46.対話①
私を襲撃した二人を収容しているらしい施設まで、全く懲りないサミュエルのウザったい絡みを躱しながらも案内させ、なんとか辿り着いた。流石に部屋に居た時のような口説き方はしてこなかったが、明らかに以前とは違う甘さを持った触れ方をしてきていて、私を恋愛的な意味で落とそうとしているのが簡単に察せられた。
無駄に疲労感を覚えたことに若干の苛立ちを覚えながらも、入り口にいた人に声を掛ける。
「ストルツさんが担当なんですね。私たち、ここに収容されている人に会いに来たのですが――」
「フィーア……とサミュエル様。すぐに案内致します」
「なんでサミュエルは敬語を使われているの?」
「ああ、この村には人を捕縛しておく施設がなかったからね。僕の権力で先日作らせたんだよ。ここの維持費やその他諸々の経費、あと村への支援金なんか払っておいたからじゃない?」
「はあ!!?」
「僕、第二皇子だしね。それを聞いたら皆快く手伝ってくれたよ」
言われてみれば、初めてこの建物を見た。研究施設があるのは村の南側。だからあまり村の北側には来ないということもあり、今まで知らなかっただけかと思ったが、そうではなかったようだ。きっとこの村の人やクラウスが散々こき使われた結果だろう。
よくよく思い出してみると、すれ違った村の人達もなんだか疲れているような顔をしていたような気がする。あとで村の人達には謝罪しておこうと思う。
そんなこんなでサミュエルを問いただしているうちに、地下深くにあった該当の部屋に案内されていた。
中には手足を厳重に拘束され、口以外は動かすことが出来ない状態になったあの派手なピンクの髪を高く結んだ女と、鼻の下に白髭を貯えた壮年の男がい――ると思ったのだが、部屋の中の状況は全く違った。
二人ともが自由な状態で部屋で寛いでいたのだ。そしてこの部屋の広さ自体、魔法で少し拡張されているのか、複数個部屋があるようだった。奥の方にはキッチンらしき設備も見えた。
外から入れる扉があるのはリビングのような場所。そこで男の方は紅茶を優雅に飲みながらホクホクとした湯気の立つスコーンを摘まみ、女の方はクッキーを齧りながらファッション系のお洒落雑誌を読んでいた。
「……この人たち、よね?」
「うん。彼らが襲撃犯」
「なんでこんなに自由に寛いでいるの?拘束は?」
「彼らはもう全てを白状して、今は保護対象になっている。人伝に聞いた話だと信用できないだろう?だからまだここに捕えている」
確かに彼らに敵意はない。それどころか、私やサミュエルが話しかけてくるのを落ち着いて待っているようだった。
それによくよく解析してみると、この部屋は部屋の中の者を捕える魔法ではなく、部屋の外から中身を守るための魔方式が全体に組み込まれている上に、精神系の魔法が組み込まれている気配も感じる。
サミュエルの話は本当のようだ。
「気づいているかもしれないけど、ここには簡易的ではあるが、嘘を吐くと警報がなる魔方式も仕組まれている。真偽はそれで見分けられる」
まるで私が部屋の中身を眺め終わるのを待っていたかのようなタイミングでサミュエルが解説を入れた。なるほど、精神系の魔法の正体はこれか。そう全てに納得がいった。これで私のこれまでの疑問は解消されるのだろう。
「じゃあ、答え合わせを始めようか」
サミュエルのその言葉を合図にして、対話が始まった。




