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Element Eyes  作者: zephy1024
第十章 学園入学編
153/327

153.感知-Sensing-

1991年6月16日(日)AM:12:34 中央区札幌駅前通


「雨が降っていたようだな」


「天気も悪いし、降っててもおかしくなかったよね」


「そうだな」


 目的の店に、二人は辿り着いた。

 竹原(タケハラ) 茉祐子(マユコ)の今までの生活。

 実際には、古川(フルカワ) 美咲(ミサキ)は知らない。


 しかし、知る限りの情報から推測する事は出来る。

 かなり自由のない生活をしていた。

 理由は不明ながら、余儀なくされていたようだ。


 メニューを見て嬉しそうに迷っている茉祐子。

 彼女をを見ていると、この決断は間違ってない。

 そう自信が持てる気がした。


 古川はハンバーガーのセット。

 茉祐子は散々迷ったあげく、両方を選ぶ。

 チーズバーガーのセットとライスバーガーを頼んだ。


 注文したセットが出来上がった。

 受け取った二人は店内の階段を上る。

 二階の空いてる席に座った。

 昼時という事もあり、店内はそれなりに混んでいる。


「いただきます」


「茉祐子は律儀だな。いただきます」


 ハンバーガーを食べ始めた古川。

 茉祐子もおいしそうに、嬉しそうに食べ始める。

 食べながら、合間合間に会話を交わす二人。


「さすがに日曜日だな」


「うん。そうだねぇ」


 セットに更に単品とはいえ、ライスバーガーを頼んだ茉祐子。

 そんなに食べれるのかと思っていた古川。

 発育途上の彼女を、古川は完全に侮っている。


 彼女の予想とは裏腹。

 茉祐子は残す事なく、全て平らげるのだった。

 飲み物を飲みながら、ゆったりしている二人。


「さすがに混んできてるし、そろそろ行こうか」


「うん、でも何処行くの?」


「そうだな? 何処いこうか。結構長時間歩いてるけど、茉祐子は大丈夫か?」


「まだ大丈夫だよ」


「そうは行ったものの何処いこうか」


 ほんの一瞬だった。

 魔力の高まりを感じた古川。

 茉祐子も同じ方角を見ていた。


「気のせいかもしれないが、一応確認するべきか」


「気のせいじゃないよ。私も感じた」


「え? 何て言った?」


「私も感じたよ。これって魔力? ってのを集めようとしてたんだよね」


「いやそうだが? いつからそんな事?」


「明確にわかるようになったのは、最近かな?」


「そうか。しかし何で? いやその話は後だ」


「うん? そんな事より、確認した方がいいよね?」


 茉祐子を連れて行くべきか一瞬迷った古川。

 しかし、この人込みの中だ。

 一人にするより、自分の側にいた方がいいと判断する。


「行こう」


「うん」


 こうして、魔力の高まりがあった場所に向う二人。

 感覚的にかなり近く。

 だが茉祐子の走る速度にあわせている。

 なので、普段より時間がかかった。

 角を曲がり、二人は中小路に入っていく。


「結界で人が来ないようにしているな。術式は一般的なもののようだな? 突っ込むから私に捕まれ」


 茉祐子を抱きかかえた古川。

 紙袋ごとしっかりホールドした。

 茉祐子も、古川の首に手を回してしがみ付く。


≪限定強化速≫


 突如段違いの速度になった古川。

 何もない空間に放たれる飛び蹴り。

 茉祐子にも感覚的に、何かが壊れるのがわかった。


「え? 結界が壊れた? 何者だてめぇ?」


 古川達の視界にはいったのは五人。

 全員厳つい顔をした、アジア系人種に見える。

 その向こう側で倒れている女の子が一人。

 顔が見えないが、気絶してるように見えた。


 即座に前進した古川。

 茉祐子ごと、姿が掻き消える。

 既に、倒れている女の子の側にいた。


「え?」


 古川が消えた事に驚愕する五人。

 女の子の側にいることに再び驚いた。


「い? いつの間に?」


 茉祐子をその場に、古川は静かに下ろした。


「茉祐子、その娘を頼んだ」


「うん、美咲姉。誰か呼んできたほういい?」


「いや、大丈夫さ。表通りで待ってなさいって、茉祐子一人では運べないか。ちょっと待ってろ」


「たかが女一人が俺達を倒すつもりか? なめ―」


 しかし彼は、最後まで言葉を放つ事が出来なかった。

 即座に目の前に移動した古川。

 彼女の蹴りが、腹部に減り込んでいる。

 そのまま、吹き飛ばされていった。


「なっ? 手加減無用だ。獣化だ!」


「ゴリラに虎に牛、馬か。あいつはただの猿か」


 何とか立ち上がったのも含めた五人。

 各々の、獣の姿を曝す。


「たかが人間がなめるなぁ」


 しかし連携する素振りもない相手。

 古川の敵ではなかった。

 茉祐子の手前もある。

 その為、極力血が飛び散らないように配慮。

 顔への攻撃はしなかった古川。

 だが、蹴り技だけで、五人をほんの数秒で沈黙させる。


≪電撃麻痺≫


 最後に放たれた古川の言霊。

 放たれた五本の電撃。

 避けることも出来ずに、五人は完全に動けなくなった。


 その様子をポカーンとして見ている茉祐子。

 五人が沈黙したのを確認。

 戻ってくる古川。


「何がどうなったのかわかんないけど、美咲姉凄いっ」


 呆然と見ていた茉祐子。

 ぼそりと、無意識に言葉にしていた。

 しかし、古川に聞こえていたようだ。


「そんな事はないさ。それで女の子はどうだ?」


「え? あ、うん。唇が切れてるから、殴られたんだと思う。それで気絶したのかも」


 その顔を見た古川。

 彼女が誰なのか即座に理解した。

 ふと足音に顔を向けた古川と茉祐子。

 古川は、見た事のある二人だ。

 中学生ぐらいの男の子と女の子が現れる。


「古川様が、助けてくれたのでしょうか?」


 女の子の方がそう話しかけてきた。


「偶然だけどな。見る限りは気絶してるだけで、命に別状はないと思う」


「はい、ありがとうございます」


「しかし何が?」


「わかりません。当然結界に閉じ込められまして、襲われました。結界は壊して逃がしたのですが。他にもいたなんて」


「そうか。詳しい話しはそのうち聞く事になると思う」


「美咲姉、知り合いなんだ?」


「ああ」


 その後、しばらくしてから制服の警察官が現れた。

 彼に、自らの身分を明かした古川。

 たまたま自分の事を知っている警察官だった。

 その為、面倒臭いことにはならずに済む。


 おそらく、結界が壊れた。

 その為に、現場を目撃した市民が通報したのだろう。

 しばらくして、に近藤(コンドウ) 勇実(イサミ)白紙(シラカミ) 彩耶(アヤ)が来た。

 二人に状況を説明する古川。

 後は任せることにした。


「あの子大丈夫かな?」


「大丈夫だろうさ。うちの病院に入院させるようにしたから、心配ならそのうちお見舞いにいくといい」


「う・うん、そうだね。でもいいの? 任せちゃって」


「ん? 近藤と彩耶が任せろって言うんだし、構わないさ。それよりも茉祐子こそ大丈夫か?」


「うん、大丈夫」


「そうか。大通にでも言って少しゆっくりするか?」


「それもいいかも。でもテレビ塔の方はまだ閉鎖されたままだよね」


「大通全部が閉鎖されてるわけじゃないし、入れる所でいいさ」


「そうだね」


「じゃ行こうか」


「うん」


-----------------------------------------


1991年6月16日(日)PM:15:33 中央区大通公園三丁目


 日曜日にしては人が少ない。

 普段ならば、大通には様々な人がいる。

 だが、事件の影響か、曇天の影響か、ほとんど人はいなかった。


 報道管制などがしかれた。

 とは言えども、事件そのものを目撃者した人達。

 それはかなりの数になるだろう。


 ほんの短時間とは言えども、テレビにも流れた。

 生放送で実際にニュースとして報道もされてしまっている。

 実際にどれぐらいの人間が、あの放送を見たのかは不明だ。


 しかしあの放送は、いろいろと問題になっているだろう。

 古川は、そう思っている。

 現場で撮影していたカメラマン。

 彼の撮影により、中継していたアナウンサー。

 どちらも死亡が確認されている。

 その事実が、問題に更に拍車をかけていそうだ。


「人少ないね」


 ベンチに、噴水を眺める形で腰掛けている古川と茉祐子。

 少し下を向いている茉祐子。

 悲しそうに、そう零した。


「そうだな。事件の影響は当分続くだろうしな」


「うん」


「監察官もいまだに大混乱らしいしな」


「監察官?」


「ああ、あそこにスーツ姿で立っている人が、三人いるのはわかるか?」


 古川は体の向きを変えて、大通二丁目側を指差した。

 古川の動作に少し遅れて、追従する形の茉祐子。

 彼女が指し示した方向に、視線と体を向けた。


「スーツの人達の事?」


「そうだ。事件集束後の後処理と、私達のその時の対処に問題なかったのか、判断する組織だったんだが。過去に監察官側が発端の事件があってな。今じゃ後処理をするだけの組織となっている」


「そうなんだ」


 茉祐子が確認出来たからだろう。

 古川は噴水の方に体を戻す。

 遅れて茉祐子も、体の向きを噴水の方に戻した。


「そう言えば、魔力の感知が出来るようになったのは最近、って言ってたけど、自然と出来るようになったのか?」


「うーん? 漠然とはおにぃが説明してくれたんだけどね。それから意識するようになったからかも」


「そうか。感知出来るって事は、茉祐子も魔力を持っているって事だな。まぁ、そもそも魔力のない人間なんて、そうそういないんだけどな」


「そうなの?」


「そうさ。ただ気付くか気付かないかの差だな。もちろん魔力の絶対量とかの個人差はあるけども」


「ふうん」


「義彦の風の力のようなものも、先天性のものになるが、霊力と言う」


「おにぃの力は魔力じゃないんだね?」

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