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【AIOライト 72日目 02:58 (5/6・雨) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】
「さて、とっとと終わらせて寝ますかね」
俺はミデンが置かれている神殿に入ると、倉庫ボックスの中からリジェネエンジェルの金片、回復力溢れる灯りの札、オトガアングラーの疑似餌の三つを取り出す。
これらに回復力溢れるヘスペリデスの黒枝を加えた四つのアイテムが今回の錬金に使う素材である。
「ふんふふーん」
俺は神殿内部に自身の魔力を充満させると、ミデンに四つのアイテムを投入。
そしてミデンの意思に任せて吸わせる形で魔力を注ぎ込む。
「錬金術師ゾッタの名において告げる」
十分に魔力を注いだところで、いつものようにミデンの中に左手を突っ込み、言葉を紡ぎ始める。
「癒しの天使が装具の欠片、小さき太陽招く翼、愚者を呼び寄せる熱無き灯火、楽園にて育まれし黒の枝」
言葉を紡ぎ始めると同時に、ミデンの中の液体が渦を巻き始め、物理的な力を伴わない圧迫感が周囲に生じ始める。
「我が求めるは先触れ、指し示すもの、暗き世を照らすものにして未知を既知とするもの」
HPバーが吸われる感覚も、俺の存在が吸われる感覚もしない。
だがそれは悠長にしていていいという事ではない。
「黒の枝と金の欠片を器とし、光だけを携えて宙を舞う小さき太陽」
だから俺は脳裏に先程見たばかりの大樹から湧き上がる無垢なる魂たちの輝きを思い出しながら、言葉を紡ぎ続ける。
「されど自由に舞う事は許されぬ。天地照らす日がかくあるように、汝もまた鎖にて縛られる」
ミデンの中に存在する圧迫感が徐々に強まっていく。
それは物理的な力を伴わないにも関わらず、俺の左手を押し潰しそうな力を持っている。
だが問題ない。
今更この程度の力で押し潰されるような柔な肉体はしていない。
「照らしたまえ果て無く続く闇を。飛びたまえ広大なる空を。幾ばくかの鎖と引き換えに汝は新たな息吹を産み続けるものとなる」
だから俺は左手から嫌な音を聞きつつも、言葉を紡ぎ続ける。
「認めよ。改めよ。従えよ。静まれ。鎮まれ。調べ調和させ形を成せ。汝こそは我が袂にて舞い踊り、世界を照らす小さき太陽」
そして手に鎖を巻き付けると、俺は一気にそれを引き上げる。
「さあ、我が前に姿を顕せ。ニフテリザ」
ミデンの中から現れたのは、持ち手の部分に金色の鎖が巻き付くと共に、蝙蝠の翼のような物を黒い本体から生やした木製のカンテラ。
その灯りは柔らかく、こうして直接目にしていても目に刺激を感じたりはしない。
同時に、俺の目論み通り、それは支えの無い空中で独りでに浮かんでいる。
うん、無事に完成だな。
△△△△△
ニフテリザ
レア度:PM
種別:装飾品-バックル
耐久度:100/100
特性:リジェネ(回復力を強化する)
ハイド(認識しづらく、人目に付かない)
オトガ(自動的に攻撃を防ぐ)
それはCommonではなくSoleである。
蝙蝠の翼と黄金の鎖を持つカンテラ型の照明。
所有者の邪魔にならない形で空を飛び、状況に応じた光量で周囲を明るくすることが出来る。
このアイテム自身は目立たないが、灯りに照らされる所有者と周囲は目立つので、注意が必要。
▽▽▽▽▽
【ゾッタの錬金レベルが33に上昇した。錬金ステータスの中から上げたい項目を一つ選んでください】
「よし、問題は無さそうだな」
俺はニフテリザをネクタールのインベントリに移動させ、装備させる。
それと同時にレベルアップのインフォが来たので、助道具を1上げて18にしておく。
△△△△△
ゾッタ レベル29/33
戦闘ステータス
肉体-生命力20・攻撃力10・防御力10+3・持久力9・瞬発力10・体幹力10
精神-魔法力10・撃魔力10・抗魔力7+6・回復力34+15・感知力10・精神力11
錬金ステータス
属性-火属性10・水属性10・風属性10・地属性10・光属性7・闇属性10
分類-武器類20・防具類15・装飾品15・助道具18・撃道具15・素材類15
▽▽▽▽▽
「さて、これで夜中に起きていた事の言い訳は利くな」
これで今この場でやるべき事は終わった。
なので俺は神殿の外に出ると、そのまま中庭を抜ける。
で、寝床に向かうのではなく、屋敷を抜け、畑の間の道を抜け、東屋の中で指を鳴らしてヘスペリデスの外へと出る。
「……」
ギルドのレンタル部屋には俺にだけ見え、開く事が出来るヘスペリデスへの繋がりが見えている。
これならば俺が外に出ている時でも、GMが関与しない限りは大丈夫だろう。
「……」
俺はレンタル部屋の外に出る。
錬金術師ギルド『巌の開拓者』のヒタイ本部は時間も時間なだけあって、プレイヤーの姿は全くなかった。
建物の外からは絶え間なく雨音が聞こえており、今日もまた雨である事を俺に教えてくる。
「さて……」
俺は雨具を身に着けずに『巌の開拓者』の建物の外に出る。
そして、雨の中を歩き続け、南の森林へと向かう。
「来るなら来い」
そうして南の森林の領域内に入った瞬間だった。
「全力で相手をしてやる」
俺の立つ世界が『AIOライト』から切り離され、雨の色が透明な物から青白いものに変わった。




