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【AIOライト 60日目 12:15 (5/6・晴れ) ケイカ南坑道】
一個目の木目鉱石を手に入れてから暫く。
俺たちは二個目の木目鉱石を手に入れられないでいた。
と言うのもだ。
「回復を頼む!」
「任せろ!」
「大技行くぞ!」
「敵残りHP20%!」
「「……」」
今、広場に居る俺たちの目の前で行われているように、プレンゴーレムを見つけても、既に他のPTが戦闘中であるという事ばかりだったからである。
なお、当然ながら採取では入手できていない。
まあ、確率の問題からして、そちらで入手できるとは思っていなかったが。
「ようし!このまま押し切るぞ!」
「「「おうっ!」」」
ちなみに『AIOライト』では獲物の横取りはやる意味があまりない。
と言うのも、他のPTが戦っているモンスターに手を出して、攻撃し、HPを削って倒す事は出来るが、そうして倒した場合には得られるアイテムのレア度が下がると言う仕様が確認されているからだ。
更に言えば、他のPTが倒したモンスターの死体に対して横から剥ぎ取りを行った場合……所謂ハイエナ行為には、PKプレイヤーに対するものと同じタグが付けられる上に、得られるアイテムのレア度も微妙と言う仕様が存在する。
そんなわけで、妨害、わざとレア度の低いアイテムを入手したい、その他特殊な事情でもなければ、横槍を入れる行為も、ハイエナ行為も意味がないという事である。
「ゴオォォレエェェムウウゥゥ……」
「よし、やったぞ!」
「「「おおー!」」」
なお、現在俺たちの前で戦闘を行っているのは、数日前の件で一悶着あった剣を提げたプレイヤー……ローエンの率いるPTである。
彼らの戦いぶりは攻略組であるだけあって確かな物であり、一言でその戦いを言い表せば堅実となる。
むやみやたらと切りかかったりもしなければ、防御や回復に手を抜いたりもしない。
補助もきちんと入れているようだし、今の戦いでもプレンゴーレム1体にプレンバットが3匹ほど付いて来ていたのだが、完全に捌き切って見せていた。
ホムンクルスたちとの連携も良かったし、彼らが如何に優れたプレイヤーなのかが良く分かるな。
「お見事さん」
「ふんっ、ゾッタか。お前たちも木目鉱石集めか?」
「一応はな。尤も、俺としてはインゴットが一つ手に入ればそれで十分な感じもするけどな」
「……。そうかい」
どうやら数日前の件がしこりになっているらしく、ローエンの俺に対する態度には何処か棘がある。
まあ、それで俺が態度を変える必要もないので、そのままいかせてもらうが。
ローエンたちがシュヴァリエが行方不明になっただけで、自分たちの窮状を無視して慌てる程度には善人なのも分かっているしな。
「言っておくが、今この坑道には幾つものPTが入っている。お前みたいなソロプレイヤーがそう簡単にプレンゴーレムと戦えると思うなよ。そして倒す事もだ」
「そんな事は言われなくても分かってる。後、倒す事は問題ないから安心しろ」
「ぐっ……」
「ボソボソッ(ソロでプレンゴーレム倒せるのか……)」
「ボソボソッ(まあ、『狂い斧』だしな)」
「ボソボソッ(知ってた)」
「ボソボソッ(ですよねー)」
「ボソボソッ(やっぱ色々とおかしいわ)」
まあ、あれだ。
ローエンは男ではあるが、一種のツンデレみたいなものだと思ってしまえばいい。
そうすれば別段腹立つ事はない。
「ん?」
「なんだ?」
「地震か?」
「いや、待てこれは……」
と、ここで突然周囲の地面と空気が揺れ始める。
一瞬地震かとも思ったが、それにしては揺れがおかしい……と言うより、徐々にだがこちらに近づいてきている気配がする。
これはもしや……
「ワアアアアアァァァァァァムウウウウゥゥゥ……」
「「「!?」」」
「ちっ」
そうして震源が俺たちの居る場所にまでやってきた時、坑道の壁を突き破って現れたのは、プレンワームLv.50。
ワンダリングモンスターだった。
「マ、マスター……」
「落ち着け。ノンアクティブだ」
「全員手を出すなよ……騒ぎ立てるのも無しだ……」
「「「……」」」
幸いと言うべきか、現れたプレンワームはノンアクティブだった。
つまり、こちらが手を出さなければ、その内この場から去ってくれるはずである。
「ワムウウゥゥ……」
「「「……」」」
俺たちはじっとプレンワームが去るのを待つ。
そうしてプレンワームが牙の生え揃った口を壁に向けようとした時だった。
ーーーーー!
俺の耳は俺たちの居る場所の後方に伸びる通路から、プレンワームに向けて何かが投じられる風切音を捉える。
「させ……」
「マスター!?」
「『狂い斧』!?」
俺は咄嗟に反転しつつ、ネクタールの身体を伸ばし、肋骨を通じてネクタールを操作。
風切り音の源に向けて槍を突き出させる。
「るかっ!」
「ワムッ!?」
「「「!?」」」
金属同士がぶつかる鋭い音が、坑道中に広がる。
そして俺は見る。
投じられたものが波打った刃を持つ短剣である事。
それも既製品や普通に錬金したものではなく、何かしらの特殊な効果を付与された物……つまりはレア度:PMの品である事。
短剣と短剣を投じた主の間に繋がりが存在していたが、その主が既に行方をくらませている事を。
「ワムウウゥゥゥ!」
そうして短剣が空中で砕け散る頃。
プレンワームは俺たちに襲い掛かる事なく、地響きを伴いつつも地中に潜って何処かへと行ってくれた。
後には……
「……」
「MPK狙い……だと……」
「くそっ、何処のどいつだ……」
「外に出たら番茶さんに連絡するぞ。遂に懸念事項が発生したってな……」
不穏な空気に包まれた俺たちとローエンたちのPTだけが残された。




