表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIOライト  作者: 栗木下
10章:創門街・タイバン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

596/621

596:111-2

本日は二話更新です。

こちらは一話目です。

「せいっ!?」

「ゴレー!?」

 戦闘開始から早十分ほど。

 俺の炎を纏った拳による攻撃によってプレンゴーレムは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 が、派手な音と見た目に対してダメージはさほどない。

 精々が最大HPの2%程と言う所だろうか。

 だが、これについてはしょうがないと言うか当たり前だな。

 炎を纏っていると言っても素手は素手、補正なしでの攻撃なのだから、目に見えるほどのダメージがあるだけでも十分である。


「ふんっ!」

「ゴレゴー!?」

 と言うわけでひたすらに炎を纏った拳で俺はプレンゴーレムを攻撃。

 プレンゴーレムの攻撃は直撃だけは避けて、微量なダメージはいつものように自然治癒に任せる。


「『リアフ・ネロ』」

「「ゴレー!?」」

 更には『リアフ・ネロ』も発動。

 周囲を赤黒い霧で包み込む。

 他のプレイヤーを巻き込んでいる可能性もあるが、ここはケイカ北坑道でも奥の方なので大丈夫だろう。

 で、状態異常:ポイズンと状態異常:リーガジの効果はゴーレム種の能力によるものなのか効いていないようだが……うん、俺の目的は達成出来そうだ。


「せいっ!せいっ!せいやっ!!」

「ゴレムウゥゥ!?」

 なので俺はプレンゴーレムを倒すべく攻撃。

 おおよそ素手の人間が岩の塊を叩いているとは思えない音を奏でつつ、二体のプレンゴーレムのHPバーを均等に、少しずつ削っていく。

 そうして少しずつダメージを与えていると……


「ゴレエエェェム……」

「ゴレムウゥゥゥ……」

「思惑通りだな」

 プレンゴーレムの全身に少しずつ変化が生じる。

 岩の塊であるはずの身体がほのかに赤黒くなっていき、俺のものに似た魔力を纏い始める。


「ゴレムス!」

「ゴレミャア!」

「いい感じだ!」

 それだけでなく、身体が赤黒く染まっていくほどにプレンゴーレムの動きは凶暴さを増していき、攻撃力も僅かにではあるが上昇していく。


「ゴレム!!」

「ゴオレムス!」

「そうだ!その調子でどんどん魔力を吸っていけ!!」

 何故こんな事になっているのか。

 それはケイカ北坑道のプレンゴーレムの身体にはミスリルと言う魔力を含んだ鉱石が存在しているからだ。

 そして、そのミスリルに本来含まれている魔力は、現在、俺の度重なる魔力を含んだ攻撃と、『リアフ・ネロ』によって周囲に撒かれた俺の魔力を吸収する事で、変質していっている。

 その結果が目の前のプレンゴーレムの狂暴化である。


「どうして、俺の魔力で狂暴化なのかは分からないが……その調子だ!」

「「ゴオオレムウウウゥゥ!!」」

 そうして殴り合いを続ける事三時間ほど。


「そしてこれで終わりだ!」

「「!?」」

 何時の間にやら全身くまなく赤黒い宝石のような鉱石になったプレンゴーレムのHPバーは底を突き、倒れた。

 そして剥ぎ取りを行った結果は……



△△△△△

『非存在性・』普通の魔銀鉱石

レア度:PM

種別:素材

耐久度:100/100

特性:プレン(特別な効果を持たない)

   『ヌル(存在しないはずの物質)』


魔法銀(ミスリル)を多量に含んだ鉱石。

精錬することによって、純度を高める事が出来る。

魔法銀は軽く、強靭で、魔法の力を高める性質を持つとされる。

所謂、魔法金属の一つである。

特殊な戦闘経過によって含まれる魔力は大きく変質しており、常軌を逸した『……終焉の炎に近しい、通常では有り得ない』魔力を宿すようになっている。

どのように使うにしても、安易な使用をしてはならない。

▽▽▽▽▽



「よし、上手くいったな」

 無事成功である。

 繋がりもはっきりと見えているし、これで何も問題はない。


「さて、後はケイカ支部まで帰るだけだな」

 俺は自分のHPバーに問題が無い事を確認すると、両手に武器を装備。

 万全の態勢を整える。

 そして、ケイカ北坑道から脱出しようと思ったのだが……


「うう、何でこんな霧の調査を……」

「しょうがないだろ、異常事態が発生した以上は何かのイベントのフラグなのかもしれないわけだし」

「そうそう、最前線組には今更追いつけなくても、こういう調査は大切なんだって」

「何処に賢者の石の手掛かりがあるか分かったものじゃないしな」

「と言うか、この妙に赤っぽい上に状態異常を伴う霧、何処かで見覚えが……」

「ん?誰かが居る……」

 流石に三時間も『リアフ・ネロ』を継続させていたせいで、他のプレイヤーがケイカ北坑道で異常事態が発生していると考えてしまったらしい。

 誰かがこちらに近寄ってきている。

 で、霧の向こうからその誰かが現れたわけだが……


「プレイヤーか」

「「「うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」

「っつ!?」

 俺の姿を目視した瞬間に、六人中五人が揃って腰を抜かし、残りの一人も反射的に自家製ミスリルであろう片手持ちの剣と盾を構えていた。

 どうやら驚かせてしまったらしい。

 ホムンクルスたちは……特に反応なしだな。


「あー……悪いが、この霧はイベントでもなんでもない。俺が起動文で発生させたものだ」

「ゾ、ゾッタ先生!?」

「え、あ、うわ!?」

「ほ、本物だ……」

「マジか……」

「何でこんな所に……」

「あばばばばば」

 とりあえず彼らの会話の一部は聞こえていたので、霧の正体については話しておく。

 無駄足を踏ませ、彼らの貴重な時間を浪費させたことに間違いはないわけだしな。


「え、えーと、こんなところで何を……」

「時間つぶしも兼ねたちょっとした実験と言う所だな。成果は……これだな」

 そして、何の成果も無く帰すのは少々申し訳なくもあった。

 と言うわけで、俺は少々迷いはしたが、自家製ミスリル製装備を持った青年に今剥ぎ取ったばかりの『非存在性・』普通の魔銀鉱石を見せる。

 重要な部分についてはGMが隠しているので見えないが、それでも彼が新たな境地を得る事には繋がるはずだ。


「これは一体……」

「プレンゴーレム体内のミスリルを自分の魔力で変質させた。これ以上は言えないな」

「変質させたって……」

 青年は大きく口を開けて呆然とした様子だが……うん、この青年はいずれこの境地に辿り着くな。

 そう言う繋がりが見えた。


「じゃ、俺はこれでな」

「あ、はい」

 そして俺はその場を去り、その後は何事もなくケイカ支部へ移動。

 で、夕方ごろに周囲のプレイヤーに驚かれつつもヒタイへと転移した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ