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AIOライト  作者: 栗木下
8章:双肺都市-前編

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405:74-1

【AIOライト 74日目 07:15 (5/6・雨) ドウの地・北西の森】


 翌朝。

 朝食を食べ、打ち合わせを終えた俺たちはヘスペリデスの外に出ると、北西の森を探索するための準備を始める。


「さて、全員灯りは大丈夫よね」

 北西の森の中は暗い。

 今日の天気が雨なのもあるが、天高く伸びている上に密生した樹木によって、日光の殆どが遮られているからだ。

 そのため、地面に生えているのも草の類ではなく、苔や茸と言った日の光をあまり必要としないものが中心となっている。

 敢えてこの雰囲気に近い物を探すのなら……現実世界ならば富士の樹海、『AIOライト』の中なら自動生成ダンジョンの森の洞窟系統が近いだろうか。


「自分たちは問題ないです。ゾッタさんは……」

「ネクタール。ニフテリザを」

「ーーーーー」

 と言うわけで探索にあたって灯りは必須である。

 なので俺はニフテリザを取り出してもらい、自分の顔の横に浮かせる。


「……。また、地味にトンデモな代物を作っているわよね。ゾッタ兄」

「自動で浮いて、周囲を照らしてくれる灯りかぁ……まるでホムンクルスみたい」

「そうか?まあ、ニフテリザが便利なのは確かだな」

 ニフテリザを見たグランギニョルたちの反応は……特に気にするものではないか。

 微妙な視線を向けられるのはいつもの事だしな。


「さて、それでは私のヒンジとクリングスを使って先導しますので、よろしくお願いしますね」

「シュヴァリエ、バルの背中にこの子を載せて」

「背中は厳しいから足で掴ませるか結びつけて。でないと飛べないよ」

「む、ならしょうがないわね」

 ミストアイランドさんが眼鏡を外し、もう一体のホムンクルスであるカラス型のホムンクルスに付けさせる。

 それに合わせるように、グランギニョルも小人型のホムンクルスを召喚、シュヴァリエのバルテンペッタの足にその身体を縛り付ける。

 どうやらどちらのホムンクルスも、所有者であるミストアイランドさんとグランギニョルとの間で視覚を共有する事が出来るようだ。

 尤も、ミストアイランドさんの視覚共有はホムンクルスの能力、グランギニョルの視覚共有は特殊知覚によるものであるようだが。


「ん」

「あ、レティクルさんも出すんですか」

「三体で編隊、その方が安全だ」

 と、二人のホムンクルスが樹上に向けて飛び立つのに合わせて、レティクルさんも鳥型のホムンクルスを放つ。

 視覚共有は出来ないようだが、護衛と警戒を専門とするのが一体くらい居た方が安全なのは確かだろうな。


「じゃ、何も見つからない限りは、今日一日は真っ直ぐに北上するわよ」

「「「了解」」」

 そうして準備が整ったところで探索が始まった。



----------



【AIOライト 74日目 13:42 (5/6・雨) ドウの地・北西の森】


 森の中を探索し続けること半日。

 今の所は新たな都市は勿論の事、ランドマークになるようなものも発見できてはいなかった。


「普通の茸ですね」

「こっちは普通の薬草だね。レア度は3だけど」

「んー、変化に乏しいわねぇ」

 採取できるアイテムも普通の丸太や薬草、茸といった極々普通のアイテムばかり。

 特別な何かになりそうなアイテムは一切採取出来ていないし、繋がりも見えていない。


「モンスターだ」

「プレングラスの群が近づいてきていますね」

「マスター」

「分かってる。ネクタール」

「ーーーーー」

 出現するモンスターはプレングラス、プレンウッドといった植物系から、プレンボアやプレンフォックスといった動物系、プレンビートルやプレンホーネットなどの昆虫系にプレンエルフ、プレンゴブリン、プレンスネーク、プレンモモンガ等々、非常にバラエティに富んでいる。

 が、だいたいはネクタールで隠れればやり過ごせる上に、戦闘になっても特に問題なく圧倒出来る。

 まあ、何処かで見た事があるようなモンスターばかりなので、当然と言えば当然なのかもしれないが。


「「「グラグラ……」」」

「行ったわね。じゃ、探索再開よ。北は……あっちね」

「でも、崖があるね」

「しょうがない。回り込みましょう」

 むしろ問題なのは地形の方か。

 北に向かうという探索方針は、上空からのナビゲートのおかげで達成できている。

 だが、その方針を達成する為の道中には上空からの観察では分からない崖、沼地、茨といった種々の障害が存在していた。

 その為、俺たちは幾度となく回り道を要求され、結果として探索の距離そのものについてはそこまで伸びていない。


「今の所は順調で違いないのか」

「そうね。現状は順調の部類に入れていいと思うわ」

「ワンダリングモンスターとも遭遇していないし、厄介な罠の類にもあってないもんね」

「良い事ですね」

「そうですね。厄介なものに遭わないに越したことはないです」

「このメンバーでもワンダリングは逃げの一手しかないですもんね」

「……」

 残る厄介事は……ワンダリングモンスターか。

 グランギニョルたちの話と言うか、前回の探索のまとめから、北西の森のワンダリングモンスターの一体はプレンブロッサムLv.50と判明している。

 で、そのプレンブロッサムの能力については、現状では強力な蔦の一撃に各種状態異常を引き起こす花粉をバラ撒いてくることだけは分かっている。


「ま、とにかく今日はひたすら移動よ。まずは誰も行った事が無いくらい奥にまで行かないと新しい都市なんて見つけられないんだから」

「そうだな」

 まあ、出会わないに越したことはない。

 俺たちはそう考えつつ、その後もひたすらに北へ移動、日暮れと共にヘスペリデスの中へと入り、この日の探索を終えた。

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