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AIOライト  作者: 栗木下
7章:マイホーム

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338/621

338:64-9-D4

「ヒュドラアアァァ!!」

「シィアアアァァ!」

「フシュラアアアァァァ!」

「おっと」

 頭の一つが落ちた事に対する『呑気な多頭蛇の王』の反応は劇的な物だった。

 力尽きた頭を燃え上がらせている紫色の炎を消す為だろう、『呑気な多頭蛇の王』はその場で激しくのた打ち回り、周囲に破壊と火の粉を撒き散らしてくる。

 そのため、撒かれる火の粉によって状態異常:ポイズンになった俺は急いで『呑気な多頭蛇の王』の傍から離れる。


「マ、マスター。大丈夫ですか!?」

「ああ大丈夫だ。もう治ってる」

 そうして十分に距離を取ったところでシアと合流。

 HPを回復させつつ、安全な場所から『呑気な多頭蛇の王』の様子を窺う。


「ヒュウウゥゥ……」

「シイィィ……シイイィィイイィィ……」

「フシュウゥ……」

 『呑気な多頭蛇の王』の頭に付いていた火はのた打ち回っている内に消えていた。

 残る三つの頭のHPも、激しくのた打ち回った影響か、紫色の火を消そうとした影響かは分からないが、幾らか減っている。

 そして力尽きた頭については……


「け、結構グロいですね」

「そうか?」

 元々黒かった鱗がさらに焼け焦げた状態でもげ落ち、『呑気な多頭蛇の王』の近くに転がっていた。

 その光景はシア曰くグロいらしいが……そこまでではないと思う。

 血も肉も赤い状態では出てないしな。


「ヒュウウゥゥ……」

「ま、それよりもだ」

 俺は『呑気な多頭蛇の王』の落ちた頭に繋がる首の断面を見る。

 そこでは、ゆっくりとだが、火傷の跡の肉が不気味に泡立ち始めていた。


「ドオオォォ……」

「マスターこれって……」

「『呑気な多頭蛇の王』の元ネタ、ヒュドラは首を潰すたびに頭の数を増やしながら再生したらしい」

「っつ!?それじゃあ……!」

 俺の言葉にシアが顔を軽く青ざめさせる。

 そうしている間にも泡立ちは激しくなっていき……


「ラアアァァ……」

「あれ?」

「尤も、火で傷口を炙れば問題ないらしいけどな」

 赤い光を幾らか撒き散らしただけで終わった。

 そう、『呑気な多頭蛇の王』の元ネタであろうギリシャ神話のヒュドラは、頭を潰されるたびにその数を増やしつつ再生させた。

 だが、首を落とすと同時に火で炙る事によって再生が出来なくなり、英雄によって討伐……より正確に言えば封印されたのだった。

 『AIOライト』のヒュドラ種も、その逸話を劣化させた物を能力として持っていたのだろう。

 だから、失敗に終わったが、再生そのものはしようとしたのだ。


「さて、構えろよ。シア。戦いはまだ終わっていない」

「は、はい!」

「ヒュウゥゥ……」

「シイイィィ……」

「フシュウウゥゥ……」

 まあ、流石に元ネタ通りの不死身の怪物ではゲームとして成り立たないから、胴体のHPが尽きればそれで倒した事にはなるはずである。

 そして本体のHPバーはこれまでの行動の影響か、既に40%を切っている。

 となれば……まあ、新しい行動への警戒は必須だな。


「ヒュドラアァァ!」

「シイィィアアアァァァ!」

「フシュラアアァァァ!!」

「……」

 俺にゆっくりと接近してきた『呑気な多頭蛇の王』はこれまでと違い、同時に頭を突き出してくる。

 なるほど、一撃ずつで捌かれるのなら一斉にと言う判断なのだろう。

 だがしかしだ。


「温い!」

「「「!?」」」

 俺は一歩前に出て『呑気な多頭蛇の王』の狙いをずらしつつ、斧を振り上げる。

 それに合わせてネクタールにも槍を突き出させ、『呑気な多頭蛇の王』の頭の一つを下からカチ上げる。

 そして軌道修正をして俺に噛み付こうとした二つの頭の攻撃を、更に一歩前に出ることで回避する。


「『カースウッドキング・フォースハウル』!」

「「「ヒュドッ!?」」」

 このタイミングでシアが『カースウッドキング・フォースハウル』を発動。

 『呑気な多頭蛇の王』の頭の陰に居た俺に当てることなく、頭を無数の根によって攻撃しつつ、大きく弾き上げる。


「すぅ……」

 その間に俺は呼吸を整えつつ『呑気な多頭蛇の王』に懐に潜り込む。

 そしてインベントリから一里吼札を取り出し、武器を斧から八尺円棍に変えると、魔力を循環させ始める。


「行くぞ……」

 一里吼札が弾け飛び、周囲に俺の気配が充満する。


「ヒュ……」

「シィ……」

「フシュ……」

 すると俺の狙い通りに『呑気な多頭蛇の王』の頭たちはこれまで以上の敵意を抱いて、俺へ攻撃を仕掛けようとする。

 が、シアの攻撃の反動からはまだ立ち直れておらず、その姿は隙だらけ以外の何物でもなかった。


「『フォボス』」

 八尺円棍が敵意を吸収して力に変換する。

 五寸鬼瓦が八尺円棍が集めた力を俺へと流し込む。

 俺はそれを魔力に変換し、周囲の敵意を煽りつつ、八尺円棍の先端へと集め、斧の刃のような物を形成していく。

 そして全力で振り抜くまでに同様のサイクルを短く繰り返し続けた八尺円棍による一撃は……


「「「!?」」」

 『呑気な多頭蛇の王』の残った三つの頭のHPをゼロにするとともに、胴体のHPも大きく奪う。


「シアッ!」

「『ブート』!」

 そして残ったHPもシアの魔法によって削り取られ……


【ゾッタは『呑気な多頭蛇の王』を倒した】

 『呑気な多頭蛇の王』は声は無く、けれど地響きは立てながら、その場で倒れた。

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