帝国の栄光 長い日長い夜
「タロよ陛下のお呼びである。ついてまいれ。」
俺はひとり、能面のような表情の無い女官に連れられて豪華な城の廊下を奥に進む。
謁見用の小部屋であろうか、部屋の半分が一段高くなっていて簡易版の玉座が置かれている場所に案内された。
低い場所にも玉座に対面して椅子がある。
座って待てばいいのだろうか、下らぬことで悩む俺。
よしまだ余裕はある。 かも。
頭をたれて跪いて待っていると誰かが部屋に入ってきた。
足音は二人分。
待たせた、などと声がかかるはずもなく座ってよしとも言われない。
単刀直入に話が始まる。
『そなたは、心を読みにくいな。そこまで魔力が無いというのは見たことが無い。どこで生まれた?』
「魔力が無くゆえに声に出して応えることをお許し願います。」
『よい、話せ。』
「こことは別の異世界、日本という国で生まれました。」
頭の奥をつつかれるような感じがする。
そこで素直に今感じていることを表層に出した。
”膝が痛いこの姿勢でこの時間はさすがにきついな。集中力が切れて陛下の問いかけに答え間違わねば良いが。”
本当に痛いんだ。
すかさず来た。
『許す、座ってよい』
顔を上げると、二人の姿が目に入る。
玉座に悠然と座る二の姫とその横に立つ姫とよく似た男装の麗人。
二人とも全てをあきらめきった暗い表情をしている。
姫の表情とは打って変わった上機嫌な念話によってポンポンとだされる質問に時間はどんどん過ぎて行った。
”はらへった。”
俺が思考をコントロールしているのがばれないようにそういったものも混ぜてみると、軽食も出されるが質問は途切れない。
質問にはさりげなく医学的、生物学的なものが混ぜられている。
血液型や臓器移植による拒絶反応について、また遺伝的なものについてかなり深く問いかけられ、俺は無意識を装ってそれについても丁寧に答えた。
『面白いものを引き連れておるのう。』
質問は更に俺の供のゴーレムたちのことにも及んだ。
そして話は皇帝自身のことに移る。
『朕は目が見えにくくなり、手足が先から腐ってくるような病を患った薬。を飲んでも直らず、治癒の魔法もすぐ効果を失った。そこで子や孫らの手足と取り替えたのだが病は更に進んだ。』
カスだな、こいつ。
「もしかして、最初に手足がしびれたとか、のどが異常に渇いて水が飲みたくなったとかの症状はありませんでしたでしょうか?」
『確かに、そのようなことがあった。』
「あと手足がむくんだとか。」
『うむ。』
糖尿病だな、たぶん。
俺は治療法を思い浮かべる。
こちらの世界にはインシュリンなどないし、手足が腐ったら向こうでも、ねぇ。
ただ体を取り替えたならまた発症する事は無いだろう。
皇帝の念話が明るくなった。
またぶりかえすのが怖かったんだろう。
『それでだ。一番健康な二の姫の体を使ったのだが、目は見えず耳も聞こえない。念話と念視で不自由は無いが何とかならないものか。』
「今の段階ではなんとも申し上げられません。せめて暫く検査させていただきませんと。あとどのような術式が行われたのかも詳しく教えていただかないと無理かと思います。」
『そうか、では明日北東の月の塔を案内してやる。今日はこの城で休め。楽しかったぞ、褒美もつけてとらす。遠慮なく受け取れ。』
「は!」
上機嫌な念話で笑いの波動を出す陛下は悲壮な表情のままもう一人と供に出て行った。
「こちらでございます。」
先ほどの女官に案内されたのは腰が抜けるくらい豪華絢爛な寝室。
隣の部屋にはこれまた豪華な食事が用意されていて、俺が食べている間身分の高そうな女官達が世話をしてくれる。
もちろん居間や洗面所などもちゃんとあるし、体を洗う浴室もある。
浴室の世話も女官達がしてくれた。
さて疲れた、寝るか。
これまた豪華な天蓋付きベッドがある。
天蓋からおろされたカーテンを開けると背後のドアが開き人影が入ってきた。
あわてて跪く。
「これは、一の姫様、このような夜更けに何の御用でしょうか?」
衣擦れの音がして何かが落ちる。
「陛下からのご褒美です。受け取りなさい。」
顔を上げると神々しいばかりの裸身があった。




