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【AIOライト 53日目 09:25 (2/6・晴れ) パイライト・ドーム】
「さて、着いたな」
「ですね」
パイライト・ドームの反対側に通じる道は、ドームの外周に沿って作られており、とにかく長かった。
気になる点についても、何処までも広がる海を臨める窓に、少々妙な気配がする壁の凹みぐらいなもので、敵も含めて本当に何も無かった。
そうして15分ほど歩いた先に在ったロビーも、転移の登録を行うための天秤が無い以外には、入口側のロビーと変わりなく、見るものは何も無いと言わざるを得なかった。
「見た感じは……特に変わりないですかね」
「そうだな。普通に見た限りでは、変化なしだ」
が、それもここまでである。
ロビーの外にはパイライト・ドームによって遮られていた首架け橋の続き……後半が伸びている。
その見た目はシアの言うとおり、首架け橋の前半と変わりがあるようには見えない。
幅も材質も、橋の上に生えている樹木にも特に変化は見られない。
だが、普通に見なければ?
「シア。ここを」
「これは……地味に嫌な物がありますね」
「全くだ」
俺たちはパイライト・ドームの外に出ると、一番近くにあった橋の表面を木の根が覆っているように見える場所に近づく。
そして、それを見つけた俺は、指さしてシアに示す。
「落ちる事はないですよね?」
「ああ、武器みたいに細い物や小さい物ならともかく、人が橋の下まで落ちるはないと思う」
そこに有ったのは、木の根の間に隠れるように空いた穴。
橋の下は見えないし、穴の大きさも人の片足が入るかどうかといった所だが……だからこそ隠れて見えなくなってしまっている。
「ただまあ、戦闘時にこの穴に脚を突っ込んだり、つまずいたりしたら……どうなるかは目に見えているな」
「気をつけないといけませんね」
「だな」
俺の言葉にシアが力強く頷く。
実際、この罠は厄介だ。
一瞬であっても戦闘中に転んだり、動けなくなったりすれば、それが致命傷になる可能性は高いのだから。
「とりあえず、事前に決めた方針通り、戦闘は可能な限り避ける方向で行くぞ。それと戦闘になった時も、木の根がある場所は避ける方向で」
「はい、分かりました」
「ーーーーー」
穴の危険性についての考えを共有した所で、俺たちは首架け橋を進み始める。
さて、今回は何かしらの変化が起きるまでにどれぐらいかかる事になるのやら。
まあ、それでも歩き続けるしかないわけだが。
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【AIOライト 53日目 13:16 (2/6・晴れ) 首架け橋】
「あ、鯨がまた吹きましたね」
「本当だなー」
昼食を挟みつつ歩き続けることおおよそ四時間。
俺たちは敢えて首架け橋の端の方を歩いていた。
「ーーーーー」
「と、敵だな。シア」
「はい」
その理由は単純。
戦闘を避けるのにそちらの方が都合が良い……橋の中央よりも端の方が敵の密度が低かったからだ。
「ニュー……」
「ニュニュー」
「ニュオー」
「「「……」」」
と、そんな事を俺が考えている間にも、ネクタールに隠れた俺たちの傍をプレンニュートと言う名前の巨大なイモリたちが通り抜けていく。
プレンニュートたちのレベルは平均して20。
戦っても問題なく勝てるだろう……が、今の先を急ぐ身とここの環境を考えたら戦わない方が正解だろう。
「ニュニュート……」
「よし、いったな」
「じゃあ、行きましょうか」
そうしてプレンニュートたちが俺たちに気づく事なく通り過ぎて行ったところで、俺たちは移動を再開する。
「それにしても、相変わらずネクタールの能力は凄いですよね」
「そうだな。移動で誰が一番功績上げているかと言えば、ネクタールだと思う。俺たちのスムーズな移動はネクタールが居るからこそだし」
「ーーーーー」
周囲に敵も居ないので、俺たちは会話も再開する。
するとシアと俺に褒められたことが嬉しかったのか、それとも恥ずかしかったのか、ネクタールは微妙に体表を赤くする。
だが実際ネクタールが居なければ……まあ、移動面だけで見ても、今の数倍の労力を必要とした事は間違いないだろうし、そこは誇ってもいいと思う。
「ん?」
で、そうやって会話しつつ進むこと数分。
俺たちの前に、樹の影から一体のモンスターが唐突に現れる。
「キキューイファファファ」
現れたモンスターの名前はプレンブロッサムLv.20。
姿そのものはだいぶ前に見たものと殆ど変らず、俺の身長よりも大きな花の中心に立派な牙が生え揃った口を持ち、花の下には棘付きの茎と葉、それに蔓で出来た身体を持っている。
で、その顔は思いっきりこちらに向いていた。
ああうん、これはもう隠れるのは無理だな。
「戦うぞ!」
「はいっ!」
「ーーーーー!」
俺の声に合わせる形でシアとネクタールも戦闘態勢を取る。
「キキュギシャー!」
対するプレンブロッサムも棘付きの蔓と葉を大きく広げ、こちらの事を威嚇しつつゆっくり迫ってくる。
そして十分に距離が詰まったところで……
「行くぞ!」
俺はそれまでと違って僅かに黒が混じった紅のオーラを纏いつつ、プレンブロッサムに向かって駆け出した。




