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本日は二話更新になります。
こちらは二話目です。
【AIOライト 72日目 02:37 (5/6・雨) 始まりの街・ヒタイ-ヘスペリデス】
草木も眠る丑三つ時……とは少しずれているが、その時間のヘスペリデス内には不思議な光景が広がっていた。
天蓋で無数の星が煌めいているのが見えるだけではなく、天蓋から黒い霧のような何かがヘスペリデスのシンボルと認識されている大樹に降り注ぎ、その代わりに大樹の全体から白い光の粒が天蓋へと上がっていくという光景だ。
「ま、普通の人間には見えないし、仮に見えても理解しちゃいけない光景だけどニャー」
「だろうな。黒い方は世界と世界の狭間を漂い、果てであるヘスペリデスまで流れてきた憎悪に怨念。白い方は大樹によって余計な物全てが剥ぎ落された魂そのもの。言ってしまえば輪廻転生と言う機構の一部だ。普通の人間が知るには荷が勝ち過ぎている」
で、そんな見えてはいけない物を眺めつつ、俺とGMは大樹の根本に向かって二人だけで歩いていた。
幸いにしてシアたちは揃って眠っているので見られることはないが、もしも見られたら色々と面倒な疑惑を持たれそうな光景である。
「それで?どうしてお前はこんな時間にヘスペリデスに来ているんだ?」
なお、当然ではあるが、俺の用件はデートではないし、告白でもない。
見た目だけならそれっぽい感じはあるが、そんな雰囲気はまったくないし、そもそもGMは勝手に居るだけ。
なので、そう言う疑惑については全力で否定させてもらう。
「単純に、特殊な世界であるヘスペリデスの実地調査をしに来たというのが一つ」
俺の質問に対してGMは真面目そうな表情になった後、大樹や周囲の林をカメラで撮影しつつ答える。
意外と真面目な時と不真面目な時と、真面目そうにしているだけの時が分かり易いよな、このGM。
ちなみに今は三つ目の表面上、真面目そうにしているだけである。
心の底ではたぶん面倒くさがっているし、説明しなくても大丈夫なんじゃないかなと思ってる。
「他は?」
「そろそろ採取物が採れるようになるので、そちら関係での説明と注意をしておこうと思いまして」
「なるほど。特性:ヌル付きが採れた時の取り扱いについてだな」
「そう言う事です。話が早くて助かります」
それでも説明に来る当たり、本質的にはクソ真面目なんだよな、このGM。
仕事熱心というか、役割に縛られているというか、まあ、本人が気にしていないのなら特に問題はないだろう。
「説明は……現物を手にしてからの方が早いですね」
「だろうな」
やがて俺たちは大樹の根元に着く。
そこに出現している採取ポイントは三つ。
一つはヘスペリデスの黒葉なので採取しないが、残り二つは採取した。
そしてこんなアイテムが手に入った。
△△△△△
回復力溢れるヘスペリデスの黒枝
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:リジェネ(回復力を強化する)
ハイド(認識しづらく、人目に付かない)
携帯工房・ヘスペリデスにて採取された黒い樹皮を持つ枝。
その身に膨大な量の魔力を秘めており、取り扱いには細心の注意が必要になる。
▽▽▽▽▽
△△△△△
『非存在性・』破邪のヘスペリデスの黒枝
レア度:3『・EX』
種別:素材
耐久度:100/100
特性:ディスペル(魔の力を打ち砕く)
インクリス(他の特性を強化する)
『ヌル(存在しないはずの物質)』
携帯工房・ヘスペリデスにて採取された黒い樹皮を持つ枝。
その身に膨大な量の魔力を秘めており、取り扱いには細心の注意が必要になる。
『※デスペナルティの対象にならない
※プレイヤー名:ゾッタ以外の所持不可能』
▽▽▽▽▽
「まず第一に、携帯工房内で生産されるアイテムのレア度は工房のレア度に依存しますが、レア度:PMの場合には所有者の錬金レベルと戦闘レベルに応じた値となります」
「ふむふむ」
「第二に、生産されたアイテムに付く特性は、基本的には携帯工房に付与されている特性と特性:プレンの中から1~2個付きます」
「なるほど」
回復力溢れるヘスペリデスの黒枝には繋がりが見える。
繋がっている先は……もう全部揃っているな。
特性:ヌル付きの方も繋がりが見えているが……後一つと言う所か。
「第三に、特性:ヌルが付くのは貴方が直接採取し、扱うアイテムのみです。万が一他のプレイヤーが手にしてしまった時には、即時没収、同等品に交換させてもらいます」
「ま、それが妥当だろうな」
特性:ヌルの取り扱いについての文句はない。
こんなのが一般のプレイヤーに渡っても困るだけだからな。
で、先程の様子から見る限り、こんな説明を俺にする必要があるとはGM自身思っていないだろう。
「そう言うわけですので……」
では、どうしてこんな説明をするのか。
いや、そもそもとして何故GMがこの場を訪れたのか。
「貴方の信徒及び眷属が安易に増えることはありません。ご安心を」
その答えは俺たちの背後に既に居た。
「 」
「「……」」
俺もGMも己の背後を見るような愚かな真似はしない。
見なくてもアレが来ている事など気配だけで分かる。
そして気配と音以外でアレを認識してはいけないという事も分かる。
見れば……そう、見てしまえば全てが終わる。
アレはそう言う存在だ。
「ハルウウウゥゥキイイィィ」
「 」
何処かで聞き覚えのある嘶き、鉤爪で地面を蹴るような音、それに刀の鞘が何かに擦れるような音と共にアレの気配は去っていく。
「まったく……アレに通達をするだなんて心臓が幾つあっても足りないのニャ」
「まあ、その気持ちだけは理解できる」
本来アレには交渉の余地などという物はない。
だが、顕界しているおかげでそう言う余地も生じるようになっているようだ。
尤も、そのおかげで今回のように明確な意図なく気まぐれに現れるという危険も生じているわけだが。
「とりあえず伝えるべき事は伝えたから、私は帰るのニャ」
「そうか、気を付けてな」
「心配しなくても、気を付けるのはおみゃーの周囲ぐらいなのニャ……」
そうして伝えるべき事を伝えたのだろう、GMはヘスペリデスから去っていった。
そして俺は、寝床ではなくミデンが置かれている神殿へと足を向けた。




