246:50-10-E9
「行くぞっ!」
「『癒しをもたらせ』『大地の恩寵をその身に』!」
「ーーーーー!」
俺がバーサークオーヴに接近すると同時に、シアの支援魔法とネクタールのヘイトコントロールが始まる。
そして十分に接近した所でいつものように斧を振り下ろしつつ八尺円棍に武器を切り替える。
この流れは最近の戦闘では当たり前の流れとなっており、ほぼ確実に決まっていた動きでもある。
「キュウ~」
「なにっ!?」
だが今回は決まらなかった。
八尺円棍に武器が変わる直前。
まるで武器が変わる事を知っていたかのようにバーサークオーヴは宙で転がり、紙一重の所で避けて見せた。
「キュウッ!」
「うぐっ!?」
「マスター!?」
そして反撃としてバーサークオーヴが突進。
俺の顔面に猛スピードで体当たりしてくる。
人の頭大の硬質な球体がぶつかってくるというのは……普通に痛い。
「大丈夫だ!ダメージは大したことない!反撃するぞ!」
が、HPバーの減りは大したことがない。
どうやらバーサークオーヴの攻撃力はあまり高くないらしい。
「おらぁ!」
「キュウッ!?」
俺は命中率を鑑みて、八尺円棍を斧に戻す。
それと同時に、左手に持った短剣でバーサークオーヴを切りつける。
減ったHPバーの量は15%ほど。
手ごたえも悪くない。
どうやらガードホーンエッジの無属性魔法攻撃がいい働きをしているようだ。
「オオオォォォ……」
「これはっ!?」
「マスター!」
だが攻撃直後にバーサークオーヴの様子が急変する。
真紅の球体の身体から特性:バーサーク特有の紅いオーラを放出させると同時に、小刻みに震え始める。
これは明らかに拙い。
そう思った俺が殆ど反射的にその場から飛び退いた瞬間だった。
「ヴウウウゥイゥゥゥ!!」
「「「!?」」」
視界が真っ赤に染まる。
いや、違う。
バーサークオーヴの身体から大量の炎が、火球が、狙いを定めずに連射されている!
「ぬぐおっ!?」
「マスター!?」
「俺の後ろから出るな!!」
幾つもの火球が俺とネクタールの身体に当たり、俺のHPバーが削られていく。
幸いなのは一発当たりの威力が控えめで、シアの支援と回復があるならば、俺のステータスでも十分に盾として耐えられるという所か。
「キュウィゥ」
「はぁはぁ……」
やがて暴れ疲れたようにバーサークオーヴの攻撃は止む。
俺のHPバーは……30%程度は飛んだか。
だが既に回復は始まっている。
これならばもう一度同じのが来ても何とかはなるな。
「マスター、試してみてもいいですか?」
「そうだな。流石にあのカウンターが常に、何にでも、だとは思いたくない」
だからと言って、もう一度放たせていいと言うものでもない。
なので、俺は何がトリガーになっているのかを確かめる事にする。
「『ブート』!」
「キュイウゥ!?」
シアの杖から放たれた物理攻撃属性の魔法弾が、暴れ疲れて大人しくなっているバーサークオーヴに当たる。
「「「……」」」
「キュウウゥゥ……」
HPバーの減りは大したことはないが、バーサークオーヴに暴れる気配は見られない。
どうやらトリガーは引いていないらしい。
「シアは下がってろ」
「はいっ!」
シアと入れ替わるように今度は俺が仕掛ける。
「ふんっ!」
「キュウゥ」
まず一撃目、右手の斧。
これは普通に当たり、バーサークオーヴのHPをおおよそ10%ほど削る。
「おらぁ!」
「キュイウッ!」
続けて斧を返す動きで二撃目、当たる直前に斧から八尺円棍に変更。
が、この攻撃はまるでそう来ると知っていたかのように避けられる。
となると、もしかしたら、一定威力以上の攻撃は事前に察知されるのかもしれないな。
「せいや!」
「オオ……」
そして三撃目、左手の短剣。
俺は直前に考えていた事から、わざと掠るように当てる事を狙い、その通りにバーサークオーヴを傷つける。
ダメージは……間違いなくさっきの斧よりは明らかに少ない。
だがその反応は顕著だった。
「オオオオォォォヴウウウゥゥゥゥイィゥゥゥ!!」
「うおおおっ!?」
「わわわわああぁぁ!?」
明らかに先程よりも火炎の量が多かった。
震えが大きかった時点で想像は出来ていたが、明らかにカウンターの規模が強くなっていた。
俺は慌てて距離を取り、シアの上に覆いかぶさる形で伏せる事でシアを守りつつ被弾する量も抑えたが、それでもHPバーは大きく削れていく。
「キュウウゥゥ……」
「はぁはぁ……」
「と、とんでもないですね……」
「ーーー……」
やがてバーサークオーヴが暴れまわるのは終わり、疲れた様子でゆっくりと宙を漂っている。
ああうん、これではっきりした。
バーサークオーヴが反応しているのは魔法属性の攻撃だ。
そして暴れまわる規模は減っているHPの量に依存。
ついでに暴れまわった後に疲れ果てて一時的に動きが鈍くなる。
となればだ。
「だがこれで……」
俺はバーサークオーヴに接近する。
そして両手で持った斧を振り下ろしつつ武器を八尺円棍に変更。
「キュ、キュウゥゥ!?」
「終わりだ!」
バーサークオーヴに真正面から叩きつけ、HPバーを削り切る。
「ふぅ……疲れた……」
「時間がない環境でとんでもないのに出会っちゃいましたね」
「全くだ……」
俺はシアにHPの回復をしてもらいつつ、バーサークオーヴの剥ぎ取りを行う。
で、こんな物が剥ぎ取れた。
△△△△△
バーサークオーヴの欠片
レア度:3
種別:素材
耐久度:100/100
特性:バーサーク(猛り狂う者に祝福を)
バーサークオーヴの身体の欠片。
宝石に似た輝きを有すると同時に強い魔法の力を秘めているそれは、錬金術に用いる事で内に秘めた力を開放する性質を有すると言う。
▽▽▽▽▽
「まあ、苦戦しただけの甲斐はあったみたいだな」
「持ち帰れればそうですね」
剥ぎ取れた物を確認した所で、俺たちは少しの休憩を挟んでから探索を始める。
残り時間は……丁度一時間半。
01/21誤字訂正




