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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第2部 無王の海

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第20話 秤の三者

 停戦の旗が海に上がった。


 黒潮同盟の旗艦と、南港区の船団の間に、白い帆が進み出る。


 連合哨戒艦隊。


 その中央の旗艦が、静かに両者の間へ割って入った。


 戦いは終わった。


 だが決着はまだついていない。


 海の中央に、小さな中立空間が生まれる。


 そこに三つの船が並んだ。


 黒潮旗艦。

 南港区代表船。

 連合旗艦。


 三者会談。


 波の音だけが響く。


 黒潮旗艦の甲板。


 提督カイロンが現れる。


 外套を揺らし、ゆっくりと歩く。


「見事だな」


 彼は言った。


「力で勝てない戦いを、別の方法で止めた」


 その視線の先に、セリアがいる。


 彼女は軽く肩をすくめた。


「あなたが合理的で助かったわ」


 カイロンは笑う。


「俺は損をしないだけだ」


 その時、連合旗艦からアレクシスが現れる。


 三人が海の上で向き合う。


 秩序。

 自由。

 市場。


 三つの文明が、同じ場所に立った。


 しばらく沈黙。


 最初に口を開いたのはカイロンだった。


「さて」


「この港はどうする?」


 単刀直入。


 アレクシスが答える。


「戦争は終わった」


「次は構造の話だ」


 カイロンは笑う。


「いい言葉だ」


「だが構造は力で決まる」


 リシェルが口を開く。


「いいえ」


「構造は選択で決まる」


 セリアが続ける。


「構造は利益で決まる」


 短い沈黙。


 三人の視線が交差する。


 カイロンが肩をすくめた。


「全部正しいな」


 そして海を指す。


「だから世界は面白い」


 彼は提案する。


「この港、共同管理にしないか」


 広場がざわめく。


 アレクシスが問う。


「どういう意味だ」


「簡単だ」


 カイロンは言う。


「俺たちは襲わない」


「代わりに航路の一部を使う」


 リシェルが眉をひそめる。


「それは支配では?」


「違う」


 カイロンは即答する。


「契約だ」


 セリアが口を挟む。


「利益配分は?」


「港の交易の一部をもらう」


 数字の話に変わる。


 戦争は終わり、交渉が始まる。


 アレクシスは考える。


 連合の秩序。


 自由圏の契約。


 黒潮の力。


 どれも完全ではない。


 だが組み合わせれば。


「条件がある」


 アレクシスが言った。


 三人が彼を見る。


「航路の安全は共同で保証する」


「港の自治は維持する」


「市場は開く」


 リシェルが小さく頷く。


 セリアが笑う。


「いいわね」


 カイロンはしばらく黙った。


 そして笑う。


「面白い」


 彼は手を差し出した。


「契約成立だ」


 その瞬間。


 海の秤が、大きく揺れた。


 恐怖でもなく。


 完全な自由でもなく。


 完全な秩序でもない。


 三つが交差した、新しい形。


 アレクシスはその手を取る。


 リシェルも、セリアも頷く。


 戦争は終わった。


 だが――


 文明は、ここから始まる。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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