表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Element Eyes  作者: zephy1024
第十章 学園入学編
169/327

169.機上-Enplane-

1991年6月23日(日)PM:16:04 白石区ドラゴンフライ技術研究所六階


 液体の抜かれた、大きなカプセル。

 中に立っているのは形藁(ナリワラ) 伝二(デンジ)

 その手前の操作盤。

 金髪リーゼントに白衣の男とアラシレマ・シスポルエナゼムがいた。


 操作盤を操作する金髪リーゼントの男。

 前面のガラス部分が、上に持ち上がる。

 中にいる形藁が、ピクリち動いた。


 形藁は最初は首を何度も回す。

 その後、体を捻ったりし始めた。

 体の状態を確かめている。


 その様子を眺めているアラシレマ。

 体を動かしていた形藁。

 満足したように口を開いた。


「あーあーあーいーうー、石井(イシイ) 火災(カサイ)、生体人形の状況は?」


 若干掠れた声の形藁。


「あんたの注文通り仕上がってるぜ。まだ成長途中ではあるが、利用そのものはいつでも可能だ」


「兵隊は?」


「現在七百ちょいって数だな。予定日までには千百って所か」


「わかった。アラシレマ、奴等は?」


「監察官は学園、【獣化解放軍(ショウファジェファンジュン)】は研究所を予定通りしゅーげきーだよーん。前日にあーれーを渡す予定。例の薬にも溺れさーせたかーら、もーう言うなーりさー。あーと、雑種達が札幌に最近集結しーはじめーてーるよー」


「ヤミビトノカゲロウか?」


「わーかんなーいけど」


「念の為、芽を紡ぐべきか」


「あぁ、そーそー、アナイムレプがー、人間の子供達となーかよーしーみーたいだーからー、今度拒絶しーたらー、それーを使ってー従わせーるのーも手かーもねー。後ごとーちんが、勝手に部隊の一部をー学園にー入学さーせるみーたいだーねー」


「それは第二小隊とは別にか?」


「うんー、たーしか第四小隊と第六小隊だったーかーなー? あ、第五小隊も二名だー」


「戦力外小隊ならば構わないだろう。たまには、後藤の我儘も尊重しようじゃないか。他も予定通りか?」


「うーん、あ、忘れてた。ストリークスリートの話しだと、学園の機能が完全に発動するのは、七月一日からみーたいだーよー。たーだー、どーやーら詳細は知らさーれてーなーいみーたい」


「全てを把握しているのは古川(フルカワ) 美咲(ミサキ)、唯一人かもしれないという事か」


「そーゆーこーとーになるかーもね」


-----------------------------------------


1991年6月23日(日)PM:16:25 千歳市美々新千歳空港


「さすが三年前に開港した空港ですわよ。綺麗ですわよ」


 アイラ・セシル・ブリザードは、満面の笑みだ。

 周囲を見ながら歩いている。

 その行動に呆れてるオルガ・アレシア・マクタガート。


「降りた時も同じ事を言ってましたよ」


「そうでしかたしら? あれ? なんかおかしい気が」


「そうでしか・たしらじゃなくて、そうでした・かしらですね」


 オルガのいつもの指摘。

 少し恥ずかしそうに俯いたアイラ。

 その後も、時々言葉を間違ったり、わからなかったりした。

 都度、オルガの突っ込みが入る。


 既に何度も聞かされている内容もある。

 その為、少しうんざりしているオルガ。

 生真面目に相槌を打っている。

 時折、言葉の間違いを訂正していた。


 彼女はそれでも。搭乗口までの誘導をしっかりとしていた。

 アイラは一人で勝手に行動しかねないからだ。

 何とか時間前に搭乗口に辿り着いた二人。

 他の人達と同じように並ぶ。

 搭乗チェックを終わらせて乗り込んだ。


 彼女達が乗るのはエコノミークラス。

 エコノミーに乗ってみたいというアイラの要望。

 何故か通ってしまった形だ。


 当初はプライベートジェットを使う予定だった。

 だが、アイラの我儘で今の状態になっている。

 動き出す外の景色。

 徐々に高度を上げているのがわかった。


 気付けば、はしゃぎ過ぎたアイラ。

 喋り付かれたのだろう。

 静かに寝息を立てて、寝入っていた。


 思わず呆れたオルガ。

 周囲への警戒を常にしていた。

 彼女が一番懸念しているのは、襲撃される可能性だ。


 窓の外が雲と空だけになる。

 アイラの隣の、金髪の親子連れの二人。

 娘の方が、窓の外の景色に感嘆の声を漏らしている。


 他にも様々な声が聞こえている。

 それでもアイラは目覚める気配は無かった。

 なのに突然、アイラが目を覚ます。


「オルガ」


「はい。私も微かに感じました」


「眠っている間に終わらせたかったが、さすがだな」


 アイラの背後から聞こえてくる声。

 しかし不思議と、周囲の声は聞こえてこない。


「動けば大司教様の頭の中が、少し掻き回されるぜ」


 男の右手が、アイラの座っている座席。

 その背後に、右の掌を張り付かせていた。


「Barrier to block the sound」


「さすが大司教アイラ・セシル・ブリザード。その通り、今この中で何が起きても周囲に音は漏れない」


「結界を張ったのは、あなたとは別のようですわね」


「アマジャリカ・メッ・シャルニミュルンと、マソカ・インジャリュニュ・ヤヤルビャニュルの名に聞き覚えはあるだろ? 無いとは言わせないぞ」


「シャルニミュルンにヤヤルビャニュル・・・・いつぞやに・・Destroyed was・・・日本語で言う所の夜魔族(ヤマゾク)ですわね。それにしても、あなた日本語が随分堪能ですわね? 確か生き残りを保護したのがKnight of Japan、Samuraiと言うのでしたか? 復讐というわけですわね」


「そうだ。貴様は俺達の国を・・滅ぼした。その―報いを――」


 しかし彼の言葉はそこで止まった。

 まるで意識を失ったかのようだ。

 右手をだらんと垂れさせている。


 その後に、頭が弾かれる。

 軽く衝撃をうけたかのようだ。

 自席の椅子に凭れ掛かった。


「何故こうも無駄に、話しをしようとするのでしょうか? 無駄話しをしないでいれば、一度位は攻撃は出来たでしょうに」


「殺したのですか?」


「いいえ、殺すと後の対処が面倒ですしね。動けないように意識を喪失させただけですわ。もっとも目覚めた所で、二度とまともには体は動かないでしょうけど。それでもう一人は?」


「ご心配なく。眠って頂きました」


 男が意識を喪失した。

 その後、オルガの斜め前の席にいる女性。

 赤茶髪に褐色肌の彼女が、深い眠りに陥っていた。


「オルガ、連絡をお願いしわすわね」


「しわすでは・・いえ何でもありません。了解しました」


 結界が解けた。

 しかし、先程の出来事等まるでなかったかのようだ。

 アイラは隣の席の少女と仲良くなる。

 空の旅を楽しんでいた。


-----------------------------------------


1991年6月23日(日)PM:16:42 中央区特殊能力研究所五階


 椅子に座り、机の資料にひたすら目を通している古川。

 ソファに座っている白紙(シラカミ) 彩耶(アヤ)

 彼女は、入学予定の生徒の資料に目を通している。

 古川はコーヒーを、彩耶は紅茶を飲んでいた。


 そこに現れた七原(ナナハラ) 繭香(マユカ)

 彼女に案内されて入ってきた女性。

 尖った長い耳に、腰まである青髪。

 彼女はレイン・ボー・ファン。

 エルフィディキアからの使者だ。


「それでは失礼します」


 レインを案内した七原。

 直ぐに部屋を出て行った。


「レイン、久しぶりだな」


「五年ぶりかしらね?」


 立ち上がりながら近づく古川。

 資料から視線を上げた彩耶。


「美咲と彩耶は、少し老けたんじゃないの?」


「失礼な奴だな。そうゆうレインは変わらないな」


「そうゆう種族ですから」


「レイン、コーヒーと紅茶どっちがいい?」


「コーヒーで。ブラックでいいよ」


「美咲もいる?」


「あぁ、これに注ぎ足してくれ」


 古川からコーヒーカップを受け取る彩耶。


「美咲、彩耶、直前に予定を変更して御免なさいね」


「何があったのかは知らんが、気にするな」


「そうね。むしろ約束は必ず守る性格のあなたが、直前に予定を変更した理由の方が気になるかもね」


 彩耶からコーヒーカップを受け取った古川とレイン。

 二人は相対するようにソファに座る。

 彩耶は自分が座っていた場所、古川の隣に戻った。


「暗がりではっきりとはわからなかったんだけど、人語を解する狼のような生物に襲われてね。二メートルはあったと思う。あんな生物が生息してるなんて知らなかったわよ。すぐいなくなったから良かったけどね。山の中を移動してたから、警戒して進んだ為に時間がかかってしまったの。本当にすまないわ」


「いやちょっと待て? 北海道にいたのはエゾオオカミだが、絶滅したと言われてるぞ。そもそも、そんなにでかくはないし」


「エゾオオカミかどうかはともかくとして。レイン、数はいくつだったの?」


「確認出来たのは四匹かな?」


「そもそもここまで何で来たんだ?」


「車だけど?」


「何でまたそんな事を?」


「理由は後で話すけど、しばらくは本国に動きを知られたくないからかな」


「本国ってエルフィディキアか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ