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【AIOライト 44日目 15:27 (1/6・晴れ) 『吸収する岩の神殿』】
アブソーブロットイトたちとの戦闘後、『吸収する岩の神殿』の探索は順調に進んでいた。
具体的に言えば、幾つかの採取ポイントでの採取と、少人数で行動していたアブソーブスケルトンとアブソーブランサーと戦闘。
時間はかかったが、どちらも数体ずつ倒す事に成功している。
アブソーブロットイトについては……見つからないように動き、避けている。
まあ、アレは戦う場所を考えないといけない上に、考えてもなお時間がかかるからな。
可能な限り相手にしないのが正解だ。
「さてそろそろ頃合いか」
「そうですね。そろそろいいと思います」
で、そんな方針を定めて行動したので、現在はインベントリがほぼ満杯の状態。
後は帰るだけの状況となっている。
と言うわけで、俺たちは可能な限り敵に見つからないように行動し、敵に見つかっても一目散に逃げる事で戦闘になる前に追跡範囲外へ移動。
何事もなく最初の部屋に繋がる扉の前……最初にアブソーブランサーとアブソーブスケルトンたちが潜んでいた通路まで戻ってくる。
「……」
背後に敵の姿はない。
なので俺は目の前の扉を慎重に動かし、広場の光景が見える程度の隙間を作る。
「どうですか?」
広場に敵の姿は……ある。
敵の姿を確認した俺は、念のために扉を閉めると、今見えた光景についてシアに話す。
「……。拙い……ですよね」
「ああ、拙いな。間違っても見つかれない」
広場には見える範囲で六体のモンスターが居た。
具体的に言えば、アブソーブランサーLv.26、アブソーブスケルトンLv.25、Lv26×2、Lv.29の計五体に、アブソーブロットイトLv.26だ。
うん、絶対に見つかったらダメなやつだ。
この場から見えていない範囲にもモンスターは湧いているだろうし、その総数は十を超えるかもしれない。
そして一匹に見つかれば、広場中のモンスターがリンクするに決まっている。
となれば、見つかったら嬲り殺しにされるか、勝てたとしても時間をかけることになって、時間切れによるダンジョン消滅に巻き込まれて死に戻りする未来に到達することになるだろう。
俺の記憶が確かなら、『吸収する岩の神殿』は夜の八時ごろには消滅するはずだしな。
「これはネクタール頼みだな」
「そうですね。よろしくお願いします」
「ーーーーー!」
俺とシアの呼びかけに応えるべく、ネクタールがその身を大きく膨らませ、人二人を包み込むのに十分なサイズになる。
加えて表面の質感と色を変化させ、周囲にある神殿の通路と壁と同化するような状態になる。
「よし、行くぞ」
「はい」
「ーーー」
ネクタールの準備が整ったところで、俺とシアはネクタールでその身を隠し、息を殺し、可能な限り物音を立てないように注意を払いながら広場に続く扉を開けると、広場の中に身体を滑り込ませる。
「「……」」
予想通り、入口から見えていない場所にもモンスターは居た。
総数は……確認できた範囲で18。
有名なローグライクゲーム的に言うならば、モンスターハウスに近い状況だった。
マトモにやり合ったら、嬲り殺しにすらならないだろう。
「……」
だが幸いにして、今の俺たちは見つかっていない。
なので俺たちは誰も見ていないタイミングを見計らい、壁際を慎重に移動。
少しずつ少しずつ目標とするダンジョンの出口へと向かう。
「「カラカラ……」」
「……」
俺たちの横を武器を持ったアブソーブスケルトンたちが通り抜けていく。
不自然な壁のふくらみなどがあれば気づかれそうな気もするが、そこはゲーム上の仕様とネクタールの能力が噛み合っているおかげで何とかなっているようだ。
「……」
そうして進む事およそ一時間。
走れば秒単位で突っ切れる場所を慎重に進み続けてきた俺たちは、ようやく出口がある部屋の扉の前にまで到達する。
此処まで来れば、仮に見つかったとしても出口まで全力疾走すれば自動生成ダンジョンから脱出する事は出来るだろう。
「……」
そして部屋の扉を開け、シアが部屋の中の安全を確認し、部屋の中に身体を滑り込ませたところで俺はふと思う。
何故、この広場にはこれだけのモンスターが発生していたのだろうか、と。
不意に生じた疑問に、俺は特に深く考える事もなく今も陽の光が降り注いでいる広場の中心の方へと目をやる。
「スウゥゥハアァァ……」
すると何時から居たのだろうか、広場の中心には見慣れぬ姿のモンスターが居た。
ソイツは陽の光が降り注ぐ広場の中心で、全身に黒いボロ布を纏い、右手には身の丈ほどもある大きな鎌を握っており、ソイツの周囲だけは新月の夜よりもなお暗い雰囲気が漂っている。
袖口から覗く手と横顔は綺麗な白色……いや、骨だった。
息を大きく吸っては吐きを繰り返し、周囲の喧騒などどうでもいいと言う雰囲気を滲ませていた。
名前は……アブソーブデスLv.33。
そうして俺が名前を知覚した瞬間だった。
『見タナ』
アブソーブデスはこちらを見ていた。
瞳の無い暗い二つの穴が真っ直ぐ俺を射ぬいていた。
「っつ!?」
その瞬間、俺は反射的に逃げ出していた。
「マス……きゃあっ!?」
「ーーーーー!?」
進路上に居たシアを抱え上げ、ネクタールを限界まで縮小し、自動生成ダンジョンの外に繋がる扉に向かって全力以上の速さで駆けていた。
「マスター敵が!」
「そいつらよりもっとヤバいのが来てる!!」
背後でアブソーブスケルトンたちが動き出した気配がするが、そんな物はどうだってよかった。
既にもっとヤバい気配が俺のすぐ背後にまで、いや、横まで来ている!
『知ルハ知ラレル、ダ』
「「!?」」
「間に合え!」
扉の前まで来た俺の横でアブソーブデスがその鎌を振り上げていた。
その身、その鎌から伝わる威圧感は、明らかに他の敵とは一線を画していた。
『マタ会オウ』
だが幸いにして俺の方が一足早かった。
鎌が振られるよりも早く俺は扉に触れることができ、『吸収する岩の神殿』から脱出することに成功していた。
「たす……かった」
「みたい……ですね」
「ーーー……」
そして助かったという安堵感からか、俺たちは揃って扉の前で地面に倒れ込むのだった。
実力については
アブソーブデス>『吸収する岩の神殿』のボス
となります。
12/26誤字訂正
12/27誤字訂正




