31.調査②
結局、調査初日は無駄に考えてしまいすぎた不安から、眠ることなど出来なかった。
もえ眠れないと悟り、資料と分析結果をまとめて、そこからまだ洗い出していない調査を表にまとめていく。
その結果、残りの調査は《《この国の魔法で考えた場合》》、12個残っていた。しかしこれは基本的な調査では使われることのない上位魔法。気楽に使えるものではない。だからこの村の人達といえど、省いたのだろう。
私はただ祈っていた。この上位魔法での調査で犯人がわかることを。私に最終手段を使わせないで欲しいというのが、今の私の願いである。
だって、最終手段を使うと言うことは即ち、私があの国の人々に追われていると言うことと同義なのだから。
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「そんなに魔力を使いすぎると倒れるぞ」
炭化深度分析、原子分析、化学物質変化分析……9つ目の調査が終わった時、クラウスに声をかけられた。
夜中に家を抜け出してから、気づけば昼になるまで魔法で魔力を消費し続けていたらしい。魔力量は既にマックス時の2割も残っていない。眠っていないこともあり、疲労感が非常に強かった。
「……うるさい。貴方には関係ないでしょう。放っておいて」
私には時間がないのだ。
早く犯人を突き止めなければいつの間にかポックリと殺されかねない。なにせ今この調査中にも犯人は私のことを陰から狙っている可能性だってある。
久々に体験する疲労感と異様なまでの緊張感。そして焦りから嫌な態度をとってしまったことは分かっていたが、出てしまった言葉を引っ込めることはできなかった。
「はあ。仕方がないやつだ。残りの調査はなんだ……いや、聞かなくてもいいか。寝ていろ」
持っていた資料と分析結果を奪われたと思ったら、その瞬間に意識を失う。
そして次に目覚めた時にはベッドの上にいた。
「おはよう」
「……よくも眠らせてくれたわね。まだ調査が残っていたのに――」
「もう残りの調査は終わらせた。だから安心しろ。ほら、調査結果」
遮られた言葉と、眠る前よりも分厚くなった資料。
手渡されたそこには、彼が使った残りの分析魔法とその調査結果が、記載されていた。しかも私が作成したフォーマットを完璧な形でコピーして。
「お前はなんでも一人でやりすぎだ。たまには俺を……いや、他の人間をちゃんと頼れ――ってなんだその、呆けた顔は」
「いえ、なんでもない。さっきは心配してくれたのに、あんな酷い言葉をかけてしまってごめんなさい」
「分かればいいんだ。次からは頼れよ。あと、心配なことがあるなら相談しろ」
少しだけ涙が出そうになった。
私はブレメンス王国にいた時も、ここに来てからも、誰かを頼ろうと思ったことはない。だって、誰かに何かをお願いして、助けてもらったことなどなかったから。
でもそこを言い当てられて、頼っていい――頼れと言われて、嬉しかったのだ。彼の言葉が、気持ちが、とにかく嬉しかった。
彼が言う『心配事』についてはまだ言える勇気はないが、私はきっといつか彼に話すのだろう。私の生い立ちと事情を。
そう、なんとなく直感した出来事だった。




