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Element Eyes  作者: zephy1024
第十二章 学園制服編
200/327

200.制服-Uniform-

1991年7月8日(月)AM:8:34 中央区西七丁目通


 曇り空の中、スーツ姿で車に乗っている男二人。

 角刈り気味で黒髪の笠柿(カサガキ) 大二郎(ダイジロウ)

 人の良さそうな柔らかい顔の西田(ニシダ) (カオル)だ。

 西七丁目通から脇の小道に車を進める。


「住所的にはこの当たりのはずなんだがな」


「本当に話しを聞くだけなんですよね?」


「あぁ、そのつもりだぜ」


 六月六日の最初の事件。

 怨恨の線を中心に、様々な方向で捜査が進められていた。

 その中で少し前に発覚した事実。


 最初の被害者を含む三人の女性。

 彼女達から虐められていた男性同僚の存在。

 しかし、会社側が非協力的だった。

 その為、捜査は難航している。

 残りの二人の女性は現時点では誰かは不明。


 虐めについても、発覚したのは偶然だ。

 最初の被害者が、取引先で自慢するかのように話していた。

 男性の方も、三ヶ月程前に既に退社している。

 なのでこうして、二人が当時の話しを聞く為に訪れていた。


 警察手帳に書かれている住所。

 アパートを見つけた二人。

 車から降りた笠柿と西田。

 階段を上がり、該当の部屋番号を確認していく。

 彼の部屋は一番奥だった。


 ふと、落下防止用の手摺を見た笠柿。

 雑巾が掛けられている場所。

 左と右で、色合いが違う事に気づく。

 しかし、何故色合いが違うのかという事までは考えなかった。

 彼がそんな事を思っている隣の西田。

 何度かインターホンを押すが反応は無い。


「不在なんでしょうかね?」


「かもしれんな」


 そう思った矢先、扉の奥から足音が聞こえてきた。

 僅かに開かれた扉。

 チェーンが掛けられているのがわかる。

 相手の瞳は少し血走っていた。


 笠柿は彼に何か違和感を感じる。

 本人はそれが何か理解していない。

 だが、悪友(ミツイ)のような異能者と接する機会が多かった。

 その影響だと後で気付く事になる。


「こうゆうものだ」


 相手に見えるように手帳を翳す笠柿。


「六月上旬でしたっけ? あの事件で話しを聞きにきたって事ですかね?」


「そうだな。時間はあるか?」


「わかりました。汚い部屋ですけど、中でいいですか?」


「はい。ありがとうございます」


「それじゃチェーンをはずすので、一度閉めますね」


 少し安堵している表情の西田。

 自分が感じた違和感を考える笠柿。

 二人は、それぞれの理由で反応が遅れた。

 勢いよく開かれた扉、その後に飛んできた何か。


 咄嗟に、飛んできた何かの進路上から退避する二人。

 勢いで戻る扉に、一瞬視界が塞がれる笠柿。

 視界には、飛んできたと思われるズタズタの人形。

 その顔が見えた。


 次の瞬間、吹き飛ばされた西田。

 笠柿の視界に入ってくる。

 手摺にぶつかる西田。

 そのまま手摺毎落下していった。


 雑巾が掛けられた所から、手摺が外れたのだ。

 落下音と逃げようとする男。

 彼に体毎ぶつかる笠柿。


「生きてるかぁ? 西田ぁ?」


「つぅ。だ・大丈夫です」


 突き飛ばされた男。

 即座に立ち上がる。

 手に持っていたナイフを振り回す。

 ナイフの切先が赤熱化していた。

 まるで高温で焼いたようだ。


「くそ。話しを聞きにきただけなのに、まさかの当たりなのか?」


 素人の出鱈目な攻撃。

 しかし、狭い場所ではやっかいだ。

 振られた横薙を躱したつもりだった。

 左脇腹に一筋の痛みが走る。

 よく見るとナイフの切先が橙色に伸びていた。


「低能力の異能者なのか? くそったれ」


「お・俺は悪くないんだ。悪いのはあいつらだ。あいつらが悪いんだ。だから鉄槌を下したんだ。ブラッドシェイクが力を授けてくれる薬をくれたんだ」


 まるで泣き言のようだ。

 妄言を繰り返す。


「後一人なんだ。だから、こんな所で捕まるわけにはいかない。どけどけぇどけぇぇぇ!!」


 殺意も辞さない目。

 笠柿を睨む男。

 突き出されるナイフ。


 しかし、仮にも笠柿は刑事だ。

 あっさりと突き出した手を押さえる。

 捻られた手からナイフを取り落とした。


 押さえつけられた男。

 諦めたようだ。

 手錠する前から、抵抗と妄言をやめている。


「笠柿さん、すいません。大丈夫ですか?」


 背中を押さえている西田。

 階段を上ってきた。


「いや、気にするな。あんなの俺だって気付かないと思うぞ。こいつが仕掛けたトラップなのか、偶然なのかは知らないが。そんな事よりもお前の方こそ大丈夫か?」


「ちょっと背中打ちましたけど、大丈夫です」


「そうか。それじゃ報告の上でこいつ連れていくか」


 背中をさすりながら西田は車に歩いていく。

 男を立たせた笠柿。

 彼に続くように歩き始めた。


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1991年7月8日(月)AM:9:01 中央区精霊学園札幌校中等部一階


 先導する山中(ヤマナカ) 惠理香(エリカ)

 体育館にやってきた一年一組女子一同。

 二メートル程の衝立。

 いくつかの空間に仕切られている。

 衝立の奥を除く事は難しい状態だ。


 出席番号順に、二名ずつサイズ調整する。

 惠理香の事前説明。

 銅郷(アカサト) (アン)とアルマ・ファン=バンサンクル=ソナー。

 二人を惠理香が連れて行く。


 残った十七名。

 準備されている長椅子に、出席番号順に座った。

 何の迷いもなく十七名が座る。

 事前に説明されていたからだ。


 惠理香に紹介されたダウンスタイルの黒髪の女性。

 案内されるまま歩く杏。

 アルマの担当はアップスタイルの黒髪の女性だった。

 衝立で囲まれた一角に案内される杏。

 そこにはセーラー服を着せられたマネキンが置いてあった。


「左が夏服。右が冬服になります」


 案内をしている女性が説明する。

 夏服は半袖の白い上着。

 曲線の紺襟紺袖に白の二本のライン。

 赤色のスカーフに紺のブリーツスカート。


 冬服は紺の上着で長袖に変わっている。

 生地が夏服より厚めのもののようだ。

 一般的な学生の着用するセーラー服に見える。


 もちろん違うところもあった。

 襟と袖の二本のライン。

 外側に一定感覚で半円状になっている場所がある。


「それではサイズの調整をしますので、着替えをお願いしますね」


 右側のテーブルに置かれているビニール袋。

 その一つを渡された杏。

 中には夏用の制服が入っている。


「着替えはこちらでお願いします」


 更に奥に案内された。

 同じように衝立で区切られている。

 誰かに見られる心配がないようになっていた。


「着替え終わりましたら、お呼び下さい」


 一礼をしてダウンスタイルの女性は側を離れた。

 受け取ったビニール袋。

 準備されていた長机に置いた杏。

 水色のブラウスと青色のスカートを脱いだ。

 下着の色は上下共に同じ水色。


 ボタン式で再利用可能なビニール袋。

 セーラー服を取り出す。

 上着が前開き式な事に気付いた。


 横開き式のより着るのに手間がかからない。

 その事に少しだけ嬉しい杏。

 夏用のセーラー服を上下とも着用し、スカーフを結ぶ。


「すいません。着替え終わりました」


 声を掛けると、すぐに先程の女性が現れる。

 どうやら近くに待機していたようだ。


「見た感じ、サイズは問題なさそうですが、着用なさった感じはいかがですか?」


「たぶん大丈夫だと思います」


「そうですか。念の為確認させて頂いてもよろしいですか?」


「はい、お願いします」


 杏の体に、手で触れたりして確認していく。

 その間、どちらも無言だった。


「問題ないようですね。冬服も同じサイズで調整してありますので、後ほどお渡しいたします。それではいくつか説明をさせて頂きますね」


 微笑んだ女性。

 杏も無意識に微笑み返した。


「はい、お願いします」


「先生から説明されている事もあるかと思いますが、特殊な糸を材料にしてますので、必要な道具と技術があれば、サイズの調整や色の変更、カスタマイズも可能になります。そうは言っても簡単に取得出来る技術ではありません」


「それじゃカスタマイズは無理って事ですか?」


「いえ、そんな事もないですよ。古川理事長のご好意により、私共は明日よりテナントスペースにてお店を開店いたします。洋服のお店ですね。最も学園の店舗ですので、一般的な服よりも学園で利用する服や、スーツ等がメインになります。そこで制服の色やサイズ調整も含めたカスタマイズも承る予定です。内容により調整期間は異なりますので、ご要望の際は、明日以降店舗に起こし下さいませ」


「そうなんですね。わかりました。説明ありがとうございます。あ、服は着替えた方がいいんでしょうか?」


「制服の着用は明日からと伺っております。なのでどちらでも構いませんよ」


「そうですか。どうしよう」


 どうするかしばし考える杏。

 しかし、長く迷う事もなく答える。


「着替えます」


「わかりました。それではその間に冬服とスクールコートをお持ちしますね」


 着替え終わる頃に戻ってきた女性。

 杏からセーラー服を受け取った。

 慣れた手付きで畳んで袋に仕舞う。

 夏服の入ったビニール袋。

 冬服の入っている手提げの紙袋に入れられた。


「それでは、皆様がお待ち頂いている所までご一緒します」


 セーラー服の入っている紙袋。

 コートの入っている紙袋。

 どちらも手提げがついている。

 女性が持ったままだ。


 紙袋を二つ持ったままの彼女。

 案内される杏。

 再び同級生達が待っている最初の区画へ戻った。

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