。明らかに手応えが違う。
これは……アリだな!
先程まで下がっていたテンションが一気に戻り、彼は周りの敵をぶっ飛ばし始めた。
「《火炎弾》!《雷弾》!《凍弾》!」
ユーリは丁寧に敵を倒していく。
絶対私の魔法で一掃した方が効率いいのに……。
少しの不満を胸に抱きつつ、ユーリは三人の様子を見る。
変な笑顔でぐるぐる回っているやつ。盾を武器に使っているやつ。明らかに補助魔法をかける相手を間違えているやつ。
しばらくしたら敵全員爆発させよう……。
そう思うユーリだった。
読んで下さり、ありがとうございます!
いわゆる俺TUEEEEというのは良いものですね!
これからもよろしくお願いします!




