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「ブブン」
「うおうっ!?」
三匹いるアブソーブロットイトの内、一匹の姿が見えなくなった瞬間。
俺は反射的に短剣を盾のように構えていた。
そしてその反応が正しいように、俺のすぐ前に現れたアブソーブロットイトは本物の蝿には備わっていないであろう鋭い爪を振り上げ、俺に攻撃を仕掛けていた。
「ブブブン」
「ーーーーー!」
目の前に居た一匹目の姿が消えるのと同時に、奥に居た二匹目の姿が消える。
その瞬間にネクタールが短剣を構える。
直後、ネクタール越しに衝撃が走る。
見れば、二匹目のアブソーブロットイトが爪を振り下ろしていた。
「い、『癒しをもたらせ』『大地の恩寵をその身に』『力を和らげよ』!」
「ブブ……」
おまけにこの状況に慌てたのだろう。
まだネクタールがヘイトコントロールを始めていないのに、シアが支援魔法を使ってしまう。
そして、このタイミングで三匹目のアブソーブロットイトに僅かだが動きが見えた。
シアの支援は嬉しいが、これは……拙いな。
「ネクタール!」
「ーーーーー!!」
「ブブッ!?」
ネクタールの身体が大きく広がる。
大きく広がって、俺が今居る部屋の入り口部分に完全に蓋をかけ、物理的にアブソーブロットイトたちが部屋の外に出れないようにする。
直後にネクタールの身体にアブソーブロットイトが衝突。
多少の不快感を感じつつも、部屋の外にアブソーブロットイトが出るのを阻止する。
「マスター!」
「このまま戦うぞ!支援を頼む!!」
「は、はい」
状況が変化したためだろう。
三匹のアブソーブロットイト……アブソーブロットイトLv.25、Lv.25、Lv.27は俺の手が届かない部屋の奥に移動し、こちらの様子を窺っている。
「「「ブブブ……」」」
「……」
俺の現在の残りHPはおおよそ75%。
どうやら反射的な防御では完全に攻撃を防ぐ事は出来ていなかったらしい。
既に回復は始まっているが、あのまま攻められていたら危なかったな。
「マスター……あの、この状況からどうすれば……」
「さて、どうするべきだろうな……」
現在の状況は、俺が部屋の入り口でネクタールを広げる事で、アブソーブロットイトの部屋外への移動を防いでいる状態だ。
それはいい。
今居る小部屋の中ならまだしも、シアが居る広場をあの速さで縦横無尽に飛びまわられたら、マトモな反撃が出来るかも怪しいぐらいだ。
「「「ブブブブブ……」」」
だがこのまま待っていても、アブソーブロットイトたちを倒す事は出来ない。
アブソーブロットイトたちは俺の手が届かない位置で滞空しているからだ。
しかし、部屋の広さも、ネクタールで埋め尽くしながら奥へと進めるほどではない。
つまり、奥に進もうとすれば、必然的にアブソーブロットイトたちを部屋外に出す危険性を負う事になる。
後はネクタールを俺から分離させて入口の封鎖を任せ、俺単身でアブソーブロットイトたちに突っ込むという手もあるが……これは一方的に俺がなぶられて終るだけだろうな。
「とりあえず何度か試すか。シア、HPの管理は頼む」
「は、はい」
まあ、やれるだけの事をやるしかない。
と言うわけで、俺はネクタールで入口を塞いだまま、何時でも斧と短剣を振れるように構える。
そしてアブソーブロットイトたちの一挙手一頭足を見逃さないように集中。
狙いは言うまでもなく迎撃。
相手が仕掛けてきた瞬間に反撃をする事で倒すつもりである。
「……」
「「「ブブブブブ……」」」
三匹のアブソーブロットイトたちは耳障りな羽音を立てながら、円軌道を描くように滞空している。
その羽音は本来ならば俺の精神をかき乱すような物であるのだろうが、今の俺にはそんな羽音に割いている余裕はない。
なにせ一瞬でも判断が遅れれば、俊足の三連撃を喰らうのが今の状況。
必要のない情報は全て切り捨てる。
ただ三匹の動向にのみ気を払い続ける。
「ブ……」
「ふっ」
一匹目の姿が消えた瞬間。
俺は斧を振り抜いていた。
「ブブーン……」
「「ブブブ」」
「ぐっ!?」
一匹目のアブソーブロットイトに斧が当たり、そのHPバーを目に見えるレベルで減らしつつ、吹き飛ばす。
だが、その直後に残り二匹のアブソーブロットイトの爪が俺の身体を引き裂き、こちらのHPも目に見えて減る。
「回復します!」
背後でシアの回復が始まる。
アブソーブロットイトたちは再び俺から離れ、部屋の奥でこちらの様子を窺い始める。
ダメージを与えたアブソーブロットイトのHPに自然回復の兆候は見られない。
これならば、反撃のタイミングを間違えない限りは、何とかなりそうではある。
「「「ブブブブブ……」」」
「すぅ……はぁ……」
そう、反撃のタイミングを間違えなければだ。
相手は特性:アブソーブ持ち。
迎撃に失敗すれば、俺のHPを吸収して回復してしまう。
だからとにかく集中しなければならない。
まずは一匹確実に潰す事だけを考えなければいけない。
「さあ、来い。叩き潰してやる」
俺は視界の端に濃厚な紅いオーラが漂っている事を無視して、再び構えを取る。
12/25誤字訂正




