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【AIOライト 59日目 14:02 (4/6・晴れ) 鉱山街・ケイカ】
錬金術師ギルド・ケイカ支部、地下闘技場控室設置カメラ。
「……」
「入るわよ。シュヴァリエ」
「ギニョール」
「気分は……まあ、良くはないでしょうね」
「そうだね。最悪の気分だよ」
「キュイー……」
「カー……」
「で、シュヴァリエはどうしてそんな気分になっているのかは分かっているの?」
「うん、分かってる」
「じゃあ、話してみて。ここなら他に誰か居ても……まあ、GMくらいよ。何をぶちまけたって問題ないわ」
「ありがとう。ギニョール」
「「「……」」」
「僕は……僕は迷ってた。リアルに戻った時どうすればいいのか分からなくて迷ってた」
「家族によって強制的に引き戻されるんじゃないかって?」
「うん、僕自身は『AIOライト』に残りたいと思ってる。けれどお父様がそれを許すとは思えなかった。だから、現実に帰ったらありとあらゆる手段を使ってでも、僕を『AIOライト』から引き剥がして……家の為に使うのが目に見えてた」
「そんなの逆らって、無理やりにでも残ってしまえばいい……とは言えないんでしょうね」
「うん、言えない。お父様だったら、私の身体自体を傷つけないのなら、本当にどんな手段でも使ってくると思う。お母様も、友達も、世間も、何だって巻き込んでくると思う。その為に『AIOライト』プレイヤーの家族ための後援会なんて物だって作ったんだと思うよ」
「……」
「だから僕は師匠を頼った。師匠なら僕のこの迷いをどうにかしてくれるんじゃないか……ってね」
「でも、その目論見は外れた。そうね」
「半分正解で半分ハズレってところかな」
「あら、そうなの?」
「僕が迷っていた事を師匠が分かっていたかは分からない。そこは師匠だしね」
「まあ、ゾッタ兄だものね」
「それでも師匠は示してくれたよ。結局、自分で選ばなければ何処に行く事も出来ない、そんな事実を、さ」
「絶対、そんなこと考えてないわよ」
「うん、知ってる。けどさ、それでもそれが事実なんだよ」
「僕は……私は師匠に殺気を向けられた時、何も選べなかった。恐怖に怯えて、目の前にある壁の途方もない高さに押し負けて、底の無い暗闇に飲み込まれて、師匠が自分から降参するまで何も出来なかった」
「……」
「全てが終わった後、本当に惨めで……私は私の事が心底恥ずかしく思えたよ。『決闘厨』だなんて周りから呼ばれていたくせに、こんなのは決闘じゃないと叫んだくせに、決闘に持ち込むべきでない物を持ち込んでいたのは私だったんだから……」
「キュイー……」
「クカー……」
「……。それで、何か見えた物は有ったの?」
「うん、もう僕は迷わない。現実に帰ったらお父様にはっきり言うよ。『僕は『AIOライト』の中に残って戦い続ける。貴方の思い通りにはならない』って」
「言えるの?」
「言えるよ。だって考えてもみなよ。師匠とお父様、どっちが怖いかだなんて誰の目にも明らかじゃない」
「ははっ、それは確かにそうね。と言うより、あれだけの威圧感を発揮できる人間が現実に居たら、そっちの方が驚きだわ」
「で、貴方自身の意思はそれでいいとして、貴方の父親が貴方の周りに仕掛けて来るであろう諸々については?」
「GMに投げる!」
「は?」
「だからGMに投げる。あのGMだったら、プレイヤーの周囲の人間の保護がプレイヤーの手助けになると判断してくれれば、それぐらいの事はしてくれるでしょ。ね?GM」
「そんな投げやりな……」
~~~~~♪
「あ、メッセージ来た」
「誰から?」
「GMから」
「ああ、やっぱり見てたのね」
「えーと……ああうん、こっちが指定した範囲に限って、幾つかの書類にサインをすれば保護してくれるってさ。文面からして凄く面倒臭いって感じは伝わって来るけど。後、この事実は既に現実世界には通知済みだってさ」
「そう。けどまあ、必要な措置よね。今の現実世界での『AIOライト』の立ち位置を考えたらね」
「かもね。それくらいは世間に疎い僕でも分かるよ」
「……」
「どうしたの?ギニョール」
「いえ、さっきの決闘の観客たちがシュプレヒコールを上げた件ね。今思い出してみるとちょっと妙かな……と、思ってね」
「妙?」
「あの時の観客たちの動きは偶然あの場に集まったにしては、妙な一体感が有ったような気がするのよ。そう、それこそまるで、誰かが扇動してゾッタ兄とシュヴァリエを貶めていたような感じがしたのよ」
「うーん、僕には分からなかったかな……」
「まあ、シュヴァリエの立場だとそうよね。でも、あの時の闘技場の空気は明らかにおかしかった。それだけは確かよ」
「……。そう言えば、師匠が闘技場を去る時に、何処かを気にしていた感じがあったかも」
「気にしていた?」
「うん、僕の事を気にかける言葉だけじゃなくて、観客席にいる誰かを気にしている感じがあったんだよ」
「シアの事を気にしていたんじゃなくて?」
「ううん、明らかに違う感じだった。そう、それこそ、何かを警戒している感じだったかも」
「……。シュヴァリエ、メンテ明け以降も含めて、暫くは一緒に行動しましょうか」
「いいの?」
「ええ、何か嫌な予感がするの。だから一緒に行動しておきましょう」
「分かった。それじゃあ、一緒に行動しようか。よろしくね、ギニョール」
「ええ、改めてよろしく。シュヴァリエ」




