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婚約破棄?結構です。では国家運営は自己責任で ~辺境が黒字化したら王都が困り始めました~  作者: 雪乃フィオナ
第1部 秤の王国

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第33話 軍需統一法案

 議場の空気は、前日よりも重かった。


 本日、正式に提出される。


 ――軍需帳簿全国統一法案。


 壇上に立ったのは、エリアス・ノルデン。


 若い声は、やや緊張を帯びている。


「本法案は、全国の軍需帳簿を統一形式とし、倉庫番号を共通化、緊急承認の即時記録を義務付けるものです」


 ざわめき。


「目的は単純です。補給の遅延をなくすこと」


 議場後方で、侯爵派が腕を組む。


「戦場は帳簿を待ちません」


 視線がルーファス・オルデン侯爵へ向く。


 ゆっくりと、彼が立ち上がった。


「質問がある」


 低く、よく通る声。


「帳簿統一は理解できる。だが、地方裁量の拡大と結びつける理由は何だ」


 エリアスが言葉に詰まる。


 アレクシスが一歩前に出る。


「理由は責任の所在です」


「責任?」


「現場に裁量がなければ、失敗は全て中央のせいになる」


 議場が静まる。


「裁量と責任は対です」


 侯爵は目を細める。


「地方が誤れば、誰が尻拭いをする」


「中央です」


 即答。


「ですが、誤りの原因は明確になります」


 静かな火花。


 侯爵は一歩踏み出す。


「あなたは地方分権を望んでいる」


「望んでいません」


「では何を望む」


 視線が集中する。


「機能です」


 短い言葉。


「補給が届く。兵が戦える。住民が飢えない」


 拍手が一部から起きる。


 だが侯爵は止まらない。


「情報公開は敵に弱点を晒す」


「公開範囲は限定します」


「例外が増える」


「例外は記録します」


 言葉が交差する。


 やがて侯爵が言う。


「若者よ」


 エリアスを見た。


「理想に酔うな」


 議場がざわつく。


 エリアスは顔を赤くする。


「理想ではありません!」


 声が上ずる。


「現実を変えるのです!」


 瞬間、アレクシスが低く制した。


「感情を上げるな」


 小声だが鋭い。


 議場は戦場だ。


 怒りは武器にならない。


 王太子が初めて口を開いた。


「侯爵」


 静寂。


「あなたは中央集権を守りたい」


「当然です」


「だが、中央が機能しなければ意味がない」


 視線が交差する。


 王太子の声に迷いは少ない。


「補給遅延は事実だ」


 否定できない。


「私は、改善を選ぶ」


 完全な支持ではない。


 だが方向は示した。


 侯爵はゆっくりと座る。


「ならば修正案を出そう」


 静かな宣言。


「公開範囲を縮小し、特権倉庫は段階的廃止とする」


 完全勝利ではない。


 妥協だ。


 議場は再び揺れる。


 アレクシスは、わずかに目を伏せた。


 想定内。


 だが、痛みはある。


 理想通りには進まない。


 議場は、帳簿よりも複雑だ。


 そして今、戦いは始まったばかりだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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