47.対話②
「遠回しに聞くのは好きじゃないから、そのまま聞くわ。貴方達の雇い主は誰?」
「ジルド=ブレメンス。アンタもよーく知っている人物」
「はあ。やっぱりブレメンスの人間だったのね。しかも国のトップか」
ローラと名乗ったピンク髪の女が答える。
やはり私を狙っていたのは王族。しかも、ジルド=ブレメンスといったらブレメンス王国の現国王であり、私の元婚約者であるジョン=ブレメンスの父親だ。
正直なところ、ブレメンスの王族か私の親族のどちらかだとは予想していたが、まさか一番上の立場の人間から狙われていただなんて。依頼者の第6候補くらいには入れていたが、第1候補である妹や次点の元婚約者に比べて、影は薄かった。
「依頼内容は?」
「アンタの暗殺。きちんと息の根を止めたのを確認してくるようにって言われたわ。そうしたら、ブレメンスに今起きている厄災が全て解決するとも言われたわね」
暴論だ。
連れ戻して解決させろなら多少は分かるが、これではまるで私のせいで厄災が起きているみたいじゃないか。かつてブレメンスに居た時、あの国へ『厄災』が降りかからないように、災害や国内の問題に対して力を割いていた私の努力はなんだったんだろうか。
居ればなんの感謝もなく死にそうな状態だろうが散々こき使っていたくせに、居なくなれば自分達でどうにかする努力もしようとせずに聖女のせいにする。腐り過ぎていて、なぜ私が責められているのか分からないが、明らかに聖女の力に頼り過ぎていた代償と言えるだろう。
「今ブレメンス王国は、他国から持ち込まれてしまったアヌキナリアという病が蔓延しているだけではなく、地震と洪水による被災、各地で作物が上手く育たなくなったために起きた飢饉で大騒ぎです。ソフィア=トリプレート、貴女の妹と婚約者は今、嘆きの塔にいますよ。貴女の裏切りに加担したとして幽閉されているのです。助けに行かなくて良いのですか?」
私が溜息を吐きながら頭を抱えていたせいだろう。壮年の男の方がまるで私を責めるように補足情報を入れてくる。ブレメンス王国の状況については、やはり自業自得としか言いようがない。補足情報を聞いてもやはり王侯貴族の怠慢だろう。
他国では既に沈静化しているはずのアヌキナリアが流行っている?それは対策をしていなかったからだし、なによりもあそこに居た頃は様々な人の病気の治療や薬・ワクチンの準備も全て私一人で担当していた。
災害についてもそうだ。災害が起きる度に私が呼び出されて、以降に起きた時のために魔法をかけて対策していた。
それに飢饉?作物を育てるために何も考えられずに作られた各地の田畑や農園のために天気や気候を私に変えさせていたのを彼らは忘れたのだろうか。私はあの国の人間の便利道具じゃないのだ。
あまりにも勝手な言い分に苛立ちを通り越して、呆れてしまった。
妹と元婚約者についてもそうだ。彼女らの自業自得だ。勝手にやったことなのだから、自分達で責任を取って欲しい。助けに行く気なんてもってのほかだ。嘆きの塔なんて、彼女らにお似合いじゃないか。
嘆きの塔。
それは表向きは罪人の収容所となっているが、実際は違う。
中の人間は残虐な拷問をすることで、罪人を神の慰めにするなどと言っているイカれた場所だ。国の一部の人間しか知らないが、中では死んだ方がマシだと思えるほどのことが起こっているらしい。そもそも出てこられた人間自体片手で数えられるくらいの数しか聞いた事がないが、出られたら出られたで、まともな人間としての精神を保てておらず、肉体も綺麗に残っている部分がほぼなく、欠損を数えた方が明らかに多いという状態らしい。
塔の中からは毎日のように悲鳴が響く。そういえばあそこで死んだ人間が化けて出るなどという怪談話があったな、なんて関係ない事を思い出す。それくらいには妹と元婚約者の現在の情報はどうでも良かった。




