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83 ダホン


 俺は厩舎に戻ると階段を駆け上がる。

 部屋ではティリーとルナが掃除をしていた。俺は部屋の外にルナを呼び出す。


「ルナ、ちょっといいかい?」

「なに?」

「街までは、その、ダホンといっしょに?」

「ダホンと? うん」

「マジか……」


 少し原作と流れが違う。原作ではダホンは他の用事があり、ルナが一人で初仕事に来ていた。


 ……違う用事?


 まさかこっちの地方に用事があったとかいうオチかよ……。



 もう少しゆとりがあると思っていただけに、頭が混乱する。くっそ。まだ何も準備はしていないのに。

 俺が必死に対応を考えていると、ルナが心配そうに聞いてくる。


「ダホンが来たの?」

「おそらく、だけどルナが朝まで帰ってこないんだ。普通は様子を見に来るだろ?」

「……そうね」


 ルナは俺の言葉を肯定するとそのまま俯いてしまう。下を向くルナを見つめながら、どんな心境なのだろうと考える。クールなダウナーキャラとはいえ、この事態には冷静ではいられないだろう。


「私……」

「ルナは何も考えるな、大丈夫だから」

「でも、ダホンが来た」

「大丈夫。……大丈夫だって」


 とは言うものの……。罠も何も作ってない。スコットだって戻ってきていない。

 やっぱり俺がやらないと……。


 現状俺の力をもっとも引き出せるのはあのダンジョンだ。元々はダホンと戦うのにあのダンジョンを使えないかとずっと考えていた。

 ううむ……。だが、ダンジョンまでは少し距離もある。今のこの状況でダンジョンまでは、行けるのか?


 


 ここで、戦う?


 顔を上げるとハティと目が合う。多分何かあればハティも戦いに加わるだろう……。ダホンとの戦いに巻き込んで良いのだろうか……。

 当然良くは無い。



 やはりここでは駄目だ。となると裏口から出て走って山に向かうか……。ダホンはルナを追ってくる。当然ルナ連れて行く必要はある。ルナは多分俺について来れる身体能力もあるだろう。 


 やるしかない。


「ルナ、すぐここを出よう」

「どこに?」

「ちょっと山の方に」

「……わかった」


 鎧や装備は俺の部屋か……。


「ハティ、剣を貸してもらって良いか?」

「……駄目」

「いや、ホント、ちゃんと返すからさ」

「だから駄目」

「えっと……」

「私も行く」

「いや、ほら……。やばいやつなんだって」

「行く」


 ぬぬぬ……。なんて強情なんだ。この分だと俺とルナで山に向かってもついてくる。


 ……。


「わかった。無茶はするなよ」

「無茶はラドでしょ」

「しないって。……なあ。俺とルナとハティの三人で馬って乗れる?」

「私達三人? 全然平気だよ」

「そうか……」


 本当はハティの索敵能力は結構必須だ。来てくれることに少しホッとしている自分に気が付き苛立つ。


「くっそ」

「私は大丈夫だよ」


 ハティもこれに巻き込む。何かあったらティリーにも顔向けは出来ない。そしてどうやらハティは俺のそんな気持ちを察してる。

 

 ……良いのかこんなんで。


 それでも悩む時間すらない。いい加減腹をくくろう。俺も、ハティもルナも、全部。全部守る。やる。必ず……。


 言い訳がましいが、ずっと一人でなんとかする案を考えようとしていたんだ。


 ……やってみよう。もうそれしか俺には思いつかない。


「ティリー。ちょっと三人で買い物に行ってくる」

「買い物、ですか? あ、ベッド?」

「じゃなくて、ほら、生活用品とか」

「でもお屋敷に色々あるんじゃないですか?」

「ああ、うん。まあ、でもちょっとね。片付け頼んで良い?」

「はい。大丈夫ですよ」


 俺はハティとルナの二人に小さく頷くと、一階に降りる。階段を降りるとハティが俺に近づいてくる。


「どこに行くの?」

「ダンジョンで。あそこで迎え撃つ」

「……魔法たくさん撃てるもんね?」

「ああ、あそこが多分一番有利に戦える」

「うん、急ごう」


 ハティもことの重大性を感じたのだろう。少し厳しい顔で返事をする。そしてすぐに鞍を探して馬に装着し始める。見れば鞍はいつものタンデム用ではなく、荷物を運ぶような凹凸のない平らな感じの鞍だ。


「それは?」

「二人乗りのは間が膨らんでいて三人はキツイでしょ?」

「なるほど……。ルナもいい?」


 俺がルナに尋ねると、ルナは少し悩みながら答える。


「本当に良いの? 二人とも」

「良いも何も、ラドは言い出したら聞かないよ。ホント頑固でワガママお坊ちゃまだから」

「おーい。言い方……」

「違う?」

「うーん。違うと否定はしたい」

「ははは」


 まったく、いい子じゃないか。


「本当に……」

「気にしない。ね。さ、乗って」


 ハティ、ルナ、そして最後に俺が馬に乗ると、ハティは鐙を軽くふむ、そして馬は走り出し厩舎を飛び出す。


「ハティ!」

「なにっ!?」

「変な感覚が強くなったら教えてっ」

「分かった!」


 俺達はそのまま館の門をくぐり、いつもの山の方面に向けて馬を走らす。


「どう?」

「やっぱり同じ。ついてきてるかな?」


 俺は振り向いて後ろを見ると、後ろの方で一頭の馬がついてきているのが見えた。あれか……。遠くからじゃその表情は分からないが、明らかに俺達に目を向けている。


 原作では、突然エリックに弓を放ってくる。そのすべてを避けられたダホンはエリックの才能に魅入り、エリックに死にたくなければ自分の下で働けと言う。


 今は三人で馬に乗ってる。ここで弓を射られたらかなりやばいと思うが、きっとそれはない。ダホンはルナも取り返そうとするんだ。矢が俺を貫いたら、そのまま前にいるルナも貫くだろう。


 それならこのままダンジョンまで引っ張ってやる。



 俺は脳内でぐるぐるとダホンとの戦いのシミュレーションを始めていた。

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