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AIOライト  作者: 栗木下
3章:右角山
171/621

171:37-1-D11

【AIOライト 37日目 08:00 (満月・雨) 『防御力溢れる清流の船』】


 第四階層はボス部屋以外に何も無いようだった。

 と言うのも、第四階層に降りた直後に他の扉よりも豪勢な上に、人が五人程度横並びになって入れるような南京錠付きの扉が有ったからだ。

 そして他には通路も窓も一切なかった。

 つまり挑むしか無いという事である。


「さて、全員準備は良いな」

 馬型ホムンクルスであるナクーに跨り、兜の上に鳥型ホムンクルスであるヘジャを乗せたトロヘルの言葉に、俺たちは揃って頷く。


「アライアンスはきちんと繋がっている」

「HPとMPも問題なし」

「アイテムの数に事前のバフも問題なしだ」

 番茶さんの言うとおりアライアンスはきちんと繋がっていて、俺は畳んでしまっているが、プレイヤーによっては二十本以上のHPバーが見えているだろう。

 そして、しっかりと休息を取ったので、それらのバーは全て満タンになっているはずである。


「よし、なら全員構えろ」

 アイテムも問題ない。

 昨日無くしてしまったガードデーモンナイフは再作成してあるし、リジェネメディパウダーのような回復アイテムは十分に残っている。

 バフについても、シアが今朝作ってくれたリジェネデーモンパイ……ガードデーモンの角と回復力溢れる小麦粉で作ってくれた料理とシア自身の魔法、それにアライアンスに所属している面々による各種支援魔法が盛られており、かなりの数に及んでいる。

 なので、俺個人で見ても戦闘能力はかなり向上していると言えるだろう。


「突入開始!」

「「「おおおおおおぉぉぉぉぉ!」」」

 そうして俺たちはボス部屋に突入した。



----------



「さて……何が来る?」

 ボス部屋は船の最下層、貨物室として使われていそうな部屋だった。

 部屋の天井は他の階よりも明らかに高く、3メートル以上は確実にある。

 部屋の幅と奥行きもかなりのもので、部屋の奥は暗闇に包まれて見えないが、それでもトロヘルがナクーを全力で走らせても問題なさそうだった。

 床はコンクリートあるいは金属。

 障害物になりそうなのはコンクリートの柱に、一部へこんだ床に溜まっている水たまりか。

 と、よくよく見れば、水たまりに船の揺れとは別に波紋が立っている場所があるな。

 どうやら一部に外の雨が吹き込んでいる場所もあるらしい。


「どんなボスだろうね。師匠」

「さて、どんなのだろうな?」

「どんなのが来ても、まあ、どうにかはなるだろうさ」

「だといいんですけどね」

 妙な音はしない。

 雨音を除けば、何処かで水が滴る音がするぐらいだ。

 臭いや振動の類も感じない。

 んー……とりあえず大型は無さそうな気がするな。


「前衛はしっかり頼むわよ」

「ああ、相手が何であれ、前衛が抜かれたら、アタシたちは薙ぎ払われるだけだ。だから頼む」

「頑張ってくださいね。マスター」

「ああ、勿論だ」

 まあ、いずれにしても今回の相手は特性:ガードの持ち主。

 俺たち前衛の役割はボスの足止めで、攻撃の主力はグランギニョルたち魔法攻撃組になる。

 これは事前の打ち合わせ通りでもある。


「さて、そろそろだな」

「「「……」」」

 槍を構えながら呟いたトロヘルの言葉に合わせるように、俺たちも体勢を整える。

 俺は斧と短剣を構え、腰を僅かに落とす。

 シアは杖を両手で持って、意識を集中させ始める。

 シュヴァリエは真剣な顔つきで細剣を構え、全身の毛を逆立てたヴィオはその左肩で紫色の稲光を放出する。

 ジャックさんはスカルペルとフォルセップの二体を宙に浮かべて、自身も短剣を構える。

 ロラ助も刀を構え、ヴィエントとブリサを後衛組に合流させる。

 ブルカノさんは手を何度か開け閉めした後、爆弾を両手に握る。

 グランギニョルは本を開き、何時でも起動できるように身構えている。

 これで何時戦闘が始まっても大丈夫だろう。


「ウフ……」

 そして暗闇の奥からそれは姿を現す。


「ウフフフフ……」

「「「グルルル……」」」

「こいつは……」

 八本ある青黒い蛸の足は艶めかしく動き、吸盤を器用に使う事で陸上でも安定して移動できるようだった。

 腰から生えた犬の頭は三つ、そのいずれからも唸り声と唾液が漏れ、鋭い牙が見えている。

 腰から上は最低限の衣装だけを身に付けた長髪の女であり、その顔には妖艶かつこちらを見下すような表情が浮かんでいる。

 名前は『防御力溢れる蛸狼女の王』Lv.20。


「ま、レア度:2なら当然か」

 だが現れた敵は『防御力溢れる蛸狼女の王』だけではない。

 背後の暗闇の中から、次々と狼型のモンスターであるガードウルフLv.20たちが現れて来ている。

 その数は……10は確実に居るか。

 なるほど、流石はレア度:2のダンジョン、アライアンスによる数の暴力だけで倒させる気はないらしい。


「さあ、全員構えろ!」

「ウフフフフ……」

 俺たちは改めて体勢を整える。

 対する『防御力溢れる蛸狼女の王』とガードウルフたちも陣形を整える。


「行くぞ!」

「「「おおおおおぉぉぉ!」」」

「アハハハハッ!!」

「「「グルアアアァァァァ!!」」」

 そしてまるで示し合わせるように俺たちもボスたちも動き出し、戦いが始まった。

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