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【AIOライト 72日目 03:28 (5/6・雨) ???】
「彼女だけ救い上げたのは憐憫ですか?気まぐれですか?それとも自己満足ですか?」
「単純にヘスペリデスの管理人に使うのに都合が良かったからだ。それ以外の理由などあるはずがない」
リアフを始末した俺は『AIOライト』……ではなく、GMが造り上げた領域にやって来ていた。
どうやらGMから俺に対して何かしらの話があるようで、リアフによって外の世界に引き摺り込まれたタイミングに戻ろうとしていた俺に対してこっちに来るように指示を出してきたのである。
「そうですか。一応言っておきますが、彼女をホムンクルスにしても『AIOライト』には入れないでください。想定の範囲外のイレギュラーが発生する可能性がありますから」
「言われなくてもヘスペリデスの外には出さない。と言うより出す意味が無いような個体になるだろうさ」
GMが居るこの場所は、何処までも続く白い床と黒い空と言う空間に、ティーセットが揃えられた木製のテーブルに椅子が三脚だけ置かれている空間だった。
で、三脚の椅子の内、一つにはいつも通りの格好のGMが、もう一つは俺用なのか空席、そして最後の一つにはスパインさんと同じ水色髪に紫色の目を持った、きわどい格好で、中性的な容姿の男性が座っていた。
俺の見た目が正しければ……この人こそが多次元間貿易会社コンプレークスとやらの社長なのだろう。
明らかにGMよりもさらに一回りは上の存在であるように感じる。
「では、寝首をかかれないように気を付けてくださいと言っておきましょうか」
「今更、寝首をかかれた程度で死ぬような身体とは思えないがな」
俺は指を軽く鳴らして人の姿に戻ると、空いている席に腰を下ろす。
そして明らかに紅茶のティーカップなのに、昆布茶としか思えない味のお茶を一口分だけ飲む。
「それで用件は?」
「簡単に言ってしまえば契約を結びに来ました」
「契約?」
首を傾げる俺に対してGMは複数枚の書類を俺に渡してくる。
「流石に自覚もあると思いますが、今の貴方は人間と言う枠から大きく逸脱しています。それこそ正常な『AIOライト』の運営と進行に対して致命的な支障を与えかねない程に」
「……」
「そして貴方が致命的な支障を与える行動は、貴方の意識的な行動だけでなく、無意識の行動によっても引き起こされる。それはつまり貴方自身が気を付ければそれで済むという段階を超えてしまっている事も意味します」
「まあ、そうだな」
「ですので、今後も『AIOライト』内で活動をするのであれば、むやみやたらとゲームの範囲外に出ないようにするための処置を受けてもらいます。これはGMとしての命令です」
「なるほど、だから契約ね」
書類の内容は?
簡単に纏めてしまえば、今後は俺の能力を大幅に制限すると言う事。
勿論、レア度:PMの錬金は出来るし、繋がりも見える。
だが、黒輪と言うかエファス関係については、『AIOライト』の外が関わっている事象が発生しない限りは全面的に封印。
ヘスペリデスの中でのみ活動可能とするか、能力を発揮できない状態にされるようだった。
「となると、そこの人は立会人と言う事でいいのか?」
「ああその……」
「そうです。第三者の立会人を一人付ける事で、より強固な契約を結ぶことが出来ますから。そう言う点に限っては彼以上の存在は居ません」
「俺にもしゃべ……」
「了解。そう言う事だったら立会人は認める。このエネルギーの供与ってのは?」
「ふっ、喋れそうで喋れ……」
「これだけの契約をエネルギー供給なしで結ぶのは無理がありますから。別に良いでしょう。ヘスペリデスが生成して余っている分のエネルギーしか採っていないんですから」
「まあ、問題はないな。基本無料が月額何円になった感はあるが」
「誰のせいですか誰の」
俺は契約の内容で不明な点が無いか確かめ、見つけたらそれをGMに尋ねる。
なお、立会人の男性については何となく喋らせるとこの場の雰囲気が台無しになりそうな気がするので、GMと協力して積極的に声を被せていく。
今もなんか現実で成立しなさそうで成立する奇妙なポーズを取り始めているしな。
「君たち息ピッタリだねぇ」
が、この言葉だけは聞き流すわけにはいかなかった。
「んだと?」
「よっ、と」
と言うわけで俺は即座に男性の方を向き、視線に魔力を乗せて叩き込もうとする。
GMも視線を向けずに手首のスナップだけで握っていた万年筆をダーツのように投げる。
が、どちらの攻撃も男性が少し首を逸らしただけで、当たりそうで当たらない位置を通って地平線の彼方に消えていく。
「本当に息ピッタリだねぇ。いやー、此処まで息が合っている事なんて早々無いんじゃないかな?」
ああうん、これは駄目だな。
関わるだけ面倒なタイプだ。
そもそも、詰みに持っていくための繋がりが見えない。
どの繋がりも詰めそうで詰めないものになっている。
と言うかもしかしなくてもこの男性は……いや、止めておこう、これ以上考える事は碌な結末に繋がらない。
「では、此処にサインをして」
「はいはいっと」
「はい、これで契約は完了です」
そうこうしている内に契約は完了。
俺の能力は大きく制限される……が、特に違和感の類は感じない。
まあ、俺はまだ、この人間のスペックで居た時間の方が長いから当然かもしれないが。
「それでは、ヘスペリデスの東屋に送りますので、今後も『AIOライト』を自重してお楽しみください」
「そうだな。楽しませては貰うとしよう」
「そこは嘘でも自重すると言えにゃ。この『狂い斧』」
「はっはっは、自重なんてしてたら作りたい物が作れないから無理だ。この悪魔め」
「友達ではない、恋人でもない、夫婦でもない、悪友でも敵対でもない。だが仲は良さそうな感じ……実に素晴らしいチラリズムだな!」
そうして俺は能力が大きく制限された状態で『AIOライト』へと戻っていった。
06/09誤字訂正




