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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第2部 無王の海

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第22話 自由圏の亀裂

 外洋契約が成立して三日。


 南港区は、静かに動いていた。


 黒潮船団は去り、連合艦隊も距離を取っている。


 港は守られた。


 だが――


 広場の空気は、どこか張り詰めていた。


 掲示塔の前に、人々が集まっている。


 新しい契約。


 新しい秩序。


 それを見つめながら、誰もが計算していた。


 その時、ダリオが前に出た。


「この契約は歪んでいる」


 静かな声だった。


 だが広場が一瞬で静まる。


「連合と組む」


「黒潮とも契約する」


「それで自由か?」


 誰も答えない。


 ダリオは続ける。


「これは混ざりすぎだ」


「自由はもっと純粋であるべきだ」


 リシェルが言う。


「純粋な自由は、脆い」


「だから補強した」


 ダリオは笑う。


「補強?」


「それは管理だ」


 広場がざわめく。


 確かに。


 連合の関与は小さい。


 だがゼロではない。


 黒潮の契約もある。


 完全な自由ではない。


 アレクシスは静かに言う。


「完全な自由は、港を守れなかった」


 ダリオの目が細くなる。


「だからといって」


「自由を削る理由にはならない」


 沈黙。


 セリアが口を挟む。


「自由は利益を生まないと続かない」


「この契約は利益が出る」


 ダリオは彼女を見る。


「だから何だ」


「儲かれば正しいのか?」


 セリアは肩をすくめる。


「続くものが正しいのよ」


 リシェルが言う。


「続くためには、選択が必要」


 ダリオが笑う。


「選択?」


「これは選択じゃない」


「妥協だ」


 その言葉に、数人が頷く。


 広場の空気が揺れる。


 契約成立からまだ三日。


 だがすでに亀裂が入っていた。


 ダリオは掲示塔に近づく。


 端末に手を置く。


「俺はこの契約に署名しない」


 静かな宣言。


 掲示塔の数字が一つ減る。


 ざわめきが広がる。


「離脱するのか」


 誰かが聞く。


 ダリオは頷く。


「自由圏は契約で繋がる」


「なら契約を拒否する自由もある」


 正しい。


 それがこの世界のルール。


 アレクシスは言う。


「それでどうする」


「別の契約を作る」


 ダリオは海を見た。


「もっと純粋な自由だ」


 その言葉の意味を、全員が理解した。


 黒潮。


 あるいは別の港。


 別の秩序。


 リシェルが静かに言う。


「分裂は弱体化を招く」


 ダリオは笑う。


「それも自由だ」


 広場が静まり返る。


 契約で繋がる世界は。


 契約で分かれる。


 アレクシスは掲示塔を見つめる。


 秤が揺れている。


 安定したはずの構造が、もう揺らぎ始めている。


 セリアが小さく呟いた。


「市場も分裂ね」


 リシェルは目を閉じる。


「これは始まりです」


 アレクシスは海を見た。


 遠くの水平線。


 まだ見えない何かが、そこにある気がした。


 自由は繋がる。


 だが同時に、分かれる。


 そして秤は――


 再び、大きく揺れ始めた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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