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横田広域警察24時  作者: 魚河岸ボブ
第1章 転生したらバイオレンスな法強制執行者になりました
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ー 貴様と俺とは同期の桜 ー

 皆さんこんにちは。新人研修という名のブートキャンプも後半戦になった加藤眞子改め加藤眞です。


 私の同期は10人ほどいるのですが、最近気になる子がいます。短大卒で県警交通課に配置後、すぐにYPDに転属してきた女性隊員の羽村千代ちゃん。黒髪パッツンで、時々ネコミミみたいに癖っ毛がハネてるのが超キュートです。元の世界(前世)で出会ってたら即お友達リクエストしたくなりそうな存在なのである。…今の世界(現世)では私は男なので、そんなナンパみたいなことは出来ませんが。。


 YPDの所属隊員はひとまず全員が「捜査官」の肩書きを与えられ、専門職に配置された場合に肩書きが変わったりします。リズ教官のような「分析官」や、捜査課強行班の一部にいると言われる「執行官」などがソレです。執行官って、間違いなく「絶対◯すマン」のことですよね。おー怖い。

 で、千代ちゃん…羽村捜査官は「管制官」と俗称されるポジションに配置されるらしく、法律や無線資格の勉強を人一倍頑張ってます。

「テクニカル・オペレーター」TECOと呼ばれるポジションは、YPDの捜査官達を無線でサポート、というか管制する仕事で、現場で判断に困る状況の時や法律を度忘れした時にアドバイスしたり、大規模な作戦の統制を担当したりと、聞くからに責任重大…。しかも最近は通信妨害対策で最前線に同行することもザラだそうで、若い子にはハード過ぎじゃないかなとお姉さん、いやお兄さん心配になります。


「私、不器用だけど準備はしっかりするほうなので大丈夫です」

 休憩室で小六法片手に勉強している千代ちゃんに話しかけると、クールな目を少し細めて答えが返ってきた。うん、私って失礼な奴だ。ごめんなさい。


「いえ、心配してくれてありがとうございます。今更ながら結構大変なポジションだなぁと思ってるのは事実なので」

 目をゴシゴシしながら千代ちゃんが答える。おぉ、何か手つきが猫っぽいぞ!クールな見た目なのに猫属性か、この子…メッチャ可愛いじゃないか。


「羽村さんは何でオペレーターを希望したんですか?」

私は核心に迫る質問を投げた。…甘酒飲みながらする質問じゃなかったかもしれない。


「そうですね…何となく自分の経験を活かせるかな、と。自分の無力さでこれ以上仲間を失いたくないからとでも言いましょうか」

 何か思ったより相当重い理由だった。

「…そうなんだ。しっかりしてるんだね」

「ありがとうございます」

 千代ちゃんは少し寂しそうに微笑んだ。…この子、本当に20歳そこそこの女の子なんだろうか。物凄く大人びて見える。


「マコ〜、何してんだ?」

 背中にドスっという衝撃を感じると共に声をかけられた。

「職場内でのナンパは禁止だぞ。同僚に手を出すなよ」

 ニヤニヤしながら首に腕を絡めてくるイケメンは斉藤大吾、同期だ。

「ナンパなんかするか!ちょっと話してただけだ…って痛い痛い、放せ!早く離れろ!」


 斉藤氏はこう見えて重度のミリオタ&アニオタで、配属早々に意気投合した珍しい相手である。が、距離感が少々バグっていて、なんというかいつも近過ぎる。ハタから見れば男同士イチャついているようにしか見えない筈だ。BLは薄い本の中だけで十分です。ていうか、元の世界(前世)では男性に触れる機会など無かったので、結構テンパります。マジで。


「お二人、仲が良いんですね」

 千代ちゃんが笑っている。

「まあ、マコとは趣味が一緒だからな」

 やっと離れた斉藤氏が胸を張って答える。アニメとミリタリーって、女性に向かってそんな胸を張って言うような趣味じゃない気もするけど、まあいいや。


 斉藤氏はいわゆるエリート組で、ピカピカの経歴と拳銃射撃の腕を見込まれてSATの指揮官になる筈だったのだが、大事な国際射撃大会の前に酷いスランプに陥り、ついでに指揮官になる話も流れてしまったらしい。その時に上司とバトって出世コースから外れ、タイミング的にも行き場所がなくなってしまったのでYPD(ここ)に来た、という訳だ。


 自分の拳銃に名前を付けるほど射撃に打ち込んでいたらしく、一緒に飲みに行った時には散々飲んで泥酔した挙句「俺のめぐみんを返せ〜」と泣いてうるさかった。

 なんというか、距離感はおかしいけど嫌いになれないヤツだ。

 

「さて、そろそろ次の訓練ですね」

 千代ちゃんが小六法を片付けて席を立つ。


 私も斉藤氏と一緒に休憩室を出る。

 せっかく同期になったんだから、他の人ともゆっくり話してみようかな、とふと思った。

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