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異世界愛の劇場〜とある王家の日常〜  作者: 悠木 源基


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第11章 お茶会

最終章です。


「先ほどの私のダンス、ずいぶんと上達していたでしょう? クリスティナ様のおかげですわ。

 卒業パーティーや、披露宴で貴方と素晴らしいダンスを披露できるようにと、厳しく指導して頂いたので」


「ああ、素晴らしかった。そうか、クリスティナ夫人が指導してくれていたのか。感謝しなければだね」


「彼女も貴方に感謝されていましたよ。良い方を紹介してもらったおかげで、今幸せだと。

 マーシャル様は本当にあちらこちらで人助けをしていますよね。

 まあ、私もその助けられた人間のうちの一人ですが」


「貴女もそうでしょう?」


「私は王族として当然のことをしてきただけですわ。

 それはそうと、アルゾン殿下(姉の夫)が今度貴方に勲章を授けてくださるそうですよ。結婚式には勲章がたくさんあった方が様になるだろうからって。

 すでにたくさんお有りになるからもう結構ですと、貴方の代わりにお断りしたのですが、どうしても受け取って欲しいと言い張って。聞いてもらえませんでした。

 もう貴方の正装に余計な物を飾るスペースなんてないというのに」


 リシェルが困ったように苦笑いを浮かべながら言った。するとマーシャルは不思議そうに首を捻った。


「なぜ私に? 私が何かしましたか? もしかして合同訓練の事件の件ですか? あれから二年以上経っていますが……」


 すると、なぜがリシェルは困惑した顔でこう言った。


「名目上はその件のようですが、本当のところは、アルゾン殿下の個人的な感謝の気持ちであるらしいですわ」


「個人的?」


 ますます分からないという顔をした彼に、彼女はこう告げた。


「お姉様が筋肉好きだということを教えて貰ったおかげで、結婚ができて幸せだし、国も潤っているからって。

 なぜアルゾン殿下が筋肉を付けられたのかずっと不思議に思っていたのですが、マーシャル様が姉の好みをお伝えしたからだったのですね」

 

「伝えたというか……

 お見合いのためにこの国の王宮にいらした時、アルゾン殿下はキャスリィー殿下に一目惚れされたのですよ。

 でも、婚約が成立して手紙のやり取りを始めても、王女殿下からは熱が感じられなくて、他に好きな相手がいるのではないかと、こっそり調べたらしいのです。

 そしてその調査をした者が、コルトン伯爵令息と親密な関係のようだと報告したようなのです」


「それって、ゴードル様のことでは?」


「はい。殿下の幼なじみだった私の兄のことだと思います。

 しかし、アルゾン殿下は我が国の建国祭にいらしたとき、王女殿下の思い人が私だと確信されたのです。

 自分で言うのは口幅ったいのですが、私の見た目が()()なので。

 キャスリィー殿下がお好きだったのは私や兄ではなく、フォレスター伯爵だったのですが。

 そしてその後、アルゾン殿下から私に身の程を知れとか、近付くなとか手紙が届くようになったのです」


「それって脅し?」


 リシェルが目を剥いた。まさかあの温和で人の良さそうな義兄がそんなことをするなんてと驚愕した。


「ええ。そのとき、私はまだ十二歳でどう対処していいか分からず、兄に相談したのです。

 そうしたら兄が、キャスリィー殿下は筋肉マッチョ好きだという話をしてくれたので、それを手紙に認めたというわけです。

 私はキャスリィー殿下のお好みから外れていますから、勘違いしないでくださいと」

 

「つまり勲章は褒美とか礼ではなくて、謝罪という意味で授与されるのですね?」


「それと、キャスリィー王太子妃殿下への口止めのためでしょうね」


 リシェルとマーシャルは思わず顔を見合わせた。

 そして、どちらからともなく小さく頷き合った後、ゆっくりと紅茶を飲み、姉の嫁ぎ先から贈られたリンゴを使って作ったアップルパイを食べた。


(今回も甘ずっぱくて美味しくできたわ)


 リシェルは自画自賛した。マーシャルも幸せそうに笑みを浮かべていた。


(このリンゴをもっと安く輸入できたら、庶民もこんなパイを食べられるようになるわよね。

 いいえ、そのまま食べてもおいしいし、体にもいいはずだわ。

「一日一個のリンゴは医者を遠ざける」ということわざもあるし……)


 二人はそろってそんなことを考えていた。

 

「ねぇ、マーシャル様。お礼をするなら、相手が喜んでくれるものを贈らないと意味がないわよね?」


「ええ。そうですね。私は勲章など望んでいません。頂くならもっと別のものがいいですね」


「本当よね。だから私が貴方の代わりにアルゾン殿下そうお伝えしておくわ。

 ()()()()()()()()()()とおっしゃるのでしたら、事前にこちらの要望を尋ねてくださいって……」


 つまり丁寧な脅しである。


(やられたらやり返す。それくらいの駆け引きができなければ、将来女王として諸外国と張り合えないわ。

 それにそもそも私は一人ではない。今までもそうだったし、間もなく結婚をすれば誰よりも強くて優秀な私の愛する夫マーシャルが、いつも隣に立ってくれる。何も怖くないわ)


 婚約者にだけ見せるマーシャルのその美しい笑顔を見つめながら、リシェルもまた彼と同じくらいに美しく微笑んだのだった。


 




最後まで読んてくださってありがとうございました。

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