表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIOライト  作者: 栗木下
6章:鉱山街・ケイカ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

283/621

283:56-7

「シア、夕食の方を頼む」

「はい、マスター」

 俺はシアに携帯錬金炉を渡すと、グランギニョルの目の前に座る。


「結論は出ている。けれど予想される状況からそこまでどうやって繋げればいいかが分からない。って感じの表情だな」

「たった今、従兄弟に読心能力があったなんて。と言う表情に更新されたわよ」

「言ってくれる」

「言ってやったわよ」

 で、ざわつくケイカ支部内で、シアには聞こえない程度に抑えた声量でグランギニョルに話しかける。


「で、実際のところどうなんだ?シアの表情からして残る側だとは思っているが」

「そうね。残る事はもう決めてる。ただ……」

「ただ?」

「リアルに戻って、父さんと母さんに会って、それで話をしたら揺らぐかもしれないわ。そうでなくても、心配する二人に私は大丈夫だって、きちんと説得してからじゃないと私は攻略に専念できない」

「まあ、グランギニョルの立場上、それはそうだろうな」

 やはりと言うべきか、グランギニョルにはまだ色々と迷うところがあるらしい。


「実際、抜けるタイミングとしては一番丁度いいタイミングではあるのよ」

「9月1日……ああ、高校の始業式か」

「ええそうよ。学生たちはこのタイミングで抜けられれば、そこまで大きな支障をきたす事なくリアルに復帰できる。このタイミングを逃したなら……まあ、今の友人たちとは疎遠になるし、学業関係にも色々と問題は来たす事になるでしょうね」

「貴方は私たちよりもゲームを選ぶのね……ってか?」

「だいたいそんな感じよ。まあ、ぼっちのゾッタ兄には無縁でしょうけど」

「まあ、そう言うのはめんどくさいって切り捨て続けたからな。後、大学生はだいたい9月中まで夏休み……と、これはどうでもいいか」

 シアの夕食は……珍しくメニューに迷っているようで、もう少しかかりそうな感じがある。

 それならば、まだ話は続けていられるだろう。


「結局のところ、お前はどうして残る?グランギニョル」

「……」

 だが、そこまで時間があるわけでもない。

 だから俺は最も重要な点……ゲームを攻略をする理由を聞く。


「私は……打算と言う事にしておいて」

「打算……ねぇ」

「初めからと言えばそうだけど、もう『AIOライト』はただのゲームじゃ済まない事になってる。そんなゲームでクリアに貢献すれば、あるいはレア度:PMの実体化に成功すれば、それだけできっと英雄扱い。一生安定するわ」

「まあ、そう言う考え方は出来るよな」

 だがグランギニョルは本音を語らなかったようだ。

 いや、打算があるというのも本音ではあるのだろうが……極一部と言うところだろう。


「あら、軽蔑とかはしないのね」

「それがお前の理由だって言うのなら、別にそれでいいと思っているからな。ただ……」

「ただ?」

 まあ、何にしてもこれは言っておくべきだろう。


「どういう理由にしろ、行動にしろ、それが自分が選んだ道だってのは自覚しろ。他人に自分の選択の責任を負わせるような真似はするな。でなければ……少しでも後悔をした時に限界が来るぞ」


「そんなのは言われなくても分かってるわよ。それと、シアちゃんを理由に使う気もないわ。何処かの誰かさんを考えたら、怖くてとてもじゃないけど理由には出来ないもの」

「ならいい」

 俺の言葉をグランギニョルがどこまで真剣に受け止めたのかは分からない。

 が、何処か呆れた様子で溜め息は吐いている。

 まあ、シアに面倒事を押し付ける気がないなら、俺から言う事はないな。


「マスター、時間がかかっちゃってすみません。でも夕食が出来ましたよ」

「おっ、ありがとうな。シア」

 と、ここで、夕食が出来たらしい。

 さて今晩はどんな美味しいご飯が出るのだろうか。

 楽しみで仕方がないな、うん。


「グランギニョルとシュヴァリエの分も……あれ?」

「あら、そうなの。それなら……ん?」

 で、優しいシアは俺の分だけでなくグランギニョルとシュヴァリエの分も作ったらしい。

 だが、二人の様子がおかしい。

 そこで俺もケイカ支部の中に注意を巡らせてみる。

 そうして気づく。


「シュヴァリエが……居ない?」

「さっきまでそこに……居たわよね」

「ん?どこ行った」

 シュヴァリエの姿がケイカ支部の何処にもない事に。


「ねぇ、ブルカノさん、トロヘル。シュヴァリエが何処に行ったのか知らない?」

「さっきまであの辺りに居たはずなんですけど……」

「ん?そう言えば見ないな。何処に行った?」

「言われてみれば姿が無いな。どうした?」

 グランギニョルとシアは何処か不安そうな表情でトロヘルとブルカノさんの下に話を聞きに行く。

 その間に俺も改めてケイカ支部の中を眺めつつ、シュヴァリエが何処に行ったのかを考える。


「ふむ……」

 まずケイカ支部の中に居ないのはほぼ確定でいいだろう。

 支部の中は広く、幾つかのテントにテーブルの類で視線が通っていない場所もあるが、それでも今の状況ならシュヴァリエは声を上げて、自分の存在をアピールし始めるだろう。

 さっきまでトロヘルたちと言い争っていたはずの脱出を求める組のプレイヤーたちも協力を始めているしな。

 となるとだ。


「シア、グランギニョル。お前たちは支部の中で残って探していろ。他の連中もな」

 シュヴァリエは支部の外に出た可能性が高い。


「マスター?」

「俺はネクタールで隠れつつ、ちょっと外を見てくる」

「あ、はい。ありがとうございます。マスター!」

「じゃ、行ってくる」

 そうして俺は必要なアイテムを倉庫ボックスから取り出すと、ネクタールで姿を隠した状態で、ケイカ支部の外に出る。

 さて、シアに喜んでもらうためにも頑張らないとな。

 シアが嬉しい事は、俺にとっても嬉しい事だからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ