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【完結済み】妹が私の婚約者も立場も欲しいらしいので、全てあげようと思います  作者: 皇 翼
第四章:ブレメンス

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74.

「それでね、彼女一番最初に俺と会った時になんて言ったと思う?」

「うるさい!お前とソフィアの出会いなんて興味ない!!っていうか、なんで俺はお前らと同じ病室なんだよ!ふざけんな!!!」

「サミュエル、黙れ。ハルトリッヒも無視して寝ろ。うるさい」

「二人共、そんなこと言うなんて冷たい。一緒にブレメンスでソフィアを助けた仲じゃないか!」

「お前、俺の事信用できないってずっと言ってたくせに。今更何を虫の良いことを言ってやがる」

「今は信頼してるさ!そういえば、ハルトリッヒ。回復したら僕の元で働かないかい?給料は弾むよ」

「ぜってー嫌だ」

「黙れと言っているだろう、サミュエル。あんまりうるさいと部屋から叩き出すぞ」


看護師に案内された部屋の前。

とても聞き覚えのある声が3つ。なんだかサミュエルを筆頭に夜にも関わらず元気そうで改めて安心感を覚えた。話の内容には多少ツッコミどころはあるが。


ノックを3回する。よくよく考えると、私はあの場でクラウスに対して盛大な告白をしたんだよなと思い出して、開ける直前にほんの少しだけ緊張して手が止まった……


「ほら、お前が五月蠅いからだぞ。きっと苦情の声だ」

「えーー!二人が僕の話を聞いてくれないからだろ。僕はどれだけ彼女が素晴らしいか話したいだけなのに……」

「俺は体力を回復させるためにも寝たいんだが」


――のだが、阿呆そうな会話が聞こえてきたことで、その緊張は掻き消えた。

まだまだ続きそうな会話を遮るように部屋の中に入る。そしたら先ほどまでされていた会話の声は一瞬にして止み、場がしんと静寂に満ちた。


「ソフィア……?本物、だよな」

「ええ。私はここにいるわ」


ぽつりと吐き出された私の名前。

先ほどまでサミュエルへ塩対応をしていた彼はどこへやら。クラウスは眠ろうとしていたのであろうベッドの上から降りてこちらに駆け寄ってくる。確認するように最初は柔らかく、そして確信を求めるように段々と強く彼の腕は私を抱きしめた。今日は布一枚しかまとっていないせいだろうか、暖かい彼の体温が直に伝わってきて、生きている体温に包まれている安心感を感じる。

私を安心させてくれる温度だった。


後ろの方でサミュエルの『ズルい!僕も!!』という声や、ハルトリッヒの『馬に蹴られて死ぬぞ。あと病室でイチャつくな』という冷静なツッコミが聞こえてくるが、今はそんなものは気にならないくらいに満たされた気持ちで、クラウスから離れ難かった。


***


「そういえば、私ってなんで生きているの?私自身、毒が回ってもう限界って思ったから、目覚めてから不思議で……」

「ああ、それは――」


クラウスはあの時の事を鮮明に話してくれた。

曰く、毒矢が射られて私の全身に毒が回りかけていると分かったクラウス、サミュエル、ハルトリッヒは咄嗟に治療が間に合わないと判断したのだという。

そもそも3人とも魔法は使えるが、全員回復系の魔法は初歩的なものを除いてからきし使うことができない。だから最初に誰かが回復魔法を使うという案は没になった。ほぼ可能性がないものを使う時間なんて惜しいと考えたらしい。

であれば、使える者を探そうということになる。まず、ブレメンスは正直そこまで魔法が発達していない上に、どういう人間がどこにいるのかもわからない。そして運良く回復魔法を使える者の場所を当てられたとしても、その人物が毒素を分解して治療するという上級回復魔法を使えるかは不明。

そして 王都へ連れて行くのも時間がかかりすぎて、その間に命を落としてしまう。魔導車で移動して間に合わないのは当然、瞬間移動の魔道具は座標を標したものは既に回収されてしまっている故にそれも使えない。

だから一か八かの方法をとったと言った。


「俺たち3人でソフィアの体内の毒素を全て吸い取って分け合った。吸収魔法があるだろう、それの応用だ。思いついたのはサミュエルだが」

「……それで貴方達もベッドの上ってことね」


納得した。彼らは殆ど怪我なんてしていなかったはずなのに何故私と同じような入院着を着ているのだろうと思ってはいたのだ。


どうやら毒の影響で彼らはここにいるらしい。私の中にあったソレを全て受け取った。いくら分けあったと言っても死ぬ可能性もあっただろうに。なんてリスクの高いことをと思いながらも、命を懸けられる程に大切にされていると行動で示されたようで少し嬉しくなっている自分も確かにいた。


しかし元気な姿から見るに、現在検査中や念のために入院しているといったところなのだろう。サミュエルなんかはぺちゃくちゃ向こうでも喋り続けている。


「でも、有難う。サミュエルもハルトリッヒも!」


突然呼ばれたことに驚いたのだろう、サミュエルとハルトリッヒ。彼らは私に微笑んで答えてくれた。

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